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無邪気で丁寧なサディスト。

ドキュメンタリー映画「へんしんっ!」を観てきた。
メインキャストのひとり、砂連尾理さんのトークつき回。

観ておけてよかった。素直にそう思える映画だった。


砂連尾さんはいわば、無邪気で丁寧なサディストだ。と、思う。

静かに、その人の輪郭の殻をなぞり、その隙間を見つけて、チャンスを逃さずそっと薄皮に入り込む。
そしてそのはざまに“空間”をつくり、その人の中から、そこに本質が沁みだすのをニヤニヤと見守る。
ギブアンドテイクではなく、「お互いに面白がる」ことで関係を成立させていく。

「へんしんっ!」は、石田監督自身がしょうがいの当事者であることもあり、
この映画をつくっていく過程で観察者から主人公に変わっていく様がとても自然で興味深かった。
いかにも感動的、というドキュメントが苦手な私でも、いつのまにかその世界に入り込み、見守り、そして気づいたら当事者側の気持ちになっていた。

実際、本編にも取り上げられている立教大学での「変身」のパフォーマンスは観ているし、
その後、一年をかけて水戸での「変身」ワークショップに参加し、わたしも変身の当事者ではあるわけなのだけれども、
だからこそ、映画の内側から、そして外淵から、観ることができたと思う。

“変身”とは、まったく違う自分になってしまうのではなく、
もともとその人の中にあった、本人も知らない自分に出逢うことなのだと気づいた。
本来の自分を少し取り戻す行為。

歩けない人が車いすから降りるということを、
目の見えない人の白杖をダンスのコミュニケーション要素として取り入れることを、
そんな乱暴なことを垣根なく、ごく自然に上品に提案する。
いや、提案されたと思う間もなくやってしまうように導く。

そしてその人の中から生まれる動きを、美しく面白がる。
一緒に育てる。
パフォーマンスのための切り売りとして剥ぎ取り「晒す」のではなく、
その人そのものが、自身もびっくりする形で変わっていく。

そんな様子が、とても愛おしかった。

そうしておそらくは、この映画を観た人の中にも、その変化は起こっている。


ドキュメンタリー映画「へんしんっ!」
https://henshin-film.jp/

監督・企画・編集:石田智哉
キャスト:石田智哉、砂連尾理、佐沢(野﨑)静枝、美月めぐみ、鈴木橙輔(大輔)、古賀みき
プロデューサー・録音:藤原里歩 撮影:本田恵、壷井濯、柗下仁美 整音:橋本昌幸
字幕監修:北川光子、木山直子、佐沢(野﨑)静枝
音声ガイド制作:鈴木橙輔(大輔)、美月めぐみ、平塚千穂子 ナレーション:ぺんぺん
協力:バリアフリー演劇結社ばっかりばっかり、立教大学しょうがい学生支援室、立教大学ボランティアセンター、バリアフリー映画上映会実行委員会 ほか
指導教授:篠崎誠 配給:東風

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