第6話 友人【聖者の狂気】(小説)
-13- 友人
翌日、さっそく取材のために、八木沢が働いていたパチンコ屋に向かった。
(タバコ臭いイメージだったけど、そんなことないのね。時代かな)
臭いはともかく、大きな音に頭痛がしてきたが、泉水は店内を周り、店員に話しかけて事情を説明した。店員は、驚きと好奇心、泉水に対する興味を示したが、無視して、店長に合わせてほしいと、淡々とお願いした。
「八木沢くんねぇ、まあ仕事は普通にしてましたよ。主任からも、トラブルの話は聞いてません。DVしてたなんて報道もありましたけど、ほんとかなぁって」
店の二階に案内され、店長は特に敬遠することもなく、淡々としている。おそらく泉水より年上だろうが、それでも三十代半ばぐらいに見える。オールバックにした黒い髪は、不自然なほど艶があり、身だしなみに気を使っているのは分かるが、タバコの臭いがして、泉水は鼻がムズムズした。
「交友関係について、何かご存知ですか?」
「さあ……私は直接話すことはそんなにないので、主任やバイトの子たちなら何か知ってるかもしれませんけど」
「お話を伺っても?」
「いいですよ。一人ずつ呼びましょうか」
店長が主任を呼んで、何やら指示すると、ホールにいるバイトが一人ひとり上がってきて、話をした。今日出勤しているメンバーの話を総合すると、八木沢には友達らしい友達はなく、仕事中はともかく、プライベートでも付き合いをもっている人間は、職場には一人もいなかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?