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元作詞家の恩師たち「Being/学校 ⑥」

成果と学び

その後のマリオ校長

 それから三〜四ヶ月が過ぎた頃だったでしょうか。例のマリオ中島氏から急な呼び出しがありました。日々社にお邪魔する中、中島氏は私が授業を受ける脇を通る度にニヤニヤしながらチラッと横目でコチラを見る…そんな調子だったのですが、ある日終わり次第来るようにと言われました。
「小松氏も多忙故そろそろいい加減にしろ」
のようなお叱りかと恐る恐る伺うと、いきなりカセットテープを一つ手渡されました。
「これさぁ、南野の次のシングルなんだけど、やってみたい?」
いかにも氏らしい悪戯っぽい口調でそう言われると続けて、
「ただ、条件的にはちょっと厳しいよ」と、またまたニヤニヤしながら…少々癖のあるチャンスのようでした。
既に詞は某大御所作家X氏で99%決定済みとのこと、残り1%の可能性でも賭けたいとあらば挑戦可能という主旨でありました。勿論一つ返事で是非とお答えすると三日の期限を頂き、
「1%だからさぁ、あんまり力むなよ」
と氏はまたニヤニヤされておりました。私としては可能性云々よりも先ず、当分先か若しくは全く無いかと思っていた校長からの仕事オファーがあった嬉しさと、南野陽子さんのシングルという案件にお断りする理由は皆無な訳です。
「どうせお前のことだから、またすぐ持って来るんだろ?」
という意味深な言葉にも感化され、例の如くその夜は徹夜、駆け出しの無い才能を振り絞り渾身の一本を書き上げて翌日に提出しました。
「来たな吉野家!」
と若干直しの依頼を受け、得意の近場喫茶店で修正、晴れてお受け取り頂いたのです。

結果は勿論…

 当然?のボツでした。しかしそこで校長はその後の心に残る大切な話をして下さいました。
「まー1%だからな、でもね、一つ覚えておけよ。大抵選ぶ側は先ずリスクを嫌う。大先生の詞での失敗なら言い訳が立つけど、お前の詞で失敗したら、そんな無名を使うからだってことになる。仮に実際お前の作品の方がベターかな?って思ってても最後には大先生の作品を選ぶ訳だよ。この世界はそういうのが殆ど、だから中々いいモノが生まれない。今回の決済は俺じゃないから分からんが、何にせよ得だから早く名前をブランド化しろ!因みに俺はあくまで質重視(ニヤニヤ)…」
またまた貴重な教訓でした。仮に良い作品でも使われない?使えない現実があるということでしょう。精進しながら早期のブレイクをと促されました。
「俺だったらどっちを選んだかなぁ? その点ウチは無名でもいい作品なら大歓迎だから」
「だったら早く使ってくれよ」とは言えませんでしたが。

 暫く経ってナンノさんのシングルが発売になり、当然私もその詞は拝見しました。そして中島氏の言われた嬉しい言葉が今だ良き思い出になっております。
「おい、例の曲聴いたか? どうだった? お前のとどっちが良かった?」
「100%! 僕の詞の方が良かったと思います」
「そうか、俺もあの時からそう思ってた」

 Beingには結局半年程通い、中島、小松両氏には大変お世話になりました。そこで学んだあれこれがどれだけその後の力になったことか。改めて御礼を申し上げたいと思っております。また
諸々作業のお邪魔をしました所属アーティストの皆様にも感謝をお伝えしたいと思います。
 実はまた何年も後に、中島氏とは再会の機会がありました。その節にも諸々のエピソードがあります。それについては後日書きたいと思います。

全くのつまらない私的な内容にお付き合い頂き有難う御座いました。


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