3者関係をつくる
「おせっかいワーカーになろう㉕」
見守り訪問は2人一組で家庭を訪問します。パートナーが横にいるのは、とても心強いです。1人が親と話している間に、もう1人が玄関から室内の様子を観察することができます。話をする中で、質問されたり、クレームを言われて困っても、もう1人が助け舟を出してくれます。
親が「転居したばかりで不安」と悩みを話してくれたら、一人はしっかり気持ちを受けとめて共感しながら聴きますが、しばらく受けとめたら、もう1人が「病院や急患で困ってないですか」「保健所や公民館の場所は分かりますか」とお役立ち情報を提供できます。そこからちょっとした井戸端会議のような気楽な会話の場になって、こんなに私たちのことを心配してくれる人がいるんだ、と味方ができた気持ちになったらうれしいです。
1対1で話していると、敵対的になったり、議論しているようで同じことを話していたり、気づかないうちに、膠着してしまうことも多いのですが、観察している3人目が、2人と別の視点を持ち込んで話を展開させられると前進すると思います。この3人目がいることが意外に重要だということがだんだん分かってきました。
よく小学生の女の子が、仲間に入れてもらえないとか外された、とトラブルになりますが、それが頻繁になったり解決しにくい背景には、現代の家族の中では、母子という2人だけの関係や会話ばかりで、3人4人という、ある意味で複雑な人間関係を日常経験できない子どもが増えていることがあると思います。母親は、一人で頑張って子育てしているので、できるだけ子どもをコントロールしようとします。子どもは甘えたり気をひこう親を独占しようとします。そういう2者の依存関係がベースにある人間関係しか家庭で体験したことがない子どもは、友達や教師とも、同じような2人だけの関係をつくろうとしがちです。経験がないので、3者関係にうまく対応できないのです。
現在、家庭では父母の大人の会話や仕事の話、祖父母や親戚、近所の人との付き合いで起こる複雑な人間関係や会話を見聞きすることが極端に減っています。子どももそうですが、そうやって育った大人が普通に親になっています。子ども・子育てに取り組む中で、これから私たちは、話し合いの中に3者関係をうまく組み込んでいくことが必要になると思います。
【労協新聞2018年「おせっかいワーカーになろう㉕」】