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話題のNHKドキュメンタリーを見た!

AmazonのPrime Videoに話題のNHKドキュメント「シン・仮面ライダー」が登場したので、シン・エヴァのときと同様、990円課金して見てみた!(以下はドキュメンタリーの内容に触れるので、ネタバレ見たくない方はここまでにしてくださいね!)

見始めて半分ほどで気がついたのは、殺陣が段取りに見えるのを嫌う意見は、最初の森の中でのアクションシーンを編集してみた時点で、庵野監督だけではなく准監督・副監督たちも同意見だったことだ。

森の中のアクションシーンが一見順調に行ったと見えて(実際現場では庵野監督もOKを出していたわけで)、編集してみて判明するのは、フィルム時代の監督にはなかったことなのだろうか?フィルム時代とは映画作りの方法が何もかも違うわけなので参考にはならないだろうが、これ以降、このドキュメンタリーでOKになった映像が、ことごとく映画本編では使われていないのにまず驚く。

ただ、森の中で行われていたアクションシーンが、映画になったシーンとは質が違うものであるのは素人目にもわかった。池松壮亮の捻挫が治っていないため、スーツアクターによる1号ライダーの演技は、池松壮亮が仮面を被って演じている1号ライダーとは、佇まいも動きも何かが違うと感じたのだ。何が違うのか?強いて言えば「必死さ」が池松ライダーからはほとばしっていたように思う。

池松壮亮の足の怪我が治り、最初に臨んだアクションシーンはハチオーグのアジト屋上のセットで、マスクを外して殺陣を練習中の池松壮亮演じる1号ライダーは、たしかに映画で見た彼の演技と一致する何かがあった。後に本人が語っていたように、人間にしか出せない「肉体感」や「生っぽさ」を確かに発していたのだろう。

それにしてもアクション監督はあの過酷な要求を受けつつ、役者の安全を絶対に守らなくてはならないわけで、その中で悪戦苦闘する姿を克明に記録されているのは見ごたえがある。見ているだけで胃が痛くなるのも理解できるが、クリエイティブの現場の緊迫感を知る上で一見の価値が有ると思う。

アクション監督との間を取り持つ准監督・副監督も大変だったろう、、、庵野監督以外のスタッフが集まった緊急ミーティングでも、例え却下されるのが前提であっても、結局はアクション監督にプランを出してもらうしかないと説得する庵野組首脳陣。納得いかない様子のアクション監督の苦悩は続く。

小河内ダムでの撮影シーンで、庵野監督の意図を推察して、自らアクション監督に提案していく池松壮亮の役者根性の凄さ!本番の長回し撮影が終わったら、疲労で立ち上がれない池松壮亮とクモオーグ役のスーツアクター。現場の安全を管理するアクション監督は気が気ではなかっただろう。我々が「カッコよい!」などとすんなり見てしまう映像の影には、こんなにも多くのスタッフと役者たちの苦闘があったのだ。

しかし、仮面を被っても殺気を体現してみせる池松壮亮の姿(立っているだけでも佇まいが違う!)を見て、役者本人がやってみせるアクションの説得力に納得できた。しかしそれは怪我のリスクも高まることになる。


そしてドキュメンタリー上のクライマックスでもあるライダー3人のラストバトル。庵野監督の苛立ちも必然なのか?ドキュメンタリー上の演出とはとても思えない、強烈な言葉を現場に投げつける。役者陣に指示を出して思いっきり現場の空気を悪くしたあと、モニターを見ながら助監督に「(自分の要望通りできないのなら)今このままやめても良い、(このまま進めても)どのみち失敗するから」とまで心情を吐露している。

ここだけは観た人が『本当にやっている』と思わなくては(意味がない)」と、その場で主張する庵野監督。言っていることは間違ではないと思うが、役者3人(が、監督の指示ではなく役になりきって表現する演技)に任せたいと「その場で言う」監督。確かにその場で言わないとプランを考えてきてしまうから、逃げようのない現場で指示するということなのか?

雰囲気も悪く追い詰められた現場で、3人で演技の相談をする役者陣。森山未來がパンフレットのインタビューで「こういうクリエーションは演劇やダンスでもよくあることです」と語っているが、慣れているから大丈夫というわけではもちろんなく、真剣にそれに取り組もうとするプロ意識が表情から伺えた。

アクションチーム全体が台本投げ捨てて帰ってもおかしくないほど緊迫したギリギリの現場で踏みとどまり、言い過ぎたと思ったのか直立不動の涙目でアクション監督に謝罪したという(何故か映像なし!?)庵野監督の言葉を受け入れ、どこまでも監督をサポートしようと決意するアクション監督の男気が素晴らしかった。

そして演技が始まり、「NGの出しようがない」と庵野監督が評価する3人の壮絶な泥仕合のあとで、倒れ込む役者陣。まだ呆然としている森山未來に「ありがとうございました」と頭を下げて敬意を表す庵野監督。個人的には、映画の中でもこの3人の(段取りには到底見えない)泥仕合が素晴らしいクライマックスだったと思うし、その創造の秘密をこの番組で垣間見たように思う。


ドキュメンタリーの演出としては、これ以降は順調に終わったように描かれているが、映画公開の2ヶ月前まで、本郷と一文字の追撮があったのは驚愕というしかない(本郷は配信用に今も撮っているらしい?)。

スタッフへのパワハラ疑惑や、俳優陣の安全を軽視していると糾弾されても仕方がないこのドキュメンタリーを、このタイミングで公開を許可したのも庵野監督だろう。4/9の舞台挨拶で監督本人の口から「(批判されるのは)正直つらい」との発言があったが、何度も作品公開後に鬱になって倒れてしまった庵野監督のことだ、アクション監督にギリギリで謝罪したのは、むしろ自分自身をそれ以上追い込まないための「生存のための本能的決断」だったのかもしれない。

舞台挨拶では観客の反応に直に触れて、最後に庵野監督が「本当に作ってよかったと思っています。今日は僕個人が心救われました。」と挨拶して、いつまでも深く頭を下げていたのが印象に残った。

それにしても監督の求めるものを理解しようと苦悩し、体を張ってそれをやり遂げた本郷役の池松壮亮の謙虚さ、ひたむきさ、一座の座長役としての責任感、それらが映画の本郷の性格とぴったり一致するように感じられ、一気に自分の中で尊敬と感謝の思いが湧き上がった。ありがとう、池松壮亮さん。そして全ての出演者、関係者、スタッフの皆さんにも感謝。ドキュメンタリーのスタッフ関係者にも感謝を。

余談だが、ドキュメンタリーのナレーションが市川実日子だったのが、緊張しかない番組の中で唯一、心やすらぐ安心感があった。


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