噛み癖を直すには
『どうしたの?何か辛いことがあったの?』
ボロボロの手首
仕事場でこんな風に心配されるほど手首に刻まれた無数のアートな横ストライプ。
『いやぁ、コレにこれされまして〜』と思わず小指を立てる昭和な女。
犯人は我が家の愛すべき末娘、お嬢。
うちの子になって三ヶ月、御歳七ヶ月となったお嬢はなぜか私にだけ襲いかかってくる。決まった時間に私の前にやってくると耳をステルス、体を低く構え戦闘体制に入る。
唸るとか威嚇はないのだが、ただ襲ってくる。おかげで俺の体はボロボロに。
その事をボランティアさんに相談すると『もう一匹飼ったら直るよ』と言われた。
いやいや、私猫初心者。猫と言うよりもペット初心者ですの。二匹なんて肩の荷がドスコイ級ですわ。
仕方なく自分でも調べてみることにした。
私の勤め先の社長もおっしゃった。
『困った時はYahooでググれ』と。
噛み癖を直すには
これは噛み癖と言うらしい。
子猫の頃の噛み癖は狩りの練習など原因は色々あるようだ。直し方についてはYouTubeにいっぱい出ていた。ほんと便利な世の中に乾杯!
『私の家の猫も噛み癖がひどく、こんな方法を試しました』から始まりふんふんとやり方を確認。
・噛まれたらオモチャなどを代わりに口に入れて噛ませる。
・いっぱい遊ぶ。
・噛まれたらその手をちょっと奥まで押し込んで噛むと嫌な思いをするんだよ、と教える。
・噛まれたら噛み返す。倍返しだ。
・嫌いな匂いのスプレーを使う(噛み癖対策用スプレーなるものがあるらしい)
もう一つほぼ確実な方法があったがそれはスルーして、とりあえずすぐに試せそうなスプレー以外を早速やってみた。
結果、
『大丈夫?悩みがあったら聞くよ』
さらに周りに心配をかけるほど、いい感じの手首に仕上がった。
イベントの質問会に縋る
噛み癖に悩んでいることを犬派の親友に相談してみた。
『今度こっちで保護猫のイベントがあるよ。相談会もしてるみたいだから一緒に行こう』と言ってくれた。
イベント会場では保護猫の里親募集や写真展示などもあり結構盛大で人も多く賑わっていた。
その一角に10名ほどが座れる相談コーナーが。
行こう!と引っ張られ、ドキドキしながら着席した。2人のボランティアさんが活動報告やおもちゃの安全性などなど詳しく説明してくださるのを聞いていると、いきなり
『みなさん、何か質問とかお悩みとかありますか?じゃあそちらの方から』
え?は?お?ちょちょちょちょ!
何?これって全員参加型相談会でしたか!
実は私は極度の緊張しぃ。人前で話すのは意識どっか行くほど苦手。
いやいやめちゃくちゃ緊張するがここはしっかり質問しなければ!そのために来たのだ、ビビっていてはいけない!
深呼吸をして心を落ち着かせて皆さんの話を聞いた。
脱走が心配で扉をつけたとか、これから飼いたいけど世話ができるか不安だという以前の私まで現れた。そして親友の番。
犬派なんですが、と前置きしてから質問をしていた。澱みなく話す親友。相変わらずすごいな。尊敬しかない。…犬派だったよな?君。
そしてとうとう私にマイクが。マイク…2メートルくらいしか離れてないんだからマイクなんていらんやろ!と突っ込みたくなったが、引き攣る笑顔で汗ばんだ手を伸ばし黙って受け取った。
はい、あたくしトリを務めさせていただきます。ラストです、最後です。心臓が肋骨突き破って海を渡りそうです。
『え〜まずあちらの方がおっしゃった脱走の…』から始まり若干の笑いをとりつつ『実は噛み癖が酷くて』と一番聞きたい事でなんとか締め括った。極度の緊張の中でも笑いを欲するのは関西人の哀しき性。
話が終わるとボランティアさんが笑顔でおっしゃった。
『わかります!それね、皆さんよく悩まれるんですよ。一番早く直すならね』
子曰く『もう一匹飼うしかないんです!』
例のYouTube動画の結末はこうだった。
『猫の噛み癖を直すのに色々試しました。なんだよ、結局それかよ!と言われるでしょうが、もう一匹お迎えしました!』
あえて言おう、結局それかよ!
それをなんとか回避したくて足掻いたけれどこれが一番早いみたい。
あのボランティアさんもこのボランティアさんもそれがいいとおっしゃった。
猫同士の相性もあるから確実では無いかもしれないけれどこのままでは私の腕が洗濯板になってしまう。これに賭けるしかないのかもしれない。
肩の上のドスコイを上手投げ、ボランティアさんに連絡。
決心したの?いい子いるよ〜と何処ぞの呼び込みの様な返事をいただきすぐにお邪魔した。
そして
不安たっぷりでお迎えした三ヶ月の男の子。
私の腕も治りましたとさ。
そして現在、