短編小説『to do list』
また、買い物をしそびれてしまった。
忘れっぽい性格もあり、せっかく買い物に出たのに何かしら買い忘れてしまう。今日は三角コーナーのネットを買いそびれて帰宅した。
紙にメモする、スマホのメモ帳に書く、色々と試したのだけど、メモした事を忘れてしまったりして、ほとんど効果はなかった。
何かしら解決策は無いかと考えた末、スマホのアプリで良いモノが無いかと検索してみることにした。「買い忘れ」でなんとなく検索してみる。「to do list」と呼ばれるアプリがいくつかヒットしたのだけれど、高機能なのは必要ないし、スマホの画面に買うものを表示させてくれたらいいので、適当に選んだ。
最初は上手くいった。ちゃんと画面を見て、買い物をするようになったからだ。それも最初だけ。ふらっとお店に入って思いつくままに買い物をして、帰宅してから画面を確認しなかったことを後悔することが度々あるようになった。
ところが最近不思議なことが起きるようになった。見に覚えのないレシートが気がつくとテーブルの上にあるのだ。豆腐一丁、これは昨日麻婆豆腐を作るつもりがスーパーで買いそびれた品だ。あれ?買い直しにいったっけ?豆腐だけ?全く記憶にはない。しかし、冷蔵庫には豆腐が入っているし、レシートもある。
不思議なこともあるもんだと思っていたが、度々見知らぬレシートがテーブルの上に置いてある事が起きるようになった。どれも「to do list」に書いて買いそびれた品だ。計算するとちゃんと代金は財布から払われてるらしい。
俺はちょっとした出来心で「車を買う」と書いてみた。まさか車が届くことは無いだろうと思っていたら、なんと…勝手にネットオークションで落札していた。こちらの懐事情を理解しての買い物なのだろう、10万円の軽自動車だった。おまけにクレジットでの支払いまで済ませてある。さすがにこれには参った。うかつなことは書けない。
夢が叶うという幸運のアイテムではないということか…。
しかし、俺はとんでもない事を思い付いてしまった。
「彼女を作る」これならばお金はかかるまい。
さぁ、どうなる?彼女出来ちゃう?
ワクワクしながら待つこと一週間。諦めかけたころ。自宅に特大の荷物が届いた。
箱に入っていたのは、俺の理想通りの顔とスタイルの…ラブドールと40万円の請求書だった。