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宇宙戦艦ヤマト50周年セレクション2は「雪!真田!!ドメル!!!」

上映期間が各セレクション1週間しかないので、時間が空いた隙間で見てきた。庵野秀明セレクション2は16話、18話、22話だが、16、18話は殆ど忘れていた。

ビーメラ星という名前は覚えていたものの、2199リメイク版でビーメラ星が登場したときに「こんなスッキリした話だったかなぁ、、、」「もっと泥臭い話だった気がするなあ」と思っていたが、ラストで雪が叫ぶ「私達だって野菜泥棒じゃない!」という、地球人とガミラス人を相対化させるセリフに、手塚治虫感というか富野喜幸(もちろん当時はこの名前を知らなかったが)感というか、その当時はちょっとした「ん?」という違和感を感じたような気がする。

18話も殆ど忘れていたが、シームレス機を即座に開発したり、真田の手足が爆弾になっていて、それを外して生物コンピューターを爆破するというエピソードはうっすらと覚えていた。今回改めてみると、なんとしても「自分が過去に引き起こした悲劇をそのままで終わらせてなるものか!」と言うような、真田の過去に対する執念に恐れ入る。この回は文句なしの真田回だったし、科学者として戦う意志を持つことがこんなにもすごい結果を導くことができると、子供心に教えられた気がする。これは松本零士感が強い回だと感じる。

この2話は絵コンテを安彦良和氏が描いていたのも今回の発見!

そして22話!七色星団の死闘!!オープニングなし!!!
この濃ゆい戦いを1話でまとめて、戦いのあとの戦死者を弔う宇宙葬の場面まで描ききったとは!現場は相当な気合を入れて作画したに違いない!!!(Wikipediaの宇宙戦艦ヤマトの項目には、七色星団の戦いは、「タイガープロ(作画プロダクション)をつぶしかねないほどの日程(9人の原画マンで50日)と描きこみが行われた」との記載がある)。そのくらいこの22話の印象は強烈で、しばらく見ていなかった本放送をこの話からは毎回釘付けになって見た記憶がある。

宇宙葬のシーンでは「真っ赤なスカーフ」が流れ、エンディングはオープニング(アカペラスタート版!)をそのまま流すという、心情に寄り添う演出(今ではオープニングなしやエンディングでオープニング流すのも定番の手法になったかもしれないが、当時はまさしく度肝を抜かれた)は、50年後に見ても涙がこぼれ落ちた。

16話の雪のセリフで「地球人とガミラス人の相対化」と書いたが、ドメルのキャラクターはまさしくそれを体現してみせた。絶体絶命の危機から逆転して勝利を引き寄せた沖田に敬意を評し、それでも、互いの正義のために戦い通す武人の堅持を崩さず、そのためには自爆も辞さないという、侍の中の侍、異星人の武士道と言えるものを描いてみせた。悪役=卑怯者とか、ずるい手を使うとか、そんな子供向けのTV漫画のありふれた表現をぶっちぎってみせたのだ。

こういった好敵手はその後の松本零士の作品に何度も繰り返し登場するわけだが、世代的に敗戦を経験している西崎プロデューサーたちの世代にはこういう戦いをしたかった、してほしかったという願望があったのかもしれないとも思う。

今回見て改めて、空母3隻に戦闘機、急降下爆撃機、雷撃機を配置したのはミッドウェー海戦のオマージュというかイメージが被るし、ヤマトがドメルの作戦に見事にはまってやられまくるのは、戦艦大和の最期にも被って見える。3次元の宇宙空間では急降下爆撃も雷撃も同じといえば同じなのだが、左右から雷撃を食らうヤマトは戦艦大和の最期のイメージそのものだった。この戦い、ヤマト側には何も良いところがなく、はっきり言えば、ドリルミサイルを逆転させることができなければ、しかも逆転できてもそれが接近してきた空母艦隊に突入してドメル艦以外を全滅させていなければ、どう見てもヤマトの完敗だったし、沖田の采配が命運を分けたということもなかった。ひとえに、ヤマトの装甲が敵の猛攻撃に耐えただけ、運が良かったとしか言えないのである。

ドメルに失策があるとしたら、戦艦や駆逐艦を連れて居なかったことくらいか。戦闘空母1隻に大規模砲撃を担当させたわけだが、空母以外の戦艦クラスがあと何隻もあったらヤマトは完敗していたかもしれない。バラン星での失策でドメルが追い詰められた描写が本放送であったのかよく覚えていないが、2199ではバラン星のワープゲートをヤマトに破壊されてガミラス艦体のほとんどがバラン星周辺に取り残され、老朽空母しか残っていないドメル艦隊が描かれていたのは記憶に残っている。2199の七色星団決戦もよく考えられていて、ドメル艦隊が沖田に嵌められたとドメルに言わしめたのは満足だった。

それでも、これだけの戦いを1話で納め、宇宙葬まで描ききったのは脚本、絵コンテの大勝利!!!22話のエンディングがオープニングの流用なので絵コンテは誰かわからなかったが、脚本は藤川桂介氏。ガミラス星を破滅させたあとに「戦うのではなく愛し合うべきだった!」と古代に言わせたのは当時は唐突感があったが、振り返ってみれば周到に相対化は行われていたのだ。当時の中坊にその後の生涯続くアニメへのあこがれを刻み込むことになった回だった。


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