第11話 リスクゲーム【聖者の狂気】(小説)
-23- リスクゲーム
泉水から連絡を受けた悠子は、ためらっていた。
確かに証拠を抑えられる可能性はあるが、あまりにもリスクが高い。その上、“敵”が乗ってくるとも限らない。何より、自分が考えていることが正しいかどうかも……
「……」
自分だけでは判断できない……弱気になっている自分が嫌になったが、悠子は有栖川の番号を鳴らした。
「有栖川警部、夜分失礼します」
『どうしたんだい? 今日は休みだろうに』
「実はちょっと……あ、その前に、昼間はすみませんでした」
『昼間?』
「深江さんから電話した件です」
『深江くんから電話……ん? 気づかなかっただけかな。きていないと思うけど』
「え……? 本当に、電話きてませんか?」
『……うん、履歴に残ってないね』
「そう、ですか……」
『ん?』
「すみません有栖川警部、一度切って、もう一度電話していいですか?」
『ああ、構わないけど、どうしたんだい?』
「すみません、一度整理して、ご連絡します。10分後ぐらいに……」
『うん、分かった』
電話を切った悠子は、自宅のソファに座ったまま、何度も瞬きをした。
有栖川の言ったことと、あのときのことが、繋がるような気もするし、ただの偶然の可能性もある。もし繋がっていなかったとしても、有栖川に連絡がいっていなかったことは……
悠子は、頭の中である程度の整理が終わると、スマホを手に取った。
「有栖川警部、お願いしたいことがあります」
それから一週間が過ぎたその日、泉水は『桜田公園刺殺事件にまつわる仮説』というタイトルで、前回の続きとなる記事を公開した。
『前回の記事でお伝えした“仮説”について、まだ証拠は揃っていないが、おそらくは時間の問題であること、仮説とはいうものの、一部についてはすでに事実と判明していることも含まれるため、出したほうがいいと判断した。
話は、八木沢のことだ。
八木沢という男は、学生の頃は女性にモテていたが、支配的な性格が災いして、付き合う回数は多いものの、長続きすることはなかった。
支配的な態度を取るのは、自分に自信がないからだが、第一印象では、少しワイルドで自信をもっているように見えるため、自分に自信が持てずに、誰かによりかかりたいと思っている女性には、最初はウケがいい。しかし付き合えば、当然本性が出てくるため、別れることになる。
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