病気と医療費とペット保険
朝起きるとハゲていた。
真菌という病気
トライアル三日目にしてシャーと拒絶されなくなり、嬉しさにむせび泣いてから更に四日目の事、いつものように愛らしいお嬢のご尊顔を拝し恐悦至極…??
なんだ、この違和感。
可憐なお鼻の上と宝石のようなヘーゼルの瞳を包む麗しき瞼がハゲちょる!
しかもお目目の下の雪の如き純白の毛がシミっとる!
なんてこった!これは一体どうしたってんだ!もしかしたらケージの上から落ちて怪我したのだろうか…
よく見るとうっすら血が滲んでる気もする…
トライアル中に大事なお嬢に怪我などさせてしまうなど市中引き廻しの上打首獄門に値する大罪!
とにかくボランティアさんのご報告を!と慌てて写真を送り指示を仰ぐ。
『ああそれ真菌だね』
真菌?それはなんぞ?
調べてみると真菌症は真菌(カビ)による感染症で子猫に多いらしい。自然治癒することもあるけれど、ひどくなると脱毛が全身に広がることもある、との事。
ここで面倒臭がりな小心者だがとても素直な私の『小心者で素直』な部分が発動する。
トライアルの契約書を読み期間中の怪我や病気にかかる費用はこちら持ちと確認、ボランティアさんに連絡して初めて動物病院に電話をした。
だが、近くの病院は予約がいっぱい。
別に今すぐどうこうなる病気ではないのだから予約だけ先にとっておけばいいものを、想像力豊かな私の頭には、すでにスフィンクスのように全身毛のないスベスベお肌のお嬢の姿が。
幸い、もう一軒ちょっと離れた病院にちょうど空きがあったので、急いでそちらに直行した。
初めての動物病院
診てくださったのは綺麗な女医さん。
優しくてとても丁寧に説明して下さって
『時間はかかりますがきっちり治しましょうね』
と行ってくださった。なんて心強いお言葉。
そんな会話の中、先生はちょっと真顔でこうもおっしゃった。
『トライアル中ですよね。この子は今病気ですが、家族に迎える気持ちはありますか?』
『もちろんです!』
即答した自分が誇らしいぜ。
昔の私なら面倒ごとはごめんだと直ぐにボランティアさんにお返ししていただろう。でも今は違う。
この子は私が一目惚れした。お嬢は望んでなかったかもしれないけれど、この家に来てよかったと思ってもらいたい。その為ならなんだってする。
この素晴らしい覚悟が恐らく私の表情に出ていたのだろう。先生も安心して次の予約を取ってくださった。(本当に動物好きの優しい先生だと思う)
治療は終わり、良かったね、治るまで頑張ろうね、とキャリーバッグの中で可愛く鳴くお嬢に声をかけて名前を呼ばれるのを待つ。うふふ、可愛い声。
だが数分後、受付で私は凍りついた。
そう、私はこの時知った。動物の医療費はバカ高いという事を。
治療と飲み薬2週間分だけでこんなに高いのか!
まぁ人も10割負担なら目が飛び出る金額だ。
明細を持つ手が若干震えるのを抑えながら、笑顔で財布をのぞく。ああ神よ、ありがとう…イチ諭吉がいてくれた。
保険か貯金か
家に帰り、まず何をしたか。
もちろんペット保険についての情報検索である。
とても安くてお得そうなものもあれば高額医療に手厚く対応してくれるちょっとお高めのものまで、正直色々ありすぎてよくわからない。ここで『面倒臭がり』が発動する。
保険内容を調べるのを断念した結果、毎月ペット貯金をする事にした。毎月財布に入れればいいんだから楽だよな、と。
保険は掛け捨てだし、それなら月五千円ずつでも貯めていけば…という人は結構多いらしい。
ペット保険の加入か貯金を譲渡の条件としておられるボランティアさんもあるようだ。やはりそれほど医療費というのはペットを迎える上で大きくのしかかってくるものなんだと改めてもらった明細を眺めて…震えた。マジ高い。
正式譲渡終了後、治療を続けて完治しさらに愛らさを増したお嬢をご照覧あれ。
私の労働の対価はすべてお嬢のために。
猫に貢ぐ。
誰が言ったのだろう。良い言葉だ。
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