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死刑遊戯 第4話 文明人という詭弁【小説/シリアス】

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「犯人さん、あなたは殺人は死刑だというけど、そうね、たとえば女が身を守るために、結果として相手を殺してしまったら、それも死刑なの?」
 
「なぜ殺したか、という点については、十分に考慮されるべきだと思いますよ。たとえば強盗が入ってきて、自分や家族の身に危険がある場合、強盗を殺してしまっても、正当防衛でしょう。
 
殺しまでするのは過剰防衛だという人もいますが、生きるか死ぬか、目の前で家族が殺されるかもしれない状況で、手加減などできずはずもないですからね。そもそも、強盗に入るほうが悪いわけで、返り討ちで死んだところで自業自得。少し妙な言い方にかもしれませんが、強盗に入っておいて、反撃されて死ぬことも想定していなかったのか? という話です。だから、そういう状況での殺人なら、死刑にする必要はないと思います」
 
「なんでもかんでも死刑にってわけじゃないのね」
 
「もちろんですよ。私は、身勝手な理由で殺人を犯した人間を死刑にするべきと言っているだけで、殺人という結果だけを指して、死刑だと言っているわけではないので。
 
たとえば、モデルガンや刃物を持って交番に行き、モデルガンを警官に向け、警告したにも関わらずモデルガンを降ろさず、やむを得ず撃った警官については、罪がないのは当然、職務上の問題もありません。
 
モデルガンであっても、それを人に向け、警告されたにも関わらず従わないなら、撃たれて当然、撃たれた人間の認識が甘いだけの話です。その行為が冗談では済まないということが分かっていないことが問題ですからね。
 
あるいは、長年の介護によるノイローゼで殺してしまった、といった場合、殺人には違いないものの、そこに至るまでの苦悩を想像すると、果たして自分はこれを責められるだろうか、と思います」
 
「私が思ってたよりもまともな印象だけど、私は少し違う視点から見てるの」

「どのような視点ですか?」

「世界における日本の立場、世界から見たときの日本」

「なるほど、具体的には?」

「日本は先進国よ。中国に抜かれたとはいえ、今もまだ、経済3位の国。先進国では、死刑制度は人道的な視点から、廃止すべきという方向に向かってる。日本はその流れに逆らってる。本来、見本を見せるべき立場のはずよ」

「経済2位の中国は、先進国とは言い難い体制なので、三谷さんのいう先進国は、アメリカやヨーロッパということになりますか」

「ええ」

「確かにそれらの国々では、死刑制度を廃止するという声もありますが、全員がそう思っているわけではありません。死刑制度がなくても、大量殺人を起こすような人間は、状況にもよりますが、被害者を増やさないためにその場で射殺することも珍しくないですし、凶悪犯を追い詰めた場合も、銃口を向けるのが普通、そこで犯人が危険な行動を取れば、撃ち殺すことも選択肢として存在しています。

もし犯人が投降して裁判を行っても、精神が不安定になったら銃を乱射するような人間は野放しにできないし、何十人も殺しておいて社会復帰できるほうが、不適切だと思いますよ」

「それでも、話は聞くべきだわ。なぜその犯人が銃の乱射という凶行に及んだのか。徹底的に調べるべきでしょ。それが先進国だし、民主主義だと思う。話も聞かずに処刑なんて、中世の魔女狩りと同じじゃない」
 
「話を聞き、調べることについては、私も否定しません。しかし、調べ尽くした後はどうします? 調べ尽くしたから、刑務所に何十年もいたから、罪を償えるわけではありません。殺された人は戻ってきません。被害者の人生は、ある日突然、強制的に終わりにされてしまったんですからね」
 
「生きて罪を感じながら生きていくほうが辛いはずよ……死刑にしたらそれで……」

「そこが、三谷さんに限らず、あなた方全員に見られる甘さの一つなんですよ」

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