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26. アヤワスカ
「シャーマンに会いにアマゾンへ行く」というと、とてもスペシャルなルートを辿らないと行けないような響きがあるけれども、あの頃の時点で既にある程度は観光化されており、宿主のレズリーにまたアレンジしてもらって出かけた。
クスコから飛行機で飛び、目的地イキトスに到着する頃、眼下に平らにどこまでも広がるジャングルにびっくりして思わず目を奪われた。『そうか、ジャングルだから平坦なのか』当たり前の事なのだけど、この時、目にするまで想像もしたことがなかったので、妙に納得がいった。’地球の肺’と言われるアマゾンは広大だった。
到着するとツアーのガイドが待っていた。3~4日ほどのアマゾン川を下るジャングルツアーみたいのがあって数人のグループで赴いた。ツアー最終日に私だけが別行動となり、グループとはそこで別れ、シャーマンとの’アヤワスカセッション’が行われた。
アヤワスカは、’カーピ’という木の蔓の部分を砕いて、他のDMTを含む植物を入れて、3日間ほど煮込んで作るお茶で、飲むと、大概3度ほど嘔吐し、そこから7~8時間ほど強烈な幻覚を見る。ペルーでは国家文化遺産となっていて、シャーマンや宗教儀式によるデトックス、精神の治療に使われる。昨今では、世界最大のオンライン自己啓発セミナー、マインド‧バレーのCEOなどが、その恩恵を語るほどポピュラーになった。
実は、日本やサンフランシスコで、内容はアヤワスカなのだけれども、サントダイミーと言われるキリスト教儀式に何度か参加したことがあるが、始終ポルトガル語の歌を歌い続けなければならず、全くアヤワスカ的な体験は出来なかった。一度、そのセッションが終わってから、友人宅で好みの音楽を聞いた途端その体験が少し始まり入り口を覗いたので、自分好みの環境さえ整えばどうなるのかはなんとなく想像出来た。15分だけの短いがもっと強烈な意識変容、もはや’死の体験’をすると言っていいDMTの経験はあったからだ。
本場アマゾンなら、きちんと体験できるだろうと思ったのだが、今度はシャーマンの歌う歌が、私的にはどうしても耐えられなくて、ここでもアヤワスカ体験は出来ずに終わった。その後2010年に、サイケデリックメディスンの良質なドキュメンタリー映画’Contemplations’〜熟考を最近リリースしたプロデューサーのジュリアン・パーマーと共に、オーストラリアのヒッピー系の人達が多く住んでいる’マロンビンビン’からさらにジャングルの奥地を行った’ウィルソンクリーク’というところで、そこに植えられたカーピを煮出すところから始め、自分が選曲をして10度目にしてやっと体験することが出来た。ここイビサでも時々有名シャーマンが来たりしてセッションは行われているが、私はあれっきり摂取はしていない。昔の修行僧のやり方で、メディスンなどを摂取するでなく自分の脳内のDMTを自分で放出する’ダークルームリトリート’というのがあるのだが、そちらが自分には合っていると思う。
こういう体験は、自分に準備が出来たところでメディスンの方から、シンクロニシティとしてインビテーションがやってくる。今思えば、自分で無理やりセットアップするものではなかったと思うし、あの頃はまだまだエゴが強く、本来の自分自身に直面するのが怖かったのだと思う。正直、デイビッドが協力的な夫で親になる感じはしなかったし、何処かで『今が女として一番幸せな時』として、感じている自分がいたし、帰ったら、ハードな現実が待っているような気がした。アマゾンのジャングルの中、色々な鳥や動物達の鳴き声が響く中、胸とお腹に手を当てて私は、”子を授かった女”としての妊婦の幸せを味わえだけるだけ味わっていた。
そして、自分のそういう思いが、現実を本当に、そういうものにしてしまった。というより、今思えばあの時深いところで、私は自分がどういう決断をするか答えを知っていた。そしてそれを呼び寄せた。人は往々にして事実ではなく、見たい現実を見るものだ。