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野良犬になったウル 第4話 修行【連載小説】
-1-
『ウル、起きろ』
レクスの声が聞こえて、ウルはゆっくりと目を開けた。辺りはまだ薄暗く、昨日の疲れが残っているせいか、体が重い。
『もう、朝……?』
『早朝だ』
まだ薄暗く、少し寒さを感じるにも関わらず、レクスはずっと起きていたように、凛と立っている。ウルもすぐに立ち上がろうとしたが、意志に反して体は動かず、ゆっくりと立ち上がった。
『朝が早ければ、当然その分、早く行動を始められる。この時間だと、まだ動いてる奴らは少ないし、余裕をもって動ける。
今日はまず、辺りを回って、俺の縄張りと、その周辺の地理を教える。餌が取りやすい場所、ここ以外で水が飲める場所なんかも教える。最初はあまり遠くまでいかずに、この周辺で、野良としての基本を身につけろ』
いよいよ始まると思うと、ウルは少し、足が震えたが、『分かった』と頷いて、レクスの後について歩いた。
時刻は、朝の4時を少し回ったところ。森の音は静かで、少し離れたところから、カラスたちの鳴き声だけが聞こえてくる。
『カラスたちは、こんなに早くから起きてるんだね』
『人間が出すゴミを狙ってるのもあるが、それだけじゃ餌は足りない。最近は、ゴミを漁れる場所も限られてきてるし、そうなると、他の群れとの取り合いになる。餌を確保できる場所に先に行くためにも、行動が早い』
『そっか、カラスたちも大変なんだね……』
『他を心配してる余裕はないぞ』
レクスは振り返った。
『俺たちにも、餌は必要だ』
レクスは、まず自分の縄張りの中を歩き、それが終わると縄張りの外に出て、それぞれで、餌が見つけやすい場所、途中に水分補給ができる場所、森の歩き方を、一つひとつ教えてくれた。言われたこと一つひとつを聞くだけで精一杯で、覚えられたとは思えなかったが、少なくとも昨日よりは、野良としての知識が増えたのは間違いなく、ウルは少しだけ、嬉しかった。
『歩いてるとき、餌を探してるときでも、俺の縄張りの外では常に辺りに気を配れ。いきなり襲われるかもしれないし、餌を横取りされるかもしれない。昨日のように、餌をよこせと襲ってくるのもいるかもしれない。警戒は怠るな』
レクスに言われて、ウルは頷いた。
危険がある……それは昨日、身をもって体験したから分かる。昨日、レクスのところまで歩いている間も、警戒というより恐怖で緊張していたし、誰かに襲われるのではないかと思っていた。なのに今は、心配してない自分がいる。
レクスがそばにいるからだと、すぐに気づいたが、落ち込むことはなかった。だが、思考がさらに進むと、不安が襲ってきた。
今はいい。レクスにいろいろと教えてもらっているうちは、たぶんご飯の心配もする必要はない。だがいずれは、レクスと離れ、ひとりで生きていかなければならない。友達ではいられるかもしれないが、面倒を見てもらえるわけじゃない。でも、もしかしたら……
『どうかしたのか?』
俯いているウルを見て、レクスは言った。
『ううん、なんでもない……
あ、ねえ、レクス』
『なんだ?』
『戦い方も、教えてくれるの?』
『いずれな。
俺とおまえでは、体の大きさもスピードも違う。当然戦い方も変わるが、基本的な考え方や体の使い方は教えられる。けどもちろん、簡単じゃない。厳しいし、嫌にもなるだろう。だから無理強いはしない。逃げ出したきゃ、それでもいい。だからこそ、最後までやり遂げたら、おまえは間違いなく強くなる。どっちを選ぶかは、おまえの自由だ。その自由が、野良の特権でもあり、厳しさでもある』
『うん……』
レクスに付いて、森の土地勘や餌のことを理解していくにつれ、ウルはなんとなく、覚悟をもつということの意味が、ぼんやりと見え始めていた。やり遂げる、逃げ出す、どちらを選んで進むとしても、覚悟は必要……なぜそうなのか、もつことで何が変わるのかは分からなかったが、そんな気がした。
三日も経つと、歩くことにはだいぶ慣れて、縄張りの中であれば、餌を確保することもできるようになった。碧桐家で食べていたご飯に比べると、味気なく、不味いものもあったが、食べることができるだけで嬉しかったし、自分で確保できることも嬉しかった。
夜になり、レクスは木の上、ウルは木の幹で寝ることが普通になって、落ち着いて眠ることができるようになった一方で、寂しさも感じていた。碧桐家で過ごしていたとき、時々夜中に起きてきた辰哉が撫でてくれたり、ひかるが泣きながら部屋から出てきて、ウルに寄り添ったまま眠ってしまったこと……そんな生活から離れて、そのことに慣れ始めていること……レクスやジョセフは、きっと喜んでくれる、褒めてくれる、でも……
野良として生きる覚悟。
ふと浮かんだ言葉を抱いて、ウルは目を閉じた。
-2-
朝早くから出かけたひかるは、それでも友達との時間を楽しんだ。頭の片隅には、常にウルのことがあって、昨夜の辰哉のことも気になったが、それを理由に暗い顔をするのは、友達に気を使わせることになるし、楽しみにしていた時間を、灰色にしたくはなかった。
「ただいま~」
21時過ぎに帰宅すると、辰哉だけがいなかった。美和子に聞くと、まだバイトらしく、22時過ぎに帰れるとのことだった。
直人はリビングで新聞を読んでおり、美和子は洗い物をしている。テーブルには、ラップを掛けられた辰哉の夕食がある。昨日の夜のことを聞こうかと思ったが、今は話すべきじゃないという気がして、風呂に入ってから部屋に戻った。やがて辰哉が帰宅して、部屋に戻ったのを見計らって、ドアをノックした。
「開いてるよ」
辰哉の声がして、ひかるはドアを内側に押した。
「友達との時間は楽しめたか?」
椅子をクルリと回して、辰哉は言った。
バイトで疲れているのか、少しまぶたが重そうだが、口調はハッキリしている。
「楽しめたよ」
「座れよ」
部屋のほぼ中央に置かれたクッションの上に座ると、辰哉は立ち上がって、テーブルの向かい側のクッションに腰を下ろした。
「昨日の夜のことだろ? 聞きたいのは」
「うん……」
「ここだけの話にできるか?」
「ここだけって、お母さんたちにも話しちゃダメってこと?」
「いずれ話すことにはなると思う。でも、今はまだダメだ」
「……うん、分かった」
「よし……」
辰哉は大きく深呼吸すると、テーブルの上で手を組んだ。
「昨日の夜、父さんが帰ってくる前に、母さんと話した。俺が聞いたっていうか、母さんに呼び止められて、話したんだけど」
「ウルのこと、だよね?」
「ああ」
辰哉はゆっくりと、言葉を選びながら、美和子との会話について話した。話が進むにつれて、苦しくなって、目頭が熱くなり、終わる頃には、ティッシュで鼻を覆っていた。
「信じたくない……」
ひかるは言った。
「俺もだよ。でも、そんな嘘をつく理由がない」
「本当に、どこにいるか分からないの?」
「たぶんな。車を運転してたのは父さんだろうし、母さんが場所を把握してたとは思えないよ。もしかしたら、意識的に……」
「それってどういう意味?」
「母さんはたぶん、俺たちに黙ってるのが辛かったんだ。だから俺を呼び止めて、話した。もし場所を知ってたら、話してしまう……そう考えて、意識的に分からないようにしたってこと」
「本当にそうなら、酷いよ……」
「悪気があるわけじゃないと思う。ウルを手放すしかない状況と、ウルを思う気持ち、どちらかを選ばなきゃいけないんだとしたら、きついのは分かるし」
「そう、だね……辰にぃが大学辞めなきゃいけないとしたら、たぶん、親としては受け入れたくないだろうし……」
「父さんに言うと面倒だから、引っ越してからは言わないようにしてるけど、俺は別に、大学なんてどうでもいいんだ。面白いこともあるけど、それよりも俺は、仕事がしたい。バイトもやりがいはあるけど、もっと踏み込んでやりたい。自分で稼いで生活するって開放感もあるけど、面白さって意味でも、もっと」
「大学に行く行かないで、揉めたもんね、辰にぃが高3のときも」
「ああ。
まあ、それはいいよ。それよりウルだ」
「ウルを見つけて、連れ戻す?」
「それじゃあダメだよ」
「どうして?」
「連れ戻しても、この家では一緒に住めない。別の方法を考えないと」
「別のって、どうするの?」
「考えてることはある。でもまずは、ウルを見つけなきゃ」
「どこにいるか、見当はつく?」
「いや……」
「車で行ったってことは、歩いていける距離じゃないよね、きっと……」
「……車か」
「でも、捨てるってなったら、場所は限られるような気はするけど……」
「そうか、車か」
「なに? どうしたの?」
「明日話す」
「……?
あ……」
「ん? どうした?」
「ちょっと思ったんだけど、捨て犬とか、そういう子たちって、保護されたりもするでしょ? 保護犬とか保護猫とか」
「ああ」
「保護犬を育ててる施設の人とか、そういう人たちなら、何か知ってたりしないかな?」
「なるほど、それはアリかも。そういう施設で働いてる人なら、捨てられる動物がどういう場所にいるか、知ってるかもしれないし」
「でしょ?」
「よし、明日行ってみる。バイトがあるけど、明日は学校終わったらすぐだし、人手も足りてるし」
「私も一緒に行くよ」
「バイトがあるんじゃないのか?」
「今日と明日は休み。今日、たぶん疲れて帰ってくることになると思ったから、明日は休みにしたの」
「賢い」
「ふふ、ありがと」
「じゃあ明日、バイトが終わったら連絡するよ」
「うん。
ふあぁぁ……」
「そろそろ寝るか。明日も忙しくなりそうだし」
「うん」
立ち上がってドアノブに手を掛けると、辰哉が呼んだ。
「ウルは、このままにはしない。約束する」
真っ直ぐに、ひかるの目を見て、辰哉は言った。
「うん。でも、辰にぃ一人でがんばるのはダメだよ。私もいるんだから」
「ひかるは無理に……」
「ん~……?」
「分かった、ちゃんと相談する」
「良かった。
ウルは、私にとっても家族だから」
「ああ、もちろん、分かってる」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
自分の部屋に戻ってベッドに潜ると、またウルのことが浮かんできた。
家族が誰もいない、薄暗い場所で、ひとりぼっちのウル……さみしくて、泣きながら歩いてる、私たちを呼びながら……
「……」
ひかるは、浮かんできてしまう想像に、膝を曲げて体を縮めた。
突然の別れよりも、なんの相談もせずに連れて行って捨ててしまった両親への怒りよりも、ウルをひとりぼっちにしてしまっていることが、苦しかった。ウルは体が大きくて、力も強いが、優しくて、寂しがり屋なところがある。家族で二泊三日の旅行に行ったときは、帰ってきてからしばらく、そばから離れようとしなかった。
初めて付き合った彼氏と喧嘩して落ち込んでいたときは、泣いているとそばによってきて、温めてくれた。強さより、優しさ成分が多いウルは、野生の中にひとりで生きるのは向いていない。きっと寂しがってる……
目から熱いものが溢れて、机に置いてある、小学生の頃から一緒にいるぬいぐるみを取って抱きしめると、ベッドに戻って目を閉じた。
翌日。
学校が終わると、友達の買い物に付き合ったあと、駅前でスマホを触りながら辰哉からの連絡を待った。待っている間、ナンパ目的らしい男に声を掛けられて、しつこいのでファーストフード店に入ろうと動き出したところで、辰哉が来た。
「おまたせ。
ん?」
辰哉はナンパの男を見ると、上から下へ、ざっと視線をなぞった。
「知り合いじゃなさそうだな」
「ナンパされてた」
「なるほど。じゃあ終わりだ。失せろ」
辰哉が睨むと、ナンパの男はうらめしそうな目をして、消えていった。
「ありがと」
「ん? 何が?」
「追っ払ってくれて」
「あたりまえだろ、そんなの」
「でも嬉しいの。
あ、連絡くれるかと思ってたのに、直接駅に来たんだね」
「駅に着いてから連絡しようと思ってたんだ」
「あ、そういうことか」
「電車で二駅行ったところに、保護施設がある。カフェもやってて、保護猫と保護犬、二つが併設してるらしい」
「あ、それ私も見つけた。アニマルライクでしょ?」
「そう。他にもいくつかあったけど、場所的にも規模的にも、そこがいいと思う」
「うん、そうだね」
電車で二駅、時間にして5分ちょっとで、目的の梅津駅に着いた。
梅津駅は、駅前に大きな食品店と雑貨屋があり、地元民のほとんどがそこで買い物をしていると思えるほど、人が多いが、昭和の時代からある商店街も残っている。駅を置いて線路沿いを西側に歩くと、梅津駅前の信号があり、そこを左に曲がると、商店街がある。時間帯に寄っては車も通れる広さの道を挟んで、左右には、歯医者、昔からある洋食屋、美容室に床屋、コンビニやラーメン屋などが並んでいる。
活気に溢れているという感じではないが、人が途切れることはなく、寂れている感はまったくない。
目的のアニマルライクは、そんな商店街の中にあり、地図を見ると、保護犬カフェと保護猫カフェが併設していて、商店街から裏通りに抜ける道の横に、動物たちを保護する施設が建っている。表通りにカフェ、裏通り側に保護施設、という並びだ。
「ここだね」
ひかるが言った。
アニマルライク、保護犬カフェと書かれたドアには、アニメチックな犬のイラストが描かれており、時折、親と一緒に歩いている子供が指さしていく。隣には、保護猫カフェと書かれたドアがあり、同じように、アニメチックな猫のイラストが描かれている。
「ひとまず、保護犬カフェに入ってみるか」
どこか温かみのある木製のドアを開けて、店の中に入ると、カウンターの向こうから、受付の女性が笑顔を向けた。
「2名様ですか?」
「はい」
ご利用は初めてですか、という、定型の質問をいくつか受けたあと、カフェのルール、犬への接し方などをレクチャーされ、二人は犬たちが待つ部屋に入った。
入ると、中にいた犬たちが一斉に二人に目を向けた。他に誰もいないせいか、全員の興味が二人に向いて、アクティブな二匹が足元まで走ってきて、足に絡みついた。
「かわいい……ねえ辰にぃ、見て、小さい頃のウルみたい……」
駆け寄ってきたうちの一匹は、黒いラブラドールの子供で、足はすでに、大型犬のそれを思わせる太さをしているが、コロコロしていて、一生懸命尻尾を振って、アピールをしているように見える。
「おいで」
ひかるは、黒いラブをそっと抱き上げると、胸に抱えて椅子に座った。辰哉はその様子に目を細めながら、他の犬たち、一匹いっぴきを見て、触れて、少し警戒心が強い子に対しても、焦らずに、向こうから近寄ってくるまでまって、そっと撫でた。
「かわいいな」
ポツリと言って、ひかるの隣に座った。周囲には、犬たちが集まっていて、自然、頬が緩んだ。
「ネットにあったように、いい店みたいだな。この子たちはいろいろあってここにいるんだろうけど、元気そうだし、安心できる場所なんだろうな」
「受付の人も優しそうだったし、運営してる人も、いい人なのかもね」
「そうだな。そうだといい」
こんなにかわいい子たちが、どうして保護犬としてここにいるのだろう。事情はいろいろあるのだろうけど、みんなウルのように……
『ここって、犬を引き取ってもらえるのよね?』
「……?」
熱くなった目が、受付から聞こえてきた声で急激に冷めた。
『お引き取り、ですか……?』
『そうよ。なに? そう聞いてきたんだけど』
「お客さん、じゃないっぽいよね……」
ひかるが言うと、辰哉は頷いて、立ち上がった。
そっとドアを開けて、受付の方を覗く。
「……」
ひかるは、黒いラブを抱っこしたまま立ち上がって、辰哉の後ろから外を覗いた。黒いラブは、不思議そうにひかるを見て、他の犬たちも、足元に集まっている。
「うちの犬、大きくなっちゃってね。散歩とか大変で。だからね、引き取ってほしいのよ」
50歳ぐらいに見える女性が、井戸端会議でもするような口調で、受付の女性に話しかけている。
「分かるでしょ? 大変なの。だからね、引き取ってよ。代わりに、ここにいる保護犬を一匹、連れて帰るから。小さいのをね。やっぱり子供と一緒で、小さいうちがかわいいのよねぇ。大きくなると生意気になって……あ、うちの息子は別よ?」
「は、はぁ……」
「連れてくればいいかしら? うちの犬」
「いえ、えっと……少々お待ちいただけますか?」
「なによ、ハッキリしなさいよ。まったく、身なりばっかり良くして、中身は伴わないのよね、若い子は」
中年女性はため息をついた。
「あ、店長、すみません、今ですね……」
受付の女性が、どこかに電話をすると、一分ほどして、スタッフルームのドアが開いて、男が現れた。
センター分けの黒髪が、ふちなしメガネに軽くかかり、自然と口角が上がった顔は、親しみやすさを演出している。身長は高くないが、気弱という雰囲気はなく、堂々としている。
「お客様、どうかされましたか?」
男は、ざらつき一つないトーンで言った。
「あなたが店長さん?」
「ええ。店長をやらせていただいております、寺田と申します」
「そう。じゃああなたに話せば早いのね?」
「店舗を経営しているのも私なので、何かご要望があれば」
「さっきその子にも言ったんだけど、うちにいる犬を引き取ってほしいのよ」
「お引き取り、ですか?」
「ここは犬を引き取ってくれるんでしょ? それとも、買い取ってくれるの? 下取りみたいに」
「下取り……?」
「とにかく、今うちにいる犬が大きくなって、大変なのよ。だから引き取ってほしいの。代わりに、お宅にいる保護犬を一匹、もらっていくから。物々交換みたいなものよ。いいでしょ?」
「うちは確かに、引取もしていますが、場合によります。今のあなたのお話を聞く限り、引取の条件には当てはまりません」
「なんですって?」
「大きくなれば、散歩が大変になったり、苦労もあります。老犬になれば、歩くのも大変になる。でも、それが生き物を飼うということです。ゆりかごから墓場まで、共に生きるのが、飼い主とペットの関係です。しかし、それでもどうしようもない場合もある。そういう状況に限り、私どもはペットを引き取らせていただいています」
「うちのは引き取らないってこと?」
「あなたが犬に虐待でもしてるなら、話は別です。でももしそうなら、警察沙汰になります」
「虐待なんてしてないわよ、失礼ね!!」
「であれば、大事にしてあげてください。大きくなったからいらないなどという理由で引き取れませんし、そんなことを平気で口にする人に、うちの子を渡すわけにはいきません」
「客に向かってなんなのよその態度は!!」
「あなたはお客様ではありません。
お引き取りください」
「なんて無礼な男……お客に向かってそんな態度をとって、どうなっても知らないわよ」
「脅し、ですか」
「謝るなら考えてあげるわ。無礼を働いて申し訳ございませんって。土下座でね」
「お断りします。土下座する理由も、謝罪する理由もありませんので」
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