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【読書ログ】『地面師たち アノニマス』
画像引用:『地面師たちシリーズ』公式HP
はじめに
この記事は,私が小説『地面師たち アノニマス』を読んだ時の読書ログです.
書籍の概要,読んだ感想などをまとめています.
本記事には,書籍『地面師たち アノニマス』,書籍・ドラマ『地面師たち』のネタバレが含まれます.
作品を閲覧・視聴してから本記事を読むことをお勧めします.
本書について
タイトル:地面師たち アノニマス
著者:新庄 耕
発行:2024年11月25日 第1刷
発行所:株式会社 集英社
本書を読んだきっかけ
『イカゲーム2』を見たくて契約した Netflix で,たまたまドラマ『地面師たち』を見る機会がありました.
ドラマは非常に面白く,数時間もある全7話を一気見してしまいました.
そんな中書店で,登場人物の前日譚を綴った本書を見つけ,『地面師たち』の世界をもっと知りたいと思い,購入し読んでみることにしました.
本書の概要
本書では,ドラマ・小説『地面師たち』で登場する登場人物たちの,前日譚をまとめた小説です.
後藤や竹下といった地面師をはじめ,青柳(石洋ハウス),川井(尼僧)などの主要な登場人物の過去も描かれています.
本書は各登場人物の背景を描いた短編集です.
描かれている物語のタイトルと対象の登場人物は以下の通りです.
街の光:辰(刑事)
ランチビール:後藤(法律屋)
剃髪:川井菜摘(尼僧)
ユースフル・デイズ:長井(ニンベン氏)
戦場:青柳(石洋ハウス)
ルイビトン:竹下(図面師)
天賦の仮面:麗子(手配師)
巻末には,ドラマで後藤を演じた「ピエール瀧」と著者「新庄耕」の対談『小説と映像、溶け合う境界』が掲載されています.
本書の感想
本章では,本書『地面師たち アノニマス』を読んだ感想を述べます.
ドラマ『地面師たち』の登場人物が地面師になったワケ
本作品では,ドラマ『地面師たち』に登場する人物の過去が描かれています.そのため,本書を読むことで,ドラマの登場人物が,なぜそのような性格で,なぜその職業(地面師など)になり,どのような過去を送ってきたかがわかります.本書を読んでからもう一度ドラマを見ることで,より作品や登場人物の解像度を上げることができました.
直接語らない情景描写
これは物語というよりかは文章の書き方に関する感想なのですが,情景や情報を直接説明することなく読者に理解させる,といった書き方に非常に惹かれました.
本書は複数の小作品の集まりなのですが,作品間の時系列のつながりが非常にうまく表現されています.別作品で同じ舞台が登場するなど,作品がさりげなく繋がっており,非常に時系列を理解しやすくなっております.
また,台詞やつけているアクセサリーなどの描写があるだけで,「誰が」とは直接書かれていないのにも関わらず,誰がどのような口調で話しているのかが鮮明に想像できる文章の作りになっていました.
私は小説は書きませんが,本記事のようにブログを書いたり研究者として論文を書いたりすることがあるので,この文章構成の方法は見習いたいと思いました.
ハリソン山中の過去
個人的にもっと知りたいと思ったのは,ドラマ『地面師たち』の主要人物「ハリソン山中」の過去です.
ハリソン山中は本書でも度々登場する主要人物で,特殊な性癖を持っている等,作中最も「濃い」人物であると言えます.
そのため,そんな彼がなぜ地面師になったのか,なぜそのような性癖を持つようになったのかが非常に気になります.
ドラマ冒頭でのムース狩りの一件も,きっかけのひとつではあると思いますが,もっと色々なエピソードが気になりました.
メタ読みをすると,あえて謎のまま作品を進めた方が,ミステリアスで良いという考えもできて,描写されないのは理解できますが,もし次回作以降でその描写があれば,ぜひ読んで考察してみたいです.
巻末対談からわかる制作の裏側
本書末尾にある巻末対談では,著者「新庄 耕」と,ドラマで後藤役を演じた「ピエール瀧」の対談が掲載されています.
本書の内容や,ドラマの撮影について話しており,どのようなモチベーションで作品が描かれているのかを知ることができました.
作品のディティール,作り込みについても話されており,この対談をみた上で再度ドラマを見たくなりました.
まとめ
本書はドラマを見た人には非常におすすめの1冊です.ドラマの内容やその背景について,解像度をより一層広げることができます.
本書を読んで,ドラマの原作やその続編にも非常に興味を持ったので,原作や続編,著者の別作品も読んでみようと思います.
実際に感想文を書いてみて,文章で魅力を伝えることの難しさをひしひしと感じました.もっと伝えたい魅力はあるのですが,文章に起こすことが非常に難しく,この記事を読んでくださっている方には,その魅力の1%も伝えられていないような気がします.今後も文章を書き続け,魅力を伝えられるような文章を書けるよう努力します.