交代
店主は3月で(児童福祉施設理事長を)辞めると言います。私は「暗い海に灯台が無くなったら、たくさんの船が座礁して航行できなくなる」等々、あれこれ理由を付けて辞めてはいけない、辞めないでほしい、と頼みますが、すでに理事会で通告しているようでした。
「10何年、自分たちで自立した事業をするようにずっと働きかけてきたけど、あいつらさっぱり動かん、やらんし、やれん、オレがおっても意味がない」
40年の付き合いの私には、彼が言わんとしていることは分かります。また傍から見ていて、(私から見たら)若いスタッフたちが彼の打ち出した方針をほぼ理解できずに実現に向けて数歩も踏み出せなかった様子を、もどかしくも致し方ないだろうと感じていました。彼とスタッフの意識、知識、発想、センス、行動力、経験等などには、あまりにもギャップがありすぎるのです。シンプルに言うと、独立自助の気概がとても希薄なのです。
そして時代も大きく変化したように思います。一言でいうと、日本はチャレンジしにくい社会に変わってきたと思います。まずスタッフたちは、自分をもつことを恐れているように見えます。そして、たとえ理不尽だろうと良心に照らしておかしかろうと、お上(行政など)から何かの指示があることを唯々諾々とこなしていくことだけが仕事だと信じて疑ないような仕事ぶりなのです。それが明らかに間違っていても、利用者にとって害悪となってもです。
ちょっとびっくりしてしまうのですが、せっかく子ども家庭福祉の仕事を選んだのだから、子どものためにとか保護者のために何か役に立ちたいと思って働いているのでしょうから、明らかにそれに反するようなことには、意見を言ったり拒否したりしないと、自分の良心や倫理観が蝕まれて、歪んだケアリーバーになってしまいます。第一人間としても腐ってしまうように思います。
彼という重しがなくなって、若いスタッフたちが解放されてのびのびと新しい動きを始めて活発になるのか、はたまたしぼんでいくのか、しばらく様子を眺めていたいと思います。