47 富田勲 ☆ 新日本紀行
富田勲さんの曲は、まず『ビッグX』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』といったアニメで親しみましたが、身体に沁み込むように残っているのは、「新日本紀行」の新旧のテーマです。本当にいい曲だなあ、と思います。
それは、高度経済成長真っ盛りの1960年代から、どんどん失われていく“日本”を記録した映像と一体化していたからではないかと思います。現在進行形で、いまあるものがノスタルジーになっていくことに、多くの日本人は無自覚であったと思いますが、それを冨田勲さんは肌で感じ取って、すばらしい音楽に昇華させたと思います。
そして、それまで日本で誰もやらなかったシンセサイザーを使ってやったことが、本当に凄いと思います。服を作るのに、綿の種を蒔くところから始めるような、途方もない苦労の積み重ねで冨田勲さんの曲はできているのです。
90年代に、NHKでは「ふるさとの伝承」として同様の番組を作りましたが、おそらくそれが(柳田国男以来の)“日本”を記録に残すことができた最後の時期だったのではないかと思います。多くのものが本当に日本から失われてしまいました。
私には、いまは「新日本紀行」が、レクイエムのようにも聞こえます。遠く1万年続いた縄文時代からずっと続いてきた、日本人の自然と一体になった生活、文化や習俗が失われて、足元の大地が消えてしまうような寂寞とした気持ちになるのです。
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