コロナワクチンを150人に打って思ったこと
ぴなくるすです。
連日、コロナワクチンの接種のニュースが飛び交っていますが、ぴなくるすも先日、ワクチン接種担当医師としてお手伝いしてまいりました。皮膚科医はコロナの治療そのものには貢献できていないため(発熱外来とかはやってますが)、せめてもの社会貢献です。
実際投与医師として働いてみて、ニュースでしか知り得なかった事が、体験として知り得ることができました。
今後接種医師になる先生方、接種を控えている方、体験談として読んでもらえるとうれしいです。
接種担当医師になるまでの経緯
これは色々なパターンがあると思います。今回の場合は自治体からの要請でした。自治体からアンケートが届き、●月●日、医者●名を派遣できるかを○×で記載し、あとは自治体がシフトを組んでいく形です。
今は、色々な医師派遣会社がここぞとばかりにコロナワクチンドクターの斡旋をやってますから、個人的にそちらから申し込むこともできます。
自分は産業医の知り合いからLINEで頼まれたこともあります。担当医師になるまでの道は色々ですね。
給与はでるの?
もちろんでます。さすがにボランティアでやっている先生はいないんじゃないでしょうか。というのも、先生たちは自分の通常業務をやりつつ、その空いた時間を使ってワクチン接種を行っていきます。隣のブースにいた先生は自分の昼休みの1時間だけ接種担当して、すぐに自分のクリニックにとんぼ返りするなんてパターンもありました。土日接種の場合は自分の休みの日を削ってやっているわけですね。
医師派遣斡旋会社のホームページを見ると、時給は1-1.5万円くらいが相場のようです。一般に医師のバイトの時給は1万円といわれていますから、妥当なのかも知れません。しかしニュースを見ると地方自治体によっては時給3万円なんてところもあるらしく、地域差があるようです。
一般業務をストップさせて医師を確保する難しさ、政府が掲げる1日100万人接種の目標のためには、ある程度給与を出さないと医者が集まらないという苦しい状況なのかも知れません。
時給3万なんて聞いたら、さすがにビックリしますが、通常、勤務医が自分の外来をストップさせて接種会場へ向かうのはかなりハードルが高いです。
どれくらいのペースで打つの?
実際自分がやったのは、2時間で150人接種しました。120分で150人なので、一人にかける時間は1分以内。それが3ブースあったのでだいたい400-500人くらい投与したのでしょうか。ただ、テレビに見るように非常に流れ作業がよくできており、大きな問題はなし。こういう列をなしてみんなで打っていく感じ、日本人の生真面目さが出てますね。皆さん素直にスタッフの指示に従っていました。
2時間で150人、これは結構ハードでした。20人くらい打ったあたりでゾーンに入った錯覚があり、自分の回りだけ周囲と違う時間軸が流れているのかと錯覚するくらい良い回転でした。いい看護師さんが助手で助かりました。
バイトによっては9-17時なんてところも多くて、この作業を8時間もやったらおかしくなりそうです。。。
生年月日問題!! 誤記入率90%!?
問診票には生年月日を書く欄があります。今回担当したのは65歳以上の高齢者接種だったのですが、冗談でなく90%くらいの人が記入ミスをしてました。
というのも、生年月日記入欄には【□□□□年□□月□□日】と書いてあり、それを埋めていきます。よく見る普通のテンプレートです。しかしこれ、お役所書類にしては珍しく、西暦での記入なんです。小さく左に西暦って書いてあるだけから、高齢者はほぼ読めない。字小さすぎ。
なので、本当に90%くらいの方が【□□□□年】のところに【昭和15年】とか書いてて、係の人に二重線で西暦に書き直されてました。小さな【□□】に頑張ってみんな【昭和】って書いてありました。
【19□□年】っとテンプレートにすればいいじゃんとかも思いましたが、今後16歳以上の接種が始まると、2000年代生まれも当然いるわけで、【□□□□年】というテンプレートは作りにくかったのかな。
医者の仕事はなに?
役割分担があり、問診医と注射医です。今回はたまたま注射医に指定されただけなので、日によっては問診医のパターンもあります。どっちがいいかは完全に医者の好みですね。自分は注射するほうが好きです。
痛い?
かなりの人に聞かれました。日本では筋肉注射の文化が少なく、テレビで注射を深く指す映像が多く流れているので、不安がっている人が多い印象でした。「あんなに深く本当に指すの?」「痛くないの?」「血は出ない?」聞かれましたが、あまりに一瞬で終わるので、みなさん拍子抜けしてました。
そして、ほぼ全員の人が「あああ、痛くなかった〜。」とおっしゃっていて安心しました。そして、みんな終わった瞬間みなさん顔の緊張が一気に緩むんですよね。「これで大丈夫」という安堵感でしょうか。すごく嬉しそうな顔をする人が多くて、注射してとても気分がよかったです。
血に関しては、感覚的には95%くらいの人は1滴も出ませんでした。三角筋の中央に打つので、場所的にも出にくいところです。わずかな方に出血がにじむこともありましたが、数秒の圧迫で止まります。
ただ90才を超えたような高齢者は筋肉が少なく、注射を刺した瞬間、骨にあたった人も数人いました。ブロック麻酔とか、骨に当てて麻酔するので骨に当たること自体は問題ではないのですが、本当に筋力の衰えってあるんだなと再認識させられました。
筋注ってあまり経験がなかったのですが、非常にいいですね。
シャツがめくれない問題
インスタでワクチンコーデなるものが話題になって、なんじゃいなと思いましたが、服装はめちゃくちゃ大事です。ほとんどの方が、肩までめくれるスタイルの服を着てきてくれてまいたが、紳士の方はワイシャツ・ポロシャツ率がかなり高く、それだと腕まくりができないんです。
というか、腕まくりはできますが、肩まで出ません。筋注の場合投与部位の関係があるので、肩出しの服装が必須となります。なので、その場合は、その場でシャツを脱いでもらって下着で投与します。この脱ぐ時間がもったいない。高齢者なので、ボタン外しも超ゆっくり。「焦らずにゆっくりでいいですよー。」なんて僕も言ってましたが、本音はサクッと着替えて欲しいです。
今は夏なので、必然的に薄着になりますが、これが秋から冬にかけてだと長袖、分厚目の服になりますので、肩出しコーデは結構難しくなります。ここ、地味ですがかなり重要です。
大問題!無断キャンセル事件
テレビで大手町の大規模接種センターで無断キャンセルが多いというニューシを見ます。本当にそんなことあるのかなって思ってましたが、ぴなくるすが行った会場でも大量のキャンセルが出ていたので、本当なんだなと。
しかも、キャンセル連絡あればいいものを、無断キャンセルの人が多いんです。今回は450人分用意して40人が無断キャンセルだったらしいです。確かに天気悪かったですからね。って、天気の問題かい!!?とツッコみたくなりました。
接種したくてもできない人が大勢いる中、無断キャンセルなんて言うのはすべての人の努力を踏みにじるような行為だし、本当にやめてほしいと思いましたね。。。せめてキャンセル連絡はしてほしい。
廃棄か!?投与か!?キャンセル分、どうするか問題
で、これもワイドショーでよくネタにされる「キャンセル分どうするか問題」です。
テレビで見る世論の流れとしては、「余ったから職員に投与した」→「職員に投与したら、ずるいと言われメディアにフルボッコにされた」→「職員に投与したらフルボッコにされたので、泣く泣く廃棄したらまたフルボッコにされた」→「廃棄せず、どうにかして誰かに打つ(←いまここ)」だと思います。
しかし、「職員に投与したいにも、若い職員は接種券がないから打てない」問題が新たに勃発します。
なので、事務側は大忙し。とりあえず無断キャンセルの方に鬼電。しかしほぼつながらない。つながったとしても、「二時間後なら行けるから、それまで待ってろ」なんて、無茶振りしてくる患者も。いやいや、なんであなた一人のために受付時間終了後2時間も医師・看護師・スタッフを待機させなきゃいかんのよ。
で、連絡つかない場合はもうしょうがないので、とりあえずこちらは黙って待機です。来るかも来ない患者を、ひたすら待ち続けるわけです。
その間も事務職員は患者に鬼電。しかし40人には全然繋がりません。
で1時間もタイムオーバーしてつながらないと、さすがに諦めて、今度は自治体の関連施設に電話して、65歳以上で今日都合がつく方に来てもらい、急遽順番を早めて打ってもらうという対応でした。
いややこれが一番大変でしたね。事務が電話している姿を見るのも悲しいし、何より来ない人を待つこの切ない感じ。
皆さん、無断キャンセルだけは絶対にやめましょう!
ワクチンは溶解してしまったら6時間以内には投与しないと、そもそも廃棄処分になってしまいます。貴重なワクチンです、皆さんはタダかも知れませんが、税金で買ってます。巡り巡っては、自分たちが納税したお金です。
一連の接種会場での思い出としては、医師・看護師・事務スタッフ・自治体がみんな一生懸命、一体になってやっている様子が最も印象に残りました。非常にやりがいがあり、「全員で頑張るんだ!!!」っていう意識が強く感じられ、「患者さんも頑張って打つんだ!!」という意思を感じられて、一致団結感が強く、本当に心健やかに仕事をすることができました。
ということで、体験談でした。実際テレビで見る内容と相違はなく、体験できて非常にいい経験となりました。今後も、ぴなくるすは月2くらいのペースで接種医師を予定しています。少しでも社会貢献できるように。