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ALWAYS -商店街のゲーセン-
わたしはゲームが好きだ。
特に2D格闘ゲームが好きだ。
ストリートファイターやギルティギア、ブレイブルーにKOFにサムライスピリッツにカプエスにマブカプにAC北斗の拳にと触れてきたものを上げれば、枚挙に遑がない。
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格闘ゲームにハマるきっかけはゲームセンターだった。
当時、中2でバスケ部を辞めたわたしは、放課後部活動にいそしむ友人を尻目にとにかく暇だった。
自然と暇つぶしに駅前のゲームセンターに足は向いていた。
共働きだったため弁当を作る余裕のなかった母は、わたしに幾ばくかの昼食代を渡してくれた。なるべく安く昼飯を済ませて、余ったお金をゲームセンターで使った。
たくさんのゲームをしたが、やがて対人戦ができるゲームを好むように変わっていった。対戦相手がいないと面白くないので、駅前の古ぼけたゲームセンターではなく、自転車を一駅分漕いで国道沿いの大きなゲームセンターへ通うようになった。
初めて対戦をする目的のもとに入店した際には、ピリピリとした緊張を感じながらも、心が躍ったのを覚えている。
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わたしは大学生になった。
中学生のころとは比べ物にならないくらい生活圏が広がった。2D格闘ゲームはいまだに好きだった。調べれば自分の好きなゲームタイトルの対戦が賑わっている場所もわかったのでそこに足を運んでは対人戦を満喫した。
格闘ゲームは知識と技術のゲームだ。画面上には見えない技術もあれば、調べに調べつくさないと知りえない知識があったり、それはどちらもゲームに対して情熱を持った人たちだけのものだった。
よく足を運ぶゲームセンターができ、よく顔を合わすひとができ、自然とあいさつを交わすようになり、会話をするようになった。
彼らの名前も仕事も年齢も知らないが、家族や友人、恋人にすら理解できない「知識と技術」をもっている彼らは特別な存在だった。
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大学を卒業して、少しプラプラしたのちに就職したわたしは
やがて仕事に追われ、足繁く通っていたゲームセンターで使うクレジットの数は日に日に減っていった。
数年ぶりにそのゲームセンターにいったときに、当時の賑わいはなかった。
しかし、そこには見覚えのある後ろ姿があった。すぐにわかった、あの赤いダッドリー使い。強気なプレイでガンガン押してくるスタイルは名前も知らないあのひとだ。3年ぶりか、そこらか。
妙な感動を感じながら茫然と立っていたら、こちらに気が付いた彼は気さくに
ひさしぶりですね!(対戦)やります?
当たり前のように声をかけてくれた。
相変わらず強くてぜんぜん敵わなかったが、とても楽しかった。彼にとってもわたしは特別な存在だったのかもしれない。
それから彼とは会っていないが、なにも知らない彼のことをわたしは忘れないだろう。
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さらに時がたち、たくさんの出会いがあったそのゲームセンターは、かつて対戦台が賑わっていた2階のメインフロアには最新のゲームタイトルが並んでおり、わたしが没頭した古いゲームは地下にポツンと1台だけ設置されているだけだった。
コロナの影響もあり、いまではゲームセンターが最先端だった2D格闘ゲームもオンラインが主戦場だ。オンラインの対戦環境は年々、品質があがっていき対面とかわらない水準まできている。
しかし、わたしはときどき懐かしくなる。
タバコ臭い店内が、いつも汚いトイレが、騒ぐガンダム勢にいかつい鉄拳勢が、罵声を浴びせあいながら笑うKOF勢が、いろんなやつがいたストⅢ勢が。
ハンチング帽をかぶったやたら台を蹴るあいつも
どんな時間帯にもいる多キャラ使いのおっちゃんも
お洒落なファッションと裏腹にめちゃくちゃ荒らしてくる眼鏡の男性も
やたら強くて干されてたリーマンも
とても、懐かしく愛おしくなる。
いまこれを読んでくれたあなたにも、愛おしい今は亡き場所があることだろう。
年を越す前に、ふと足を止めて思い出に浸り、そして明日への一歩を力強く踏みしめていきたい。
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