嬉しいような寂しいような転院

夏の日差しは暑く、コロナウイルスの影響で外出する機会が減った私は夏の暑さを強く感じながら出勤した。今日の勤務は夜勤。この暑さのことなんてすぐ忘れるくらい忙しいのだろうな、と思っていた。



日勤者から申し送りをもらい患者さんのところへ挨拶に行くと悲しげな顔をしている患者さんがいた(以下Aさん)。理由を尋ねると「もう少しでリハビリの店(リハビリ病院のこと)に行くことになるから寂しいの。あなたにも会えなくなる。」と答えた。その瞬間、Aさんとの思い出が蘇る。夜勤中、他のスタッフの対応が怖いといって泣いていたこと、食事摂取量にムラがあり半量は食べれるように頑張って食事を食べたこと、術後、頑張って私と一緒に離床したこと。Aさんの洗髪をしたこと。よくベッドサイドで Aさんの昔の話を聞いたこと。Aさんと話すのが楽しくて私にとってAさんは癒しの存在だった。



私はその後、寂しいような悲しいような気持ちで夜勤業務をこなした。Aさんがナースコールを押すといつもより心を込めて対応し朝はAさんをデイルームへ移動して朝食を食べた。美味しそうに朝食を食べているAさんを見るとなんだかもっとAさんに色々できたはずなのに、忙しさに追われてケアできなかった時のことを後悔した。夜勤が終わり寂しがるAさんに挨拶してちゃんとご飯も食べるように伝えて帰った。



夜勤明けの2連休明けは日勤。朝出勤して病棟に行き電子カルテから情報を取り患者さんの元へ挨拶に向かう。Aさんがいた場所にはもうすでに違う患者さんがいた。まるでAさんが初めからいなかったように感じる。大部屋のメンバーも変わっており、 Aさんがいた同じ部屋だけれど違う大部屋のように感じた。Aさんが元気になってリハビリ病院へ転院したことは嬉しいけれど一抹の寂しさを感じながら患者さんに挨拶を済ませ大部屋を後にした。



夏の日差しは暑く今日もデイルームには太陽の光が降り注いでいる。Aさんもリハビリ病院でリハビリを頑張っていることだろう。Aさん、リハビリ頑張ってね。暑いからちゃんと水を取ってね。脱水にならないように体調に気をつけてね。私ももっといい看護師になれるように頑張るから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?