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昨日も、明日も、『福丸小糸』。繋いだ糸の先にあるもの。〈福丸小糸LP編&P-SSR【てのひらの答え】所感〉

前書き


私は好物を後に取っておくタイプだ。
楽しみは最後の最後まで引っ張り、”焦らし”を以て喜びを増幅させたがる。

だがその習性は時として仇となる。今回のケースで言えば、昨年末にシャニマスのガシャで引いた福丸小糸のP-SSR【てのひらの答え】がそれに該当する。年が明けて落ち着いてからコミュに目を通したのだが、こんなに美味な料理ならもう少し早くに口にするべきだった、と若干の後悔を覚えている。

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福丸小糸のコミュの魅力は、やはり王道を往く成長物語であること、そしてその成長過程の試行錯誤が初期のWING編から今もなお連綿と続く道の上で行われていることだと思う。今回のプロデュースカードでは特に後者の側面を再度強く体感させられた。
節目・節目で大なり小なりイベントが起こる度に何かしらの収穫を得て、彼女にとっての未開の原野に一歩ずつ足跡を残しながら前進してきたのが、今までの小糸の全てである。

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時系列とキャラクターの成長を明確にリンクさせている、シャニマスのコンテンツ性。キャラへの感情移入がしやすい一方で、新規参入者のハードルが高くなっており功罪相半ばしている事は、この際脇に置いておこう。
小糸のコミュはシャニマスの中でも過去コミュからの引用が特に多く、体験の積み重ねによる変化を良い意味で分かりやすく観測できる。本文もその功績の方に主眼を置きつつ筆を進める。

本題のP-SSR【てのひらの答え】に触れる前に、実装順ではそれよりも前でありまだ私のnoteの記事上で言及出来ていない小糸のLanding Point編について、まず触れておきたい。



※以下、福丸小糸のコミュ及び、文脈上の理由で他数名のLP編のネタバレあり。








福丸小糸コミュにおけるLP編の立ち位置


体系的に振り返るために、最初に私の脳内における既存の小糸コミュの流れをザックリ開示する(具体的な感想に関しては過去記事を参照のこと)。


幼馴染というクローズドな関係に依存して流されるままアイドル活動を始めた彼女が、己と同様にどこか居心地の悪い思いをしている人達の居場所を作ることをアイドルの目標として掲げる(WING)

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アイドル活動を通じて自らの世界が広がっている事を実感する(P-SSR①【ポシェットの中には】)

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応援してくれるファンの人達によって、逆に「アイドルとしての小糸」という居場所を作ってもらっていることを認識する(感謝祭)

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周囲に対する一方的な劣等感が行動の根源にあったが、どんな人間にも多かれ少なかれ居た堪れない瞬間があると気付き、ならば世界中の人に笑顔を与えられるアイドルになる、と宣言する(P-SSR②【おみくじ結びますか】)

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今まではアイドルとしての最初の課題であった「何をしたいか」を探すのに無我夢中で「そのために何をすべきか」が不明瞭だったが、まずは目標に近付くために眼前の大会を優勝することを己の意思で決め、能動的な変化の狼煙を上げる(GRAD)

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結論から言えば小糸のLanding Point編は、その直訳通り、彼女なりの具体的な「着陸点」を示すものだった。



小糸は自分の母が自分のアイドル活動を快く思っていないと常々感じていた。最初期のWING編で親には内緒で283プロダクションに所属したことに端を発し、最新のLP編でも自身のライブに家族を招待することを明確に渋っている。

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その一方で実は陰では母親が彼女の事を、幼少期からアイドルを始めた今に至るまでずっと強く気にかけてくれていた事が発覚する。家族に成長した姿を見てもらうためにライブへの意気込みを新たにする小糸。

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と、ここで一筋縄ではいかないのがLP編のオチに良い余韻を生んでいる。ライブ終演後のコミュにて小糸の妹曰く、母親は不安そうに小糸をずっと見守っているだけだったらしい。それは間違いなく我が子を想い過ぎるくらいの親心からくるものだろう。
しかし結果だけ見れば、小糸は身近な人間に対してすら、彼女の元々の目標であった「笑顔を届ける」ことを完全には果たせなかった。

そうした状況を受けて小糸はこう残す。

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大望を見据え続けるよりも前に、まずはアイドルとしてしっかり足下から固めていくという確固たる決意。通ってきた道程は違えど、この結論は智代子のLPにも通ずるものがある気がする。

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GRAD編では目の前に迫る大会の優勝に向けて意欲的に取り組んだ小糸だが、それは良くも悪くも勢い任せで飛び出したものだった、と今振り返れば感じる。
WING編から空を掻くような助走を始め、GRAD編で遠くの灯台に向けて夢中で一歩を踏み切った彼女が、LP編に至ってやっとその振り上げた足を置くための明確な着地点を見つけたということだろう。文字通り「地に足が着いた」わけだ。

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ここからは余談だが、私にとっては小糸の朝コミュ⑭の存在が長らく不可解だった。

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小糸が小さい頃の写真が載ったアルバムを見せてくるのに対して「大切に育てられたんだな」と返答するのがパーフェクトコミュニケーションなのだが、これまでのWING編を筆頭にP=SSR【ポシェットの中には】などを窺う限りだと、親の教育に対して小糸がそこまで肯定的に捉えているようには見受けられなかったからだ。
この疑問は、LP編で氷解することになる。


【ポシェットの中には】では幼少時にあまり公園に連れて行ってもらえなかったと思しきエピソードがあった。実装当時は親の躾が厳しく幼少期から勉強漬けであったからだと勝手に邪推していたし、小糸本人もそう勘違いしていた節があったが、実は遊具から落下した小糸が公園を嫌がるようになったため(勿論親も酷く心配したらしい)であった事実が発覚した。

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またこれも予測でしかないが、先に述べたように小糸の母親はやや心配性な傾向があるようなので、かつて小糸が勉強漬けだったのも、ともすると自己肯定感が低かった小糸に自信を付けさせるためだったのかもしれない。

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何はともあれ、小糸実装から2年半の時を経てMorning⑭の伏線は回収されたことになる。LP編のような展開を行うために初めから種を撒いていたのだとは思うが、改めて福丸小糸ヒストリーがしっかりと地続きになっていることを嚙み締められて良い。


昨今では「シャニマスは相互理解の難しさと美しさを説いている」という考察が巷で大きく同意を得ているように見える。小糸のコミュで描かれた「子を想い過ぎる母」と「母に認めてもらいたかっただけの子」の些細で大きなすれ違いも、その主張がより説得力を持つ一端を担っていると言えよう、と勝手ながらに乗じさせてもらう。

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【てのひらの答え】が見せたもの

さて、2021年のシャニマスのガシャは福丸小糸に始まり、福丸小糸で終わった。【おみくじ結びますか】が年始を飾るのに相応しい濃密なカードであったのは記憶にまだ新しいが、【てのひらの答え】もまた一年を締めくくるカードとして素晴らしい内容であった。

小糸がクイズ番組の芸能人枠としての出場を狙うべく得意の勉学に励み、アイドルとしては番組に爪痕を残せなかったものの、ペーパー試験に合格して出演自体を果たしたことで己が積み上げたものの尊さを噛み締める、という流れがコミュのザックリとしたあらまし。

恒常SSRながら今までの小糸の物語の集大成とも呼ぶべき内容になっていると個人的に感じられたので、いくつかの視点に分解して考えを書き連ねていきたい。


① 福丸小糸の劣等感の払拭

1つ目のコミュ『どろぼうと小テスト』の冒頭の描写。小糸以外のノクチル三人はその容姿端麗さからか校内で高い認知度を誇る一方で、その三人とユニット活動を共にしている筈の小糸はアイドルとしてほぼ認識されていないらしい(CDのジャケ絵などを見る限りだと、小糸も中々の等身だと思うが………)。

おみくじ小糸の序盤までの彼女のままだったら劣等感に苛まれ、何かから逃げるように何のためでもない痛ましい努力を続けていたかもしれない。だが様々な経験を血肉としてきた小糸はそれほど凹み過ぎることはなく、シャニPの丁寧な誘導もあって「自分がこれからどうすべきか(どうしたいか)」を前向きに模索していくことになる。

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前述した通り最終的にはペーパーテストを通過してクイズ番組に出演することになるのだが、このような仕事の獲得の方法は、良い悪いではなしにノクチルの中では小糸が最も向いている芸当だろう。そういう部分も彼女の自己肯定感を回復する一助になっているように思う。
自分の短所ではなく長所に目を向けるようになった小糸の思考の転換にこそ目に見えた成長が垣間見えるし、彼女本人の意思と強みをリスペクトしたプロデュース方針を打ち出すシャニPも素晴らしい。

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② 無駄なことなんて無かった

WING編の一場面。

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そして今回のTrueコミュ『教科書を閉じたら』での一幕。

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「無駄なことなんて何一つなかった、そう思いたい」から「そう思う」といった語形の変化。本記事の前書きにもあるように、これこそ小糸の話が今もWINGから続く一本道の延長線上にあることの証左であり、小糸が得てきた経験はこのワンフレーズの違いに集約されている。
実際に小糸がかつてどこかで空しく思っていた勉強の日々の成果はこうしてアイドルの土台の上で目に見えて浮かび上がっているし、彼女の言葉は正しく本心から出たものだろう。

昨日までの福丸小糸も、明日からの福丸小糸も、他の誰でもない〈福丸小糸〉でしかない。

これまで繋いできた糸は全て今日の彼女に繋がっており、明日以降も変わらずに紡がれていく。そうした気付きによって彼女は「等身大の自分」を認めることが出来た。




③ コミュの構造

① や②とやや被る話にもなるが、今回の小糸は精神的な成長が著しく顕れている。それは話の進行からも読み取れる。

物語上の起伏を作るなら「落として上げる」、若しくは「上げて落とす」が定石であり、これまでの小糸のコミュはどちらかのパターンが多かった。それらはかつての小糸の精神的不安定さと少なからず結びついていたのではなかろうか。

しかしながら、【てのひら小糸】は一味違い、安定した展開が続く。①や②で述べた要因からコミュ全体を通して非常に俯瞰的かつポジティブだし、ペーパーテストの会場やクイズ番組のオンエア視聴後に杞憂が目立ったシャニPと裏腹に、寧ろ小糸本人はドンと腹が据わっている。
LP編はどちらかと言えば「親の心、子知らず」に近い話だったが、今回は「子の心、親(シャニP)知らず」と評しても良い。

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この先も彼女が一喜一憂するシーンは幾度となく訪れるかもしれないが、少なくとも現時点の福丸小糸は福丸小糸史上かつてないほど最強である、と断じても決して過言ではないだろう。

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【てのひらの答え】ではLP編でやっと地を踏みしめた小糸の、その進化した姿が描かれ、改めて言うが恒常カードながら既存の小糸の物語を総決算する立役者となっていた。
私的には今回で様々なものが一区切りついた感触がある。これから先の彼女は一体どんな人生を編んでいくのか。要注目です。




雑記

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今回のP-SSR可愛い。
無難な感じのシンプルな私服衣装欲しかったんで、嬉しい。
持っていない方は次の恒常セレチケで是非。


後は公式4コマ289話の編みおさげ丸小糸も実装されたら最高。



小糸のLP編では、ノクチルのワンマンライブの演出として小さい頃の写真が使われることが決定し、それを集めるために幼少期のアルバムを開くことが、小糸が母とのすれ違いを解消する一つのキッカケになった。
雛菜のLP編を読むと、何とこの演出を提案したのが雛菜であることが判明する。

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名コンビ。



おわり


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