(G)I-DLE 「Tung-Tung (Empty)」、「I Burn」感想。そして⋯⋯。
JAPAN 2nd Mini Album「Oh My God」
2作目の日本向けミニアルバム「Oh My God」、やはり日本語詞の曲については、特に書くことはないのだが、ミンニ作のオリジナル曲、「Tung-Tung (Empty)」の事には触れておこう。
曲の内容的には、「恋人への心が離れてきた女性の複雑な思い」という、非常に大人な歌で「満たされても Tung-Tung 空っぽ」とのフレーズが印象的だ。
ゆったりしたテンポでピアノ、ストリングスやリバーブの効いたキーボードの音が拡がる、ゆっくり心の中に潜っていくような神秘的な曲調。
で、(G)I-DLE 4作目のミニアルバム、「I Burn」。
2021年1月リリース。
「HANN (Alone in winter)」
1曲目は、2018年「HANN (Alone)」の続作。
3/4拍子か6/8拍子の(僕にはいつでもこの2つは区別が難しい)、雪景色が浮かぶような憂鬱な作品。ブルーノートが効いた、ピアノカバーが聴きたくなる曲。
「HWAA」
前曲からの展開が広がった、実に情熱的な曲。なぜかモンゴルの大草原を馬が走っていき、ドローンが猛禽類の目線で上空に登っていく、NHKハイビジョン映像が浮かぶ。
中近東ともアジアにも聴こえる、無国籍シリーズ第2弾。
「MOON」
意外や何かキッパリとした曲調の、ミンニ曲。
ディストーションのかかったロックギターが素晴らしい隠し味。
「Where Is Love」
アナログレコードのスクラッチノイズからの、ここに来て本格的なEDM。
ソヨンはある番組で「韓国人の好きなサビは必ずミヨンオンニに歌ってもらう」と言ってて、という事は(G)I-DLEの曲には意識的に「韓国人が好きなサビ」を入れてる、という事で、だからソヨンのソロにはあまりそういう箇所が見当たらないのだが、この曲にもそういうサビがない。
AメロBメロサビではなく、洋楽的にverse, chorus, bridgeみたいな構成に思える。
そう、とても洋楽的なクラブミュージックなのだ。
おそらくソヨンはこの辺りから、世界を意識し始めた気がする。
「LOST」
初めてのウギ作詞作曲。ウギが、「Learnway」というネット番組で、今度のミニアルバムには私の作った曲が入ると、とても嬉しそうにドヤってたのが微笑ましかった。
ヨーロッパ的な、ちょっとレトロな曲。
80年代のMTV的とも言える、おっさんホイホイな曲。ハイ、ご多分にもれず、俺もすっかり心を掴まれましたよ。
ところで(G)I-DLEの曲を欧米人がリアクションするYouTube動画でウギの声を「ウォームヴォイス」と言ってて、おじさんはたと手を打ちましたよ。
そう、ウギの声はとても暖かい声なんだよね!
氷のナイフのようなソヨンの声、深い森の冷たい霧のようなミンニの声、風に揺れる鈴のようなミヨンの声、2つのビー玉が転がってぶつかるようなシュファの声に比べ、ビロードの上着を肩からかけたようなウギの声があるからこそ、(G)I-DLEの曲、コーラスは唯一無二なんだと思う。
ウギのような暖かい声って、ありそうで無い。特にK-POPにおいてはね。
「DAHLIA」
このミニアルバム2曲目のミンニ曲。
心に残るサビがとても美しく、ただ耽美と言うだけでなく、ドラマティックな曲。
各メンバーの曲も増え、世界も視野に入れ始めた意欲的なミニアルバムであり、セールスもとても良かった。
当然ソヨンは今後の展開に夢を抱き、思いをめぐらしていただろうと思う。
そこへ青天の霹靂。
メンバーのスジンが色々あって、活動休止に追い込まれたのである。
ユニバースなるアプリで、K-POPを広めるというプロジェクト用に「Last Dance」という曲を作ってたのだが、スジンのパートを削除し、MVからスジンの単独出演シーンをカットする結果になった。
(G)I-DLEのダンス番長だったスジンがはじき出されたこの曲のタイトルが「Last Dance」とは、皮肉にも程がある。
「Where Is Love」的なEDMアプローチを発展させ、アプリを通じて、世界に拡げて行こうという戦略がガタガタになってしまい、全てが中途半端になってしまったが、(G)I-DLE、ソヨンにとってはそれどころではなかったのではないか。
「マンガやアニメで、主人公が突然いなくなったら、あと続けるのは難しいですよね」と後でソヨンが打ち明けたように、ソヨンにとってスジンは(G)I-DLEという物語の「主人公」にほかならなかった。
さすがの彼女も「もうダメかもしれない」と思ったらしい。
結局スジンはグループと会社を辞め、(G)I-DLEも無期限活動休止に入り、外国メンバーは国に帰ったりした。
誰しも(G)I-DLEはもう終わった、と思った。