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第3話 異物(小説)

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明神と連絡が取れなくなってから、三日が過ぎて、穂香の頭の中は、心配の数が大幅に増加していた。最初は、突然連絡が取れなくなったことや、約束をすっぽかされたことに対する苛立ちもあったが、今はそれもない。

「……」

気づくと、スマホをチェックしている。一日に何度も、明神とのチャットを確認して、既読になっていない事実を見て落ち込む。

職場のリラックスルームでは、他の社員たちが昼食を取ったり、ときに大きな声を出しながら、笑い合ったり、愚痴を言い合ったりしている。穂香は、自分だけが別の場所にいて、ガラスの向こう側に別の世界の景色を見ているような感覚になっていた。

「穂香」

名前を呼ばれて顔を上げると、同じ課の園崎舞優(そのざき まゆ)が、片手にコーヒーの紙カップを持って立っているのが見えた。

「……舞優」

「まだ彼氏とは連絡取れないの?」

向かい側に座りながら、舞優は言った。

「だから、彼氏じゃないって」

少し笑いながら答える。

「幼馴染みたいなものよ。中学から付き合いあるから、10年以上だね。お互いの両親も知ってるし」

「仲良しってことでしょ?」

「それはそうだけど……」

「そんな仲良しの穂香に、一言も言わずにいなくなっちゃうなんて、やっぱり変だよ」

「うん……」

「彼の両親を知ってるなら、連絡してみた?」

「うん。尊の両親にも、共通の友達にも連絡したけど、分からないって……連絡つかないみたいで。家にも行ってみたんだけど、郵便物が溜まってて、帰ってないみたいだし。尊の会社から、お母さんに連絡があって、来てないんだけど何か知ってるかってことだったらしいんだけど、誰も分からないんだよね……」

「最後に連絡取れたのは?」

「三日前の朝。夜、ご飯に行く約束してて、その件でチャットして」

「夜には連絡がつかなくなってた?」

「うん……」

「それじゃあ、会社に行くまでの間に何かあったってことになるよね」

「何かって……」

穂香が表情を曇らせると、舞優は首を横に振った。

「不安にさせてごめん……でもね、三日間連絡がつかなくて、友達も家族も彼がどこにいったか分からない、会社にも行ってない。それって、何かあったってことでしょ?」

「それは、そうだけど……」

穂香は、テーブルの上で両手を強く握った。
何かあった……言われるまでもなく、そうに決まっている。だが、何があったのかを深く考えることを、穂香は無意識に拒んでいた。今日こそ連絡はくる……そう信じたかった。

「それっぽいニュースは見てないけどね。何か事件があったとか。それに……」

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