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私がカフェを経営していた頃 /エピソード 1 「 読書する人」
13年前カメラマンに転向するまで、30年以上カフェを自営していた。そんな中、お客様との関わりで色々なエピソードが有る。これから差し障りのない範囲で経験を少しづつ話していければと思う。
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午後3時の幸せ
ランチタイムの喧騒が去り、片付けが終わった頃その人は現れる。
「リンゴバターケーキと珈琲で!」とカウンターの前を通り過ぎる時、注文する。週1のペースで窓際に座り、抱えてきた数冊の本を袋から取り出し読み始める。
それから2時間夕暮れまで、本を読み耽る。どんな本を読んでいるるのか、聞いたこともないと言うか彼とあまり話したこともなかった。その本の中にいる幸せそうな表情を見ていると、そっとしておくのが一番と感じたからだ。
本というのはその魅力にハマると、果てしなく深みにハマっていく。人生80年としてどの位の本屋読めるんだろう?週1冊のペースで読んで月4冊、年にすると48冊、15歳から読み始めたとして65年で3120冊。
日本の出版物が全てあると言われている国立国会図書館の蔵書数は1200万冊だという事だが、80歳までではこのペースでは一部分しか読んでいないということだ。国会図書館の膨大なデータ持ち出しは出来ないらしいが、向学の為、一度観に行ってみたいものだ。
普通の人が一生に読める本の量は限られている。勿論、本にも好みはあるから総てを読む必用もないし読める訳もない。それにしても本好きが、窓際で珈琲を片手に本を読む姿は、そこだけレンブラントライトが当たり浮きあがてい様にみえる。
実は僕の実家は文房具と本を販売する書店だった。でも、よく言う魚屋の息子は魚が嫌い、八百屋の息子は野菜が嫌い、本屋の息子は本が嫌いってやつです。それでも、友達からは羨ましがられ、定休日には友達がカーテンが閉じられた蛍光灯の下、集まる虫のように寄って来たものだった。そこではまるで私的図書館のような世界が繰り広げられ思い思いの本を漁っていたようにも思う。結局、思春期の男子の最終目的はエロ本だったけど...。
僕に本の楽しさを教えてくれたのは、写真学校時代の友だった。彼は学年は一緒だったが、歳は確か2歳位上だったと記憶している。彼の下宿に行くと本が山のようにあり、本の楽しさを行く度に聞かされた。どの本から読んでいいか判らない僕に、お薦めの本を紹介してくれた。その薦められた本を取りあえず読んでみて、自分に合うか判断するわけだが、そんな判断すら出来ない僕に本の楽しさを一つ一つ本を開きながら一晩中説明してくれた。懐かしい!
その後、少しづつ本を読んでいく内に、もっと素敵な本に出会えるかもしれないと、神保町通いが始まった。お腹が空いたら「いもや」で天丼を食べ、本を買ったら純喫茶店でその本を見開いた。そこから僕の本好き人生は始まる。
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そんなことを思い出している午後の静かな時間、相変わらず窓際の常連さんはリンゴのバターケーキを食べ、珈琲を飲み、誰もいない夕方の店を独占していた。夕方5時、そろそろ夜の部が始まる頃、彼はまた本を抱えて出て行った。幸せそうな後ろ姿。本を読む時、彼の本を開く時のワクワクしてた顔思い出す。ある日短い会話を彼としたことが有る。その時判ったことだが彼は出版業界に長く在籍し今は引退したということだった。なるほどと納得した。
お店を営んでいる頃は日々の仕事に追われ本を読む機会も減っていた。今はフリーランスの笑顔写真家となり、読書の時間も増えている。昔読んだ本を読み返したり積読にやっと手が伸びたりと楽しい読書している。一冊読むごとになんか成長していると感じる自己満足が読書の喜びでも有る。実際はどうなのかは自分では検証できない。
それは27年前に私が経営していたお店での小さな出来事でした。
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