【海外起業】アメリカで飲食店を経営して思うこと
こんにちは、清家です。
2017年に渡米してから、合計3店の日本食飲食店を開業し、現在はロサンゼルスで寿司屋とラーメン屋の2店を経営しながら、新しい店の立ち上げや、飲食店サポートを行っています。
よく色々な人に、
「アメリカで飲食店を経営することは大変ですか?」
と聞かれることがあります。
また、流行っている店を見て、
「自分も飲食店をやってみようかな。」
と仰る方がいます。
本日は、上の質問に対する私の考えを書いてみたいと思います。
「飲食店を経営している」と言っても、飲食店オーナーにはいくつか種類があります。
A. オーナーは店には立たず、マネージャーに全てを任せている
B. オーナー自身が店に立ち、中心となって働いている
ここでは、Bのオーナー自身が店に立ち、中心となって飲食店を経営していることを前提に話を進めたいと思います。
では、結論を先に言います。
アメリカでの飲食店経営は想像以上に大変です。しかし、努力し、成功したときの人間的な成長は計り知れません。
飲食店を経営することは、本当に大変なことです。これは、国、人種、場所に関わらず、世界共通であると言えます。
では、飲食店を開業することの何が大変なのでしょうか。
一緒に見ていきましょう。
アメリカで飲食店を開業する上で大変なこと
自分自身と周りを参考に、ロサンゼルスで飲食店を開業する際に、大変だと思うことの例を挙げてみます。
1.開業にお金がかかる
アメリカで日本食飲食店を開業する場合、平均して20万〜30万ドル掛かります。(日本円で2,900万円から4,350万円です。$1 = 145円換算。)
これにプラスして運転資金が必要になります。運転資金は店の規模にもよりますが、35坪ほどの店で、10万ドル(1,450万円)は欲しいところです。
そうすると、ロサンゼルスで飲食店をオープンしようとした場合、4,350万円〜5,800万円必要となる計算になります。
ロサンゼルスで飲食店を開業するには、大きなお金が掛かることになります。
※アメリカで飲食店を始めるためのビザを取得する必要がなく、店を出来るだけ小さく、必要最低限のコストで開業する場合はこの限りではありませんが、飲食店を開業する際には十分な資金が必要になります。
2.ビザを取得する必要がある
外国人である私たち日本人は、アメリカで飲食店を開業する場合、ビザを取得しなければなりません。
一番取得の多いビザは、E2 Visa(投資家ビザ)と呼ばれるものです。
このビザを取得するには、アメリカに法人会社を設立し、米国内で一定の金額を投資(飲食店開業)しなければなりません。
ビザを取得するための必要投資額が、大体20万〜30万ドル(日本円で2,900万円から4,350万円)と言われています。
ビザの取得は弁護士に任せることになりますが、提出しなければならない書類が多く、時間もかかる作業となりますので、ビザの取得は日本人にとってアメリカで飲食店を開業するハードルを上げる要因となっています。
3.飲食店を開業するための許認可が非常に多い
アメリカで飲食店を開業する場合、連邦政府、州、郡、市、それぞれから必要な許認可を取得しなければなりません。
弁護士、会計士、ブローカー、代行業者(expeditor)の力を借りながら作業を進めていくのですが、許認可取得の手続きは非常に多く、時間もかかり煩雑です。
許認可の取得はスケジュール通りに進まないことが多く、フラストレーションが溜まる原因となりますが、一つ一つクリアにしていきます。
4.日本とは文化と言葉が違う
日本から海外に出ているので当たり前のことではありますが、アメリカでは英語が公用語として話され、文化は日本と大きく異なります。
これにプラスして、飲食店のキッチンで働く従業員は、メインがメキシコ人となるため、スペイン語とメキシコの文化も色濃く交わることになります。
また、白人、黒人、アジア人、メキシコ人、多種多様な人種と日常的に関わることになります。
日本では当たり前なことが、アメリカではNGなことも多々あります。
アメリカの文化や言語に慣れるまで、忍耐力を持って飲食店経営に取り組むことになります。
5.成功するかどうかは実際にやってみないと分からない
お金を掛けて非常にオシャレな雰囲気のある店を作り、立地と競合店のリサーチを行い、美味しい料理を提供し、魅力のあるメニューを作っても、上手くいかないときがあります。
もちろん、自分の店を開業するときは、人生がかかっているので全力で行動します。そうして「成功できないリスク」を最大限にまで減らしていきます。
皆様も経験したことがあると思いますが「どうしてこんな店が流行っているんだろう」と、感じる店も存在します。
逆を言うと、店が成功する要素は色々なものが複雑に絡んでいるため、完璧な店でなくても、お客様に受け入れられることさえできれば、流行る店になります。
世界的に有名な飲食店企業で、潤沢な資金と優秀な人材を使って、店舗展開をしても一定数流行らない店が現れ、閉店を余儀なくされるのはそのためです。
非常に厳しい世界ではありますが、自分の店が流行るかどうかは、実際にオープンしてみないと分かりません。しかし、成功させるために死に物狂いで準備をすることになります。
6.飲食店をオープンしても、そこはスタート地点でしかない
貴方の夢が叶い、念願の飲食店を開業しても、そこはスタート地点に過ぎません。
店をオープンしてからが本番で、最初の数年間は毎日問題が続くことになります。
・従業員に関すること(給与、チップ、仕事内容、不満、etc)
・機器や物が頻繁に壊れる
・お客様からのクレーム対応
・店のセットアップ(POSシステム、メニュー、動線の確認)
・慣れないマネジメント(売上管理、在庫管理、食材発注、従業員トレーニング等)
・飲食店経営に関する法律の遵守
・保健所による抜き打ち衛生検査対策(違反内容がひどい場合、最悪営業停止になる)
大変なことは、挙げるとキリがありません。そして、その大変なことは、出口の見えないトンネルのように長く続きます。
飲食店のオーナー自身が、揺るぎない信念を持って店の経営に取り組まなければ、続けることは難しくなります。
7.ビジネスオーナーは訴えられるリスクが常にある
アメリカの法律は非常に複雑で、しかも頻繁に変わります。
自分では、法律を遵守していたつもりでも、違反していたということが頻繁に起こります。
カリフォルニア州では特に、ビジネスオーナーに対して厳しい法律が定めれており、従業員の権利は厚く保障されています。
私自身も訴訟を経験しており、訴訟に関わることがどれだけ大変なことであるかを、身をもって経験しております。
アメリカの飲食店オーナーは常に、お客様や従業員から訴えられるリスクがあることを想定して経営しています。
貴方はなぜ飲食店を開業したいですか?
アメリカで飲食店を経営することが、どのように大変なのかということを書きましたが、1つだけ強調したいことは、こちらの記事では、決して飲食店をオープンすべきではないと言いたい訳ではありません。
ただ、飲食店を経営するには覚悟が必要になるということです。
ここで非常に重要になってくるのが、
貴方はなぜ飲食店を開業したいですか?
という、自分自身に対する問いになります。
人には、自分の人生で達成したい夢や目標があります。
なぜ、夢や目標を設定し、邁進することが大事なのでしょうか。
私の考えになりますが、それは、経験を積み重ねていくことが人生であり、夢や目標の達成は人を大きく成長させるからです。
夢や目標が大きければ大きいほど、立ちはだかる壁は高く、取らなければならないリスクも大きくなります。
自分がなぜ飲食店を開業したいのかという問いに対する答えが明確であればあるほど、そしてその想いが強ければ強いほど、大変ことが起きても、その問題を忍耐強く乗り越えていくことができます。
私も、アメリカで初めて飲食店を開業してから最初の5年間は、休みがありませんでした。
私の人生における最優先事項は「自分の店」にあり、自分の時間の全てを飲食店を成功させるために使いました。
私の周りには、飲食店に限らず、ビジネスに成功している経営者の友人が多くいますが、大変な思いをせずして成功している人は一人もいません。
大事なことなので、もう一度言いますが、楽して成功しているビジネスオーナーは例外なく一人もいないのです。
巷では、SNSを通じて様々な情報に容易にアクセスできるようになったおかげで、他人の成功がより身近に目に入るようになりました。
しかし、注意しなければなりません。
・人は成功しているように見えても、本当に成功しているかどうかは分からない
・注目を集めるために大袈裟に表現をしている人が大多数
・楽に稼げる、楽に成功するという情報は真実ではない
・成功とは、努力・リスク・行動によってのみ達成できる
・行動の伴わない夢に人はついてこない
・夢や目標は他人と比べるものではない
「自分はなぜ飲食店を開業したいのか」この問いに対する明確な答えをもつことが重要になります。
飲食店経営は大変だが、成功の先にあるもの
成功の定義は人それぞれ違いますが、夢や目標を達成した先には、達成した本人にしか見えない景色があります。
度重なる失敗に、心が折れそうになることもあるかも知れません。しかし、失敗する度に挑戦し、その苦労を乗り越えた人には、人間的な成長があります。
自分一人では何もできないこと、従業員やお客様への感謝、事業を成長させることの喜び、社会貢献の重要性、自分の役割の再認識など、多くのことに気づくようになります。
アメリカでの飲食店経営は大変なことが多くありますが、私にとっては、人生を懸けて挑戦するに値する起業であったと言えます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
清家 秀俊