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遺書(松本人志リスペクトではない)

漠然と何かを残すために自分は生きているのだと感じる瞬間が幾つかある。文字を書き記すことだって自分の残す活動の一種であるし、自分が生産したものを見た人に何かしら少しでも良い影響を与えればなといつも思っている。
自分が何かを残したいと思うのはある種厨二病の延長戦で、主人公になりたくて、物語の一部になりたくての理想をまだ捨てぬまま大人になっていってしまってるのかななんて思う。
僕はなれる範囲で主人公になりたい、世界なんか救わなくていいから少しだけ何かをひっくりかえせちゃうような人間になれたらいいなと思っている。

だがしかし、僕はゲイだから主人公になれない。

なので、僕は一刻も早くこの界隈から離れなきゃ行けないし主人公になるためにもっと若いうちからすべき行動をしなければならない。鶏むね肉を買ってブロッコリーを食べて自重トレーニングなんかしてる場合じゃない。僕はここから逃げなきゃ行けない。
僕の理想の主人公になるためには、起承転結があった方がいい。最悪、転結ぐらいでもいいけどなるべく起承転結が良い。僕はロジックを組んで物語を作ったり他作品を俯瞰で見たいタイプなのでなるべくやはり起承転結が良い。僕が普通に生きることが出来たなら、ノンケに生まれていたら生きてるだけでなんらかのライフイベントがあって、良い事があって、悪いことがあって、でもそんな悪いことも次のいいことの為の前フリだねなんて誰かと笑ってそんな風に生きていきたいし、生きていける挑戦権のようなものが与えられてると思う。僕は結婚式を上げて友達とガハハと笑っていたいし、子供の顔を親に見せてあげたい。
子供のうちに描いていた理想をなるべく綺麗な形でそのまま叶えてあげたい。実際問題現実はそう綺麗じゃなくて、手本通りの人生ゲームみたいな生き方をしてる人なんてそうそういないと思うんだけど僕は丁寧に生きていたい。ずっと笑っていたい。当たり前を当たり前と享受して笑っているためには、僕が主人公でいるためには、やはり、
ここを出ないといけない。
反対にゲイにはライフイベントがない。友達という枠組みと恋人という枠組みを大きく取っ払って曖昧にしてぐちゃぐちゃにして自分の内に秘めているセンシティブな話題を公に出来ることを気持ちいいと解釈してそれだけを肴にずっと飯を食っていくような、そんな人生は送りたくない。性の情報なんて見たくない。誰がタチでウケで今日何回シコったなんて言う必要がない情報で溢れる界隈に僕はずっとは居続けられない。恋人を作っても終わりがなくて、セックスという行為さえ終わってしまえば僕たちはゲームクリアで裏ステージも隠し要素もない。ダンジョンでどこか取りこぼした存在もしない宝箱を見つけにいく酷く惨めで無意味な行為を繰り返すだけになる。前文は凄く大袈裟だけどやっぱりなんだか悲しいじゃないか。ゲイの僕はいつか死んじゃう。ゲイの僕を殺した生活をいつか始めたくてそのためになるべく今のうちに僕を愛し愛されて生きたい。でも僕はすぐ死んじゃうから深くは仲良くならないで僕のことなんてすぐ忘れるくらいの存在であって欲しい。これを書いてる最中に泣いちゃうぐらい弱い僕だけどいつかとんでもなく深く愛されればいいなって思う。愛さないでいて欲しいけど深く愛されてたくて、普通に生きたいけど、普通に生きない僕も愛して欲しい。僕は矛盾だらけで子供のまま。
存外この界隈のことを愛せてこっちでずっと生きていく覚悟ができる可能性もあるかもしれないが多分数年もすれば僕は居なくなってしまうだろうから、僕はいつ自分が死んでもいいように身辺整理をしなければならない。死ぬ時に備えてゲイの僕は全てが嘘であり続けなきゃいけない。僕を構成する本当の部分がなるべく残らないように丁寧に消して、跡形もなくひがしという存在が直ぐに消えてしまえばいい。
だから本名も言いたくない。いつかゲイの僕が死んでも、誰かの記憶に本当の名前だけは生き続けてしまうから。好きな食べ物とか趣味とか好きな音楽とか全部嘘です。
ホントは全部ありのままの僕を構成しているけどそれは本当になっちゃうので、どうか忘れてください。

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