
一陽の嘉節絶滅危惧種ヒト
2025年2月7日公開の『青嵐俳壇』
森川大和選、『嵐を呼ぶ一句』に選んでいただきました。
森川大和さん、ありがとうございます。
俳句解説
「一陽の嘉節」は、冬至を祝う季語です。冬至を境に日は伸びていきます。まだ残る寒い風の中に、春の兆しを見て喜ぶのです。
これには停戦や和平の喜びも重ねてあるか。
全く意識していませんでした。
確かに時期が重なりました。
喜ばしいことです。
選評を読むと、自分でも気づいていなかったことに気づける。公募の魅力です。
推敲過程
クリスマス絶滅危惧種サピエンス
→推敲
→建国記念日絶滅危惧種ヒト
→推敲
→一陽の嘉節絶滅危惧種ヒト
推敲は大事ですね。最初の句は選ばれなかった気がします。
第一句は、「町」のイメージです。第二句で、「国」に広がりました。第三句で「人類」まで広がります。ぜんぜん違う。
返句のような選評の文
陰に満ちた冬至の日に、延びゆく日中の長さを祝う「一陽の嘉節」。これには停戦や和平の喜びも重ねてあるか。しかし、それらが一度破られ、泥沼に陥ると、行きつく先は…。白泉の廊下の奥をもっと見よ。
「白泉の廊下の奥をもっと見よ」
この文章は無季俳句です。
「白泉の廊下」とは何でしょうか。
戦争が廊下の奥に立つてゐた 渡辺白泉
この「戦争」とは実際には、憲兵らしいです。言論を封殺する憲兵を、戦争として擬人化しました。
何を目指した俳句だったか
同週の青嵐俳談に送った、他の俳句を見てみましょう。
終末の宮線を添ふ時計かな
「終末時計」を分解して使うのは、無理がありました。
宮線を添へる終末時計かな
こちらの方が良かったですね。
「一陽の〜」の句と同じなのは、「時間」的な要素です。
俳句には大きく分けて二つある
正岡子規は雑誌『ホトトギス』で、河東碧梧桐と高濱虚子を推しました。
推薦文を読むと、俳句を大別できます。
印象明瞭なる句
例:赤い椿白い椿と落ちにけり
時間的俳句
例:遠山に日の当りたる枯野かな
桐一葉日当りながら落ちにけり
(子規が挙げた例句ではなく、坪内捻転さんの『高濱虚子 余は平凡が好きだ』から引用)
視覚系俳句と、非視覚系俳句です。このあたりの詳しい解説は、堀田季何さんの『俳句ミーツ短歌』に譲ります。
時間的俳句を作ってみたかったのです。
二物衝撃
一陽の嘉節(冬至)を境に日は長くなっていきます。
それに対して絶滅危惧種は、先細りする雰囲気です。
絶滅のリスクが高くなっていくことを俳句にしました。
石垣りんさんの言うように、「生と死のきわどい淵を歩」いているのです。
相反する二つのものを一句に取り合わせるのは、伝統的な俳句の技法です。
このような形を「取り合わせ」や「二物衝撃」と呼びます。
一物仕立てにも挑みたい
二物衝撃が得意です。
しかし、一物仕立てや、一物深掘りの俳句にも挑戦してみたいです。
捻り技を使って『嵐』に選んでいただきましたが、次は正統派の俳句も作りたい!
『天』『地』『人』に選ばれるため、精進します。楽しみながら。
約1300字読んでくれて、ありがとうございました。