見出し画像

Th細胞っていったいなんぞや?デュピクセントとの関係性は?

アトピー性皮膚炎は、慢性的な炎症性皮膚疾患であり、免疫の過剰反応だということを知っている人も多いと思います。その中でもTh細胞(特にTヘルパー2型細胞、またはTh2細胞)が重要な役割を果たしています。

アトピー性皮膚炎の患者さんの体の中では、以下のようなTh細胞関連の免疫反応が見られていると考えられています。

  1. Th2細胞の優位性: アトピー性皮膚炎の患者さんは、Th2細胞が優位になることが多く、これがアレルギー反応や炎症を引き起こす原因となります。Th2細胞は、サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)を産生し、これらのサイトカインがアレルギー反応や炎症を促進します。

  2. サイトカインの影響: Th2細胞から分泌されるサイトカイン(特にIL-4とIL-13)は、IgE抗体の産生を促進し、アレルギー反応を引き起こします。これらのサイトカインはまた、皮膚のバリア機能の低下にも関与しており、アトピー性皮膚炎の患者では皮膚のバリア機能が弱まっていることが一般的です。

  3. 炎症反応: Th2細胞の活性化は、皮膚の炎症反応を引き起こし、赤み、かゆみ、乾燥などのアトピー性皮膚炎の症状を悪化させることがあります。

  4. その他のTh細胞の関与: 最近の研究では、Th2細胞以外にも、Th1細胞やTh17細胞など他のTヘルパー細胞サブタイプもアトピー性皮膚炎の病態に関与していることが示唆されています。

アトピー性皮膚炎の治療においては、これらのTh細胞による免疫反応を調節することが重要です。治療にはステロイド薬、免疫調節薬、生物学的製剤などが使用され、Th細胞の活動を抑制し、炎症を減少させます。さらに、皮膚のバリア機能を強化するスキンケアも重要な役割を果たします。

Th2細胞って?

さて、アトピー性皮膚炎において、Th2細胞による過剰な免疫応答が病態悪化につながると考えられていることはお判りいただけたかと思います。Th2細胞が産生する炎症性サイトカインIL-4、IL-13の働きを抑えることで効果が期待できる治療薬として、デュピクセント®がありますね。

2018年に登場した生物学的製剤デュピクセント(デュピルマブ)
デュピクセントの作用機序

Th2細胞は、もともとTh0細胞から成長したものです。Th0細胞は1度も抗原と出会ったことがない純潔なT細胞です。

細菌やダニなどが体内に侵入すると、樹状細胞やマクロファージが取り込み異物と認識します。樹状細胞やマクロファージは、取り込んだ異物の抗原部分をTh0細胞に提示。

抗原提示を受けたTh0細胞は、共刺激分子を介して抗原提示細胞と手をつなぐように結合し、様々な炎症性サイトカインを産生します。

抗原提示・共刺激・サイトカインの3つの作用で、Th0細胞がTh2細胞に成長していくのです。さらにTh2細胞に成長するには、IL-4というサイトカインが必要であることがわかっています。

そして、Th2細胞自身もIL-4を産生するので、Th2細胞がいったん活性化してしまえばどんどん成長・増殖していきます。

このようにして、Th2細胞が活性化し、IL-4が過剰状態になると、免疫物質IgEばかりが産生され、アトピー性皮膚炎などのⅠ型アレルギーが引き起こされるのです。

Th2細胞が増えることで悪さをする

Th0、Th2ときたらTh1細胞は?

Th0、Th2細胞の紹介をしましたが、ではTh1細胞は?と気になるところですよね。

Th2細胞は主に細菌に対する免疫に関与しますが、Th1細胞は主に細胞内に潜むウイルスに対する免疫に関与します。スタートはTh2細胞と同じで、まだ抗原提示を受けたことのないTh0細胞です。

細胞は自分の体で使うタンパク質などを作る工場を持っていますが、ウイルスに感染すると、ウイルスがその工場を乗っ取ってしまいます。

普段は自分が作っているタンパク質を細胞表面に出して、「自分はこんなものを作っています。だから攻撃しないでください」と免疫細胞に教えています。

しかし工場がウイルスに乗っ取られてしまうと、ウイルス増殖の場になってしまうのです。

そうすると、細胞はウイルスの一部を細胞表面に出して、「自分の工場は乗っ取られてこんなウイルスを作っています。だから破壊してください。」と免疫細胞に教えて、自分ごとウイルスを破壊してもらいます。

すると、ウイルスを感知した樹状細胞やマクロファージはIFNーγやIL-12などを産生し、Th0細胞にウイルス抗原を提示。

抗原提示を受けたTh0細胞はIFN-γなどによってTh1細胞に成長し、IFN-γやIL-2を産生します。自身の産生したIFN-γにより、Th0細胞はどんどんTh1細胞に成長していきます。

そして、Th1細胞が過剰に強くなると、ウイルスやがん細胞の排除に使う力を自らの組織や細胞に対して使ってしまい、自己免疫疾患となってしまうのです。

Th1、Th2は仲が悪い

今まで説明したように、Th1、Th2細胞が増殖を始めると、Th1細胞は自身の産生するIFN-γで、Th2細胞は自身の産生するIL-4でさらに増殖していきます。
一方で、Th1細胞が産生するIFN-γはTh2細胞への成長を抑制し、Th2細胞が産生するIL-4はTh1細胞への成長を抑制します。

どちらが多くても悪い影響を与える。

正常な免疫では、Th1細胞とTh2細胞はお互いに拮抗しあいバランスを保っていますが、偏りが極端になると病的な炎症がおこります。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患では、このバランスが壊れてTh2細胞ばかりに傾いている状態になっているとわかっています。

アトピーや花粉症が治りにくいのは、Th2細胞に傾きすぎてしまっていることでTh2細胞による遅延型反応が深く関わっているためです。

デュピクセント®などは、Th2系サイトカインが働かなくなるようにして、Th2細胞が自分自身でどんどん増殖していくサイクルを止めようとするものなんですね。

\ Twitterでも発信中! /

ヒフメドちゃんは専門医と協力して、正確で最新の皮膚科情報と心強いサポートを提供。あなたのアトピーとの向き合い方を手助けします。

一緒にアトピーと炎症からの卒業、「卒炎」を目指していきましょう。

✨ヒフメドちゃんから得られること✨

・最新の皮膚科情報
・アトピーに関するヒント
・Q&Aコンテンツ

など。

よかったらヒフメドちゃんのフォローもお願いします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?