(G)I-DLE 6th ミニアルバム 「I FEEL」感想

「I FEEL」

「Queencard」
一聴、自己肯定感がめっちゃ高い人の自画自賛ソングだと思われがちだが、実はそうではない。
よく聴くと、インスタグラムの向こうのセレブ、スター達に憧れている女性の視点からの歌である。
インスタのスターが、「美しい女の一日は全て美しい」「バースデイパーティで生まれて来たことに感謝」「私の胸もおしりもホットよ」「ランウェイをトゥワークで歩く」「私はスター、スター、スター」「私はクィンカ(その場で一番美しい、女王的な存在)、あなたもクィンカになりたい?」とキラキラの日常を写した(ように見える)画像から語りかけてきてる気がする、「キム・カーダシアンみたいにクールでセクシーなルックスになりたい、アリアナ・グランデみたいに可愛くなりたい」女性。
そういう憧れを持つのは別に悪い事でも愚かな事でもなく、それはそれで正直な本音だよね、と言ってる気がする。
何もそういう思いを持つ人を意識が低いとかルッキズムに囚われているとか、上からジャッジするのではなく、「そんな気持ちも正直あるよね」と歌ってるような。
でもサビのところからコードのシンセ音がモロにレディ・ガガだったり「I'm aクィンカ I'm aクィンカ」と歌っているバックでちょっとユーモラスなパーカッションが入ったり、かと思えば随所に女の子たちのユニゾンコーラスが入って「これがウチらの本音だよね」という感じを出したり、単なるクィンカ賛歌ではなく複眼視的でバランス感覚に優れている。しかも小難しくせずタイトル曲としてきっちりキャッチーに仕上げていて、相変わらずソヨンは一筋縄ではいきません。

「Allergy」
ソヨン曰く「Queencard」と「Allergy」は同じコインの裏表、だそうで。
SNSの中の自己肯定感最高のクィンカに憧れる女性とは対照的に、「インスタもティックトックも大嫌い、Y2Kって何なの?理解できない」「どうして私はセクシーでも可愛くもないの、私は彼女じゃないの、私は私なの」という自己肯定感を持てない心情について、単なるおじさんの立場から「若い女性の劣等感の歌なんでしょ」と分かったような事は言えない。
とにかくどこかで訳詞を読んでほしいと思うばかりである。
ただ、この歌の歌詞を読んで「なんで私の事を歌ってるの?」と泣き崩れた女性の書いた文書を読んだことがあります。
一つだけ。「わたしもHype Boyを踊りたい けど画面の中のわたしはTOMBOYみたい」と、自分達のヒット曲を自虐に使っているのは、さすがだなと。
曲調は前の曲のクールでイケてるグルーブとは一転、青春のポップパンクで、早いバスドラとディストーションギターのバンドサウンド。
アヴリル・ラヴィーンが好きな人には特におすすめ。
「LALALA」で胸と目頭が熱くなるよね、
文化祭で、ガールズバンドによるプレイが聴きたい。
青春映画でかかってほしい。

「Lucid」
ちょっと陰鬱なミンニ作詞作曲の曲。
陰鬱というかセクシー。
バスドラがまるで、木の床を踏むように硬い音だ。
ハネもせずシャッフルもしない、早足で廊下を歩くようなテンポでクールに進む曲。
ミンニ=ファンタジーにセクシーも加わって、クールかつおしゃれ。
ブランドCMの音楽っぽい。
モード、という言葉が浮かぶ。
内容は「ミンニオンニも大人なのね」という。

「All Night」
大人っぽいウギ作詞作曲。基本的にウギはベースに洋楽があると思っているのだけど、これはおそらくマイケル・ジャクソンの影響大、だと思うんだよね。
(G)I-DLEにもし不満があるとすれば、大のブラックミュージック好きの僕には、そういう曲調が少ない点なんだけど、そんな僕にもこの曲があって嬉しい!
ほんと助かる。スラップ・ベースの音が!

「Paradise」
ミンニの作詞作曲。僕が思う(G)I-DLEのミンニ曲の中でナンバーワン。
ミンニ曲の身上である夢見るように美しいメロディ、最高のコード進行、スイングしてるリズム、どこかパーソナルな歌。
心地よく暖かい何かに包まれて、ピンクの霧の向こうに光差す丘の頂きが見えてきたように、酔わされる。

「Peter Pan」
大好きな曲。ウギの作曲、詞はソヨンとウギの合作。
もちろんファンクラブ名の「Neverland」にかけてんだけど、それに加えて「もう大人な歳のに、心は子供。今より年下の頃、今の歳の人はもっと大人に見えたけどそうでもないよね。自分の頼りなさが腹立たしい」という歌で、誰しも心当たりがあるよね。
一人暮らしし始めようって時に、不動産屋で感じた無力感、ガス水道電気銀行などの手続き関係のカウンターで感じた心細さ、役所での途方に暮れた気持ち。こんなとこに来るほど、まだオトナじゃないのに、フリをしてる居心地悪さ。
そんな思いをちょっとユーモラスに、肩のこらない親しみあふれるフォーキーな歌にしてて。
初めて歌詞に「シュファや」とシュファが自分に言ってる形で入ってて。
繰り返すけど、こんなメロディ、心が暖かくないと作れないよね。だから僕は、ウギが好きなんだ。

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