(G)I-DLE 「Put It Straight(Nightmare Version)」、「LION」感想

ソヨンはサバイバル番組「QUEENDOM」に参加するよう、渋るメンバーを説得する。
この番組は、ソロアーティスト1人アイドル5組で、課題にそった曲をリリースし、カムバックステージで披露、客席と視聴者のリアルな投票で順位を決める、シビアな内容であった。
ソヨンはのちに「リムジンサービス」というウェブ番組で「危機の中で、自分がより大きくなれる」という信念を吐露してて、だからこれは「このままぬるま湯にいてはダメだ」と、自分たちに千本ノックを課したのではないか。

ここで曲作り、コンセプト決め、トラック作り、歌入れ、振付とヴィジュアル決定、舞台演出、を経てシビアに結果を突きつけられる。他のチームのカムバックをじっくり見るという修行を経て、この曲に到達する。
課題はセルフカバー。

「Put It Straight(Nightmare Version)」
ミニアルバム「I MADE」の収録曲をホラー的にカバーした曲。

ここからは僕の想像だが、大勢の聴く人の心をつかむには、詞や曲、アレンジのクオリティを上げるだけではなく、
「物語性」
が重要なポイントであると気づいたのではないだろうか。
だからこれまでの曲で最も劇的な「Put It Straight」を、悪夢バージョンとしてカバーする事にしたのじゃないかと思う。

あくまでも自分の心から生まれた、「切実な物語」こそが人の心を動かし、ヴィジュアルイメージ込みで紡ぎ出されたその物語を核として歌が詞曲同時に生まれ、そこから有機的に発展したコンセプト、振り付け、演出でないと、どこか空虚で嘘くさい。

だから、この曲は本気で怖く悲しい。
だから、このカムバック舞台は、観た人が打ちのめされる。

ここに来て、ソヨンのパンチに体重がのり始めた。

「LION」

で、大傑作「LION」が生まれた。

地を這うような戦いのドラム、幻想的なミンニの呟くような歌声から、切り裂くソヨンの歌、地平線から轟いてくる悲しみのメロディ、吹き荒れる嵐のごとき音楽。
なぜこんなに寂しいのか。
なぜこんなに切実なのか。
大きな責任と人の死を背負って生きていく、女王の悲しみと孤独、そして誇り。
誰にも弱みを見せられないが、民の誉れの象徴として生きていく決意の式典。
秘められた野生の荒ぶる魂。

ただヒットさせて、(G)I-DLEとしての面目を保ち、会社を支え、結果として自由を手にする事ももちろん大事だが、それよりも自らの魂から生まれた本気で本音のメッセージをこめたいい曲をつくりつづけていくことのほうがもっと大事だと、そう思ったのではないか。

この舞台で得た確かな手応え、目の前のお客様とカメラの向こうの視聴者に確実に届き、大波のような喝采が返ってきた実感こそが、今後の彼女の宝物になったはずだ。

それを6人全員でやり遂げた、その事が彼女らの誇りになったと思う。

だから今後の(G)I-DLE達の動き、音楽ははっきり変わる。

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