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ドラムのモニター環境構築 その3
前回インピーダンスについて書くと宣ってから悠久の時が経過したが、そろそろ記事をしたためよう。
インピーダンス。聞き慣れない人が多いと推察する。
言葉だけならイヤホンやスピーカーの仕様書で見たことがあるという人もいるだろう。理系だったら電磁気学で触れた人もいると思う。
インピーダンスを英綴りに直すとimpedanceで、これは動詞のimpedeの名詞形である。impedeは妨げるといった意味で、名詞だから妨げるもの、転じて「抵抗」である。
抵抗といえば中学で習うのはレジスタンス:resistanceである。抵抗Rとか書くときのRがレジスタンスだ。どちらも抵抗だ。だが全く同じものではない。
ではレジスタンスとインピーダンスは何が違うのか。はじめに結論を言えば、これは直流と交流の違いからくる。直流の抵抗はレジスタンス、交流の抵抗はインピーダンスである(厳密な定義とは齟齬があるが導入なのでこのように捉えておいてほしい。)
交流電源ってなに?という人のために簡単に説明すると、交流とは電流の流れる方向が周期的に変わる電流のことである。
ACアダプターという言葉を聞いたことがあると思う。これはAlternating Current(:交流)の頭文字を取ってACだ。これを機器で使えるDC(:Direct Current)に変換するための装置がACアダプターである。
DC、直流は多くの人になじみが深いだろう。乾電池で電気を流すとき、電池を挿す向きは決まっている。これは電流の流れる方向が常に一定な直流電源だからである。
一方で交流電源は家のコンセントだ。多くの家電機器はコンセントから交流電源を受け取って、それを内部で直流電源に変換して利用している。先ほどのACアダプターも機器の外に出ているだけでやっていることは同じである。
じゃあ初めから交流じゃなくて直流を流さんかい、となるがそう一筋縄にはいかないのが世の常。理由があるから交流が使われているのである。
その最大の理由は、交流電源は変圧(:電圧を変えること)が容易であることだ。このことはあとの話でも必要になる知識なので押さえておいてほしい。交流電源は変圧が容易。
逆に、デメリットとしてコイル・コンデンサ成分の影響を受けるというのがある。ここでインピーダンスが絡んでくる。
そのために話を抵抗に戻そう。
直流回路でのオームの法則E=IRは、中学校でも習う。回路要素の抵抗は文字通り回路に流れる電流の妨げとなる。電圧が一定なら電流は抵抗値の変動に依る。これがオームの法則だ。
抵抗以外の回路要素としては、コンデンサーとコイルがある。
コンデンサーがあると初期の過渡期を経たのち回路に電流は流れなくなる。もしかしたら理系でないとコンデンサーがなんたるかを知らないかも知れないが、そういうものがあるとさえ認識すればよい(中学でやるかどうかは忘れた。書くと地味に長い)。
コイルは単に電線を巻いただけのものなので電流値に影響は及ぼさず、電流が流れる方向に磁場を発生させる(右ねじの法則)。電磁石の話だとかはこれも中学校で習うと思うのでイメージしやすいのではないだろうか。ただしこれは、直流の定常電流が流れている場合に限る。
では、なぜ定常でないとダメなのか。それは電磁誘導があるからである。電流が変動するともちろんそれに伴って生じる磁束も変動する。磁束の変動によりコイルには電流の変動を妨げるような誘導起電力が生じる。これを自己誘導という。
交流回路は常に電流値が正弦波で振動しているので、常に電流変化を妨げるような誘導起電力が生じることになる。すると、直流回路では現れなかった抵抗性をコイルに見ることが出来る。逆にコンデンサーでは電流の変動に伴って極板に溜まっている電荷が変化し続けるため変位電流を生じるようになる。変位電流は中学校で習うような実際に電子が移動して電流が生じる伝導電流とは異なるがとにかく直流では電流が流れなかったのが、交流だと見かけ上だけでも流れるようになる。
これらコイルとコンデンサーが持つ、交流の場合にのみ発現する抵抗様の性質をリアクタンスと呼び、本来の抵抗(:レジスタンス)と区別している。
というのも本来の抵抗は電気エネルギーを熱エネルギーとして消費するがリアクタンスはそれがないからである。しかし次元は揃っており両者とも単位はΩである。ならばこれらをひっくるめてあらたにインピーダンスと呼びましょうということになった。厳密に言うとインピーダンスは複素数で、実部がレジスタンスで虚部がリアクタンスを表しているが、単に実部のみをインピーダンスということが多い。
これが交流はコイル・コンデンサ成分の影響を受けると言った意味である(厳密にはもう少し色々ある。)
さて、インピーダンスの簡単な定義がわかった。万々歳。これにて一件落着だ。
いや待て。インピーダンスがなにかは分かった。だが、それが実際にどういう意味を持つのか?インピーダンスが変わると何が変わるのか?
それを分からないではなんの意味もない。
インピーダンスに限らずそういったことが一番大事である。
それが物事の本質を捉えるということだ。
知識を得るのは良いことだが、それをどう活用するかを合わせて学んでいかなければ、むしろ頭でっかちの知識ばかりが邪魔をして、物事が円滑に進まなくなる危険すらある。
練習も勉強も仕事も同じだ。練習するのは大いに結構。素晴らしいことである。だが、自分がいま何が出来なくて、その原因はなんなのか、それを改善するにはどのような練習メニューが必要なのか、これを意識出来ていなければうまくなるはずがない。もちろんこれが無意識に出来てしまうような人もいるし、それを考えなくても驚異的に愚直に同じメニューをこなしてうまくなる人もいる。だが、一番楽に、楽しく、早く上達するには分析が必要だ。
練習するときなかなか上達しない人、練習時間だけは立派な人。これはいま言ったような「物事の本質を捉える」習慣がないことが多くの場合当てはまるだろう。
分析とトライアンドエラー。昨今はやりのPDCAという言葉が多くの人になじみ深いと思うが、まさしくこれなのだ。そのサイクルを繰り返して人は要領がよくなる。フィードバックを繰り返し、自然と適切なフィードフォワードが取れるようになる。
知識を得る、勉強するというのは、この分析の部分を先人から得ることだ。分析が不十分ならトライも失敗する。だから知識は不足なく十二分に学んでおくことが肝要だ。
では、インピーダンスの概要が分かったところで音響の話をしよう。
と思ったが長くなったのでここであえて次回に回す。これは近いうちに投稿しよう。
散々知識は十二分にとか言っておきながら中途半端で止めるのはどうかと自分でも思ったが、聞きなじみのない人には多少難しい話題と思われるので、いったんここまで咀嚼してもらうことにしよう。
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