人情
「情は人の為ならず」という言葉(諺)について、久しぶりに若者に尋ねてみました。以前尋ねてから少なくとも5年以上は経過していると思います。
すでに平成22年の「国語に関する世論調査」でも以下の2つの意味が同じくらいの割合で認識されていて、本来の(ア)の意味が薄れていることは知っていました。
・(ア) 人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる・・・ 45.8%
・(イ) 人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない・・・ 45.7%
・(ア)と(イ)の両方・・・ 4.0%
・(ア),(イ)とは全く別の意味・・・ 1.9%
・分からない・・・ 2.6%
おそらく前回私が若者に尋ねたのもあまり変わらない時期で、内容もさほど違っていなかったように記憶しています。
ところが、今回は大きく変わっていたのです。
・(ア) 人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる・・・ 16.2%
・(イ) 人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない・・・ 22.7%
・(ア),(イ)とは全く別の意味・・・ 10.3%
・分からない・・・ 55.8%
若者に尋ねたので(イ) が(ア)を上回るのではないかとは予想していましたが、全く別の意味をあげたり、分からないと答えた人が半数を超えたのには、さすがに驚きました。 「情は人の為ならず」という言葉(諺)は忘れ去られようとしているみたいです。
若者たちには、もう情という言葉がピンと来なくなっているのではないかと思います。これは推測ですが、情とか人情という言葉が使われなくなっていて、その概念そのものが日本社会から失われているのではないでしょうか。
かつては人と人の距離が近くて、それこそ近すぎて「刃傷(にんじょう)沙汰」になることだってあったと思うのですが、令和の現代、特にコロナ以降は、人と人の距離が離れてしまって、情を通わせることそのものが希薄になってしまったのかもしれません。
さてジジイは、藤沢周平さんの時代物にでも触れて、人情ノスタルジーに浸りたいと思います。