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任意保険基本のき-対物賠償保険

自動車事故によって相手の自動車や電柱、塀などの財物に損害を与え、法律上の賠償責任を負担することによって発生する損害を補償するのが対物賠償保険です。一般的には対人賠償、対物賠償が自動車任意保険の最もベーシックな部分であり、対事故相手との関係の中での人身、物件両方をカバーします。自賠責保険は人身にのみ適用される保険ですから「任意」とはいえ、任意に未加入の場合、破損させてしまった相手の物品への賠償を保険で賄うことができないのでそのリスクは決して小さくありません。ただ一方で、対物賠償は基本的に金銭で、破損してしまった当該物品の有する価値(時価)を限度に賠償を行うのが基本ですので、法人等、一般的な賠償を行うに十分な資力がある場合は免責金額を大きく設定したり、交通共済などでは年間使用限度額や一事故あたり限度額を定めていたりと特殊な運用も見受けられます。

一方で対人と比較した時に全損・分損という概念があったり時価額をどうやって算出するのか、周辺損害、例えば代車費用などをどこまで認めていくのかなど論点も多く、非常に手間もかかりますから任意保険に加入しないという考え方は取るべきではないと考えます。

特約

対物賠償は時価という概念に拘束されますから、長年乗ってきた20年来の愛車が購入当時の新車価格で200万円だった場合、その思い出、愛着は計り知れないものがあるでしょうし、直近の車検でもそれなりの費用を投じていることは容易に想像ができますが時価額としては新車価格時の10パーセントと考えるのが通常です。例えば追突被害事故にあったときに車両後部が大破、修理見積もりが100万円であったとしても「時価20万円ですのでお支払い可能なのは20万円です」では交通事故被害にあった被害者としては到底納得できるものではありません。まだまだ修理して乗るから修理金額全額支払え!慰謝料も払え!と言いたくなると思います。対物には慰謝料の概念はありませんので後者はどうしようもない(想定している事故の規模からお怪我もあると思いますので対人の論点でご自身の負傷に対する慰謝料を得ていただくより他ありません)のですが、修理金額全額払え!は、やはり「それはそうですよね」ということになりますのでそういったニーズに対して特約でカバーしています。

「対物全損時修理差額費用特約」

(対物超過、という呼び方をすることもあります)を保険に特約としてつけておくことによって、時価額よりも修理金額の方が大きい場合修理金額が補償されます。保険商品によって当該特約に上限金額が設定されている場合や、自動付帯で当該特約が対物保険の一部を構成している場合もございます。

上であげた時価額の計算方法や、評価損、あるいは過失責任の割合についてなど、交通事故の多くは揉め事です。自分は悪くない、被害者意識が強い時に「あなたも30パーセント悪い!」などと言われても多くの人は素直に受け入れることはできないのではないでしょうか。そのようなケースで登場するのが

「弁護士特約」

です。交通事故を解決まで弁護士に委任できるので非常に便利な特約ではありますが、弁護士によっては解決までが長期間化してしまったり、必ずしも委任者の思うような交渉にならず満足を得られないようなケースも散見されます。一般に交通事故において弁護士依頼を検討するシーンとしては相手方との交渉が並行線で折り合いがつきそうもない場合や責任割合にどうしても納得ができない場合、対物に限った論点ですが評価損発生を強く主張したい場合など、保険会社との交渉で満足を得られないと感じる場合が多いと思います。これらケースにおいて弁護士委任を検討する場合はほとんどが相手方への強い悪感情が生じてしまっていたり、当該の交通事故によって精神がすり減ってしまっている状態でしょうから、弁護士委任をする場合は本当に納得のいく仕事をしてくれる先生であるのかをじっくり観察し、安心して任せられる確信のもとで委任することをお勧めします。(絶対に適当に選んではいけません! 保険会社によっては弁護士の斡旋もありますが、保険会社担当者と相談の上、ご自身で弁護士を選定されることを強くお勧めします)

なお、弁護士特約は保険契約者または被保険者の故意、重過失による損害や被保険者の酒気帯びを原因とする事故、天災地変によって生じた損害には使用することが通常できませんが、保険商品によっては自動車事故のみでなく日常生活上の事故にまで拡大している保険もございます。

その他にも対物保険には「他車運転危険補償」や「ファミリーバイク特約」「個人賠償責任保険特約」などの多彩な特約があります。特約は上であげた対物超過のように自動付帯されるものもあればセットする、しないで保険料が上下するものがあります。いざというときのための保険であればこそ、中途半端な内容で入るよりはしっかりと必要な補償を選び加入することが重要と言えるでしょう。個人的に考えると対物超過は絶対必要、弁護士特約はどちらでも。個人賠償責任保険はクレジットカード等のオプションで入れるものなど様々な商品がありますので必ずしも自動車保険とセットにしておく必要はないと考えます。(※また別の記事で触れようと思います)この辺りは人によって異なりますので保険加入時や更新の際に保険料を見比べながらじっくりと検討することが重要です。

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