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オルバン・ハンガリー首相の中国訪問(2024.7.8)
私は明日の朝、早朝の電車に乗って都内のホテルに行き、「ヨーロッパからみた中国」について話をしないといけないので早く寝たほうがいいのですが、明日の話に絶対欠かせない展開をハンガリーのオルバン首相が作って下さったため、泣きながらまとめています。
こんな夜遅くに誰も私のマニアックなnoteなんて読んでいないとは思うのですが、せっかくなのでまとめのごく一部をお裾分けとしておいておきます。
(トップ画像は、華春瑩外務次官の手にうやうやしくキスをしようとするオルバンです。動画のこの瞬間をスクショするの、とても苦労しました。
…いや私、なにやってるんでしょ…)
まずは「平和の使者」を自らを位置づける、オルバン首相の肉声(およそ3時間前にXで公開)を聞いてみましょう。
President Xi made it clear to me today that #China will continue its efforts aimed at creating the conditions for #peace. We are not alone!
— Orbán Viktor (@PM_ViktorOrban) July 8, 2024
Peace mission to be continued… pic.twitter.com/TNz1GcwIgB
(以下ほぼ全訳)
「キーウとモスクワに続いて、北京からお届けしています。
私の平和ミッションの第三番目の行き先です。
習近平国家主席との会談が終わったばかりです。
もちろん、戦争の決定権は戦争当事国にあるわけですが、
3つの世界大国も決定的な影響力を持っています。米国とEUです(字幕ママ。当然、もうひとつは中国と言いたかったはず)。
彼らもまた、いつ戦争が終わるのかについて影響を及ぼします。
私が戦争当事国(=ウクライナとロシア)と会談した後、北京にやってきたのはそのためです。
我々と習近平国家主席は、中国の平和計画について議論しました。
中国は、(戦争開始)当初から明確に平和にコミットしていた、ただひとつの世界大国です。
これはハンガリーにとって重要であり、EU全体にとって重要です。
習近平国家主席は今日、平和創出のための努力を続けることを明らかにしました。
私たちだけではありません。私たちは努力を続けます」
…色々と言いたいことも出てきますが、ぐっと堪えて紹介を続けますと、
そのさらに数時間前には、オルバン首相はこのようなポストもしてました。
#China is a key power in creating the conditions for #peace in the #RussiaUkraineWar. This is why I came to meet with President Xi in Beijing, just two months after his official visit to Budapest. #HU24EU #peacemission pic.twitter.com/6UcFkb4ynQ
— Orbán Viktor (@PM_ViktorOrban) July 8, 2024
(意訳)
「中国は、ロシア・ウクライナ戦争における平和の条件を創出するにあたって鍵となる国家です。
このため私は、習近平国家主席のブダペスト訪問のわずか2ヶ月後であるにもかかわらず、北京に赴き習主席に会いに来たのです」
…ちなみに、その2ヶ月前の習近平訪中(5月)の際の、誇らしげなオルバン首相のツイートはこちらです…
President #Xi concludes his 3-day state visit to #Hungary today. We agreed in 2009 in #Beijing, when President Xi was vice-president and I was leader of the Hungarian opposition to strengthen Hungarian-Chinese relations. 15 years later, we signed 18 agreements, held over a dozen… pic.twitter.com/lFGiaN45qZ
— Orbán Viktor (@PM_ViktorOrban) May 10, 2024
(だんだん疲れてきたのでかなりいいかげんな意訳)
・ 自分(オルバン)が野党の指導者だった時期の2009年に*、当時国家副主席だった習近平と会い、ハンガリーと中国との関係強化を誓い合った(=国のトップ同士ではなかった時期から自分たちは仲良しなんだぜ)
・ あれから15年の月日が流れ、ハンガリーと中国は18の協定を結び、無数の会合を行い、そして新たな「新時代のための全天候型包括的戦略的パートナーシップ」(ママ)について合意した。これこそホントのコネクティビティ(連結性)ってやつよ!
(*オルバン率いるフィデスは1998年に政権与党となりましたが、2002年から2010年までは野党に転落していました。)
今回のオルバンの「平和ミッション3.0」なる訪中に話を戻しますと
EUの他の加盟国およびEU諸機構は、今回のオルバンのロシア→中国訪問を厳しく批判しています。
その批判の主たる内容は、オルバンは(7月1日からハンガリーが就任した)EU議長国の首脳の立場を掲げて訪ロ・訪中しているが、それはEUのなかの誰もオルバンにそのミッションを委託していない、というもの。
つまり、EUの誰にも頼まれていないのに、そしてこれまで散々EUに反抗し散らかし、ウクライナ支援にもロシア制裁にも反対しまくって、EUの結束を乱してきたにもかかわらず、EU議長国になった瞬間シレっと「EUを代表しているかのように装って」ロシアや中国に勝手に行っている、という趣旨であるようです。
この記事↓で紹介されている「中国側によると、オルバン氏は自身のウクライナ、ロシアへの訪問について習氏に報告した」というのも、「EU議長国の首脳の立場」として行ったのであれば、かなりの問題になりそうです。
ウクライナから得た(おそらく相当に機微な)情報をオルバンの独断で中国に伝えることは、普通に考えれば越権行為です。
オルバンは今回のロシアおよび中国訪問時に、EU議長国としてのロゴを随所で使用しているという指摘もあります。
「私はEUを代表してやってきましたよ!」という明確な発言がなくても、議長国ロゴを使用しているのであれば同じこと、という理屈です。
Diplomatic source notes Orban has "intentionally left a lot of ambiguity" - e.g. displaying the logo of the EU presidency in his own personal comms on these trips
— Finbarr Bermingham (@fbermingham) July 8, 2024
At today's midday briefing, EU spox @MamerEric reminded us: "He has no mandate on these visits to represent the EU"
このため、9日に予定されているEUの大使級会合では、ハンガリーの越権行為を厳しく追及する模様・・・という噂が出ています。
Safe to say Orban's adventures in Beijing and Moscow are not going down well in Brussels.
— Finbarr Bermingham (@fbermingham) July 8, 2024
Diplomats plan to grill the Hungarian presidency at Wednesday's meeting of ambassadors.
Said to be "growing concern" at Orban linking the "so called peace mission" to the EU presidency
いずれにしろ、ハンガリーのこの6ヶ月間のスタンドプレーといかに向き合うか、ということが、今年後半のEUにとって深刻な問題となりそうです。
このオルバンの中国訪問についてはまだ現段階では日本語記事は多くないのですが、こちらのYahoo!記事にコメントを付けておきました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ffa7c97d32995e0b84fd7205ba81a9d81a625592
・・・それでは皆様、おやすみなさい。
明日私が寝坊したら、オルバンのせいと言うことにしたいと思います。