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今日の短文 1

ひがしのにしが、詩・ショートショートなど短文を思いつくままに書いていくシリーズです。
週三ぐらいのペースで更新できたらいいなぁという思いで、日記のようなタイトルのノリにしました。

記念すべき初回は画像の通り。
では、どうぞ。


セミ     〈ショートショート〉


高校最後の夏が終わってしまった。

気持ちも運気も乗りに乗り、
ここまで全部うまいこといけていたのに。

最後の最後で、彼氏に振られた。

暑い夏が一瞬で冷めたような気がした。

今までは暑苦しく晴れていた空も、
その日はどしゃ降りだった。

雨が降り止もうと、
私の心の洪水は止まる気配を見せなかった。

翌日、雨はぱたりと止んだ。
これといった被害は私の心だけ。

私は病んだ。
初めて体調不良以外で学校を休んだ。

クシャクシャな気持ちをどれだけ復興させても、
雨に濡れ腐った彼への思いが、
災害廃棄物のように出てくるだけだった。

彼が他の子と良い関係になっていたことは、その日LINEで知った。
あの時「ごめん」の一言で去った彼とは思えない程、良い顔をしていた。

雨の余韻に歯切りがつき、
セミやカエル共が喚き散らす、乾いた夜に。

私は思いっ切り泣いた。
まるで求愛をせがむセミのように。

微かな甘酸っぱさを含む複雑な気持ちが、
私の嗚咽に乗って、些細な自然に溶けた。

数時間、たくさんのセミに混じり鳴き続け、
最後はこと切れたみたいに静かに眠った。

しばらくしてセミ、カエルの喚きが冷め、
私の頬に一筋の涙が伝うのを感じた。





どうでしたか。
アドバイスなどくださるととても嬉しいです。
パット見凝ったように見せかけて
そこまでもなかったように思えますね。
(私の妙な癖です。)
セミの時期はもうほとんど去ってしまいましたが、この子も私も新たな出会いの芽が、これから芽生えればいいですね。

次回もお楽しみに。

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