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文献なしのオペラ入門1 パルジファル

最近クラシック音楽で交響曲レパートリーには飽きてきたので、鑑賞の主眼を室内楽曲、器楽曲とオペラに移しています。そこで今回はオペラの鑑賞について書いてみようと思います。

オペラは大好きかというとそんなことはなくて、はじめて聞くオペラは大抵退屈します。やはり長い、何言っているのか分からない、話の展開が遅いという退屈する要素が多いのは事実です。それではなんでオペラを聞くのかというと、単なる見栄で聞いているというのが実態です。西洋ではクラシック音楽の鑑賞の中心は交響曲ではなくオペラだからオペラを聞かないとクラシック音楽を聴いたことにならないという考えから見栄で聞いているわけです。

昨年(2022年)オペラをひょんなことから観たことをきっかけで、これまでまともに聴いてこなかったオペラをもう少し幅広く聞いてみようと思うようになりました。数えてみたところ、これまで私が聞いたオペラはたった30曲程度のようです。数がすくなすぎるので、とりあえず、100曲は聞くことにしようと思います。

そこでどのようなオペラを聞いていくのかということを書いてみようと思います。演目ですが市販されている入門書にそって有名曲から聞いていくということはしません。参考文献なしで、かなり適当に演目を決めていこうと思います。

パルジファル

まず最初に選んだ演目がリヒャルト・ワーグナーの最後の作品であるパルジファルです。この作品はワーグナーの書いた中でも難解と言われていてワーグナーの入門にも相応しくないと言われているものですが、あえてこれから聞き始めました。

パルジファルというと日本だと有名なのがクナッパーツブッシュの1962年のバイロイトでのライブ録音やカラヤンのDGへのスタジオ録音(1980年ごろだったはず)ですが、それらの名盤ではなく、最近の映像付きのものを鑑賞しました。パルジファルに限らずオペラは原則として映像付きで鑑賞しようと思います。
そこで見たのが、2021年4月にウィーン国立歌劇場で上演された映像です。

キャストは以下の通りです。
ワーグナー:パルジファル
2021年4月11日 … ウィーン国立歌劇場, ウィーン

[演出]
 … キリル・セレブレンニコフ
[出演]
 … パルジファル:ヨナス・カウフマン
 … クンドリ:エリーナ・ガランチャ
 … アムフォルタス:リュドヴィク・テジエ
 … グルネマンツ:ゲオルク・ツェッペンフェルト
 … クリングゾル:ヴォルフガング・コッホ
   … 若いパルジファル:ニコライ・シドレンコ

[指揮]
 … フィリップ・ジョルダン
[オーケストラ]
 … ウィーン国立歌劇場管弦楽団
[合唱]
 … ウィーン国立歌劇場合唱団

詳細は、月刊音楽祭のページにありますのでリンクを貼っておきます。

いくつか舞台の写真を貼っておきます。


第1幕最後のパルジファル(シドレンコ(俳優)が演する若い方)とクンドリー(ガランチャ)
なぜか雪の中、パルジファルのポーズを撮影しいてる


第3幕のモンサルヴァート城(ではなく舞台では監獄w)


第2幕のクライマックでクンドリー(ガランチャ)の誘惑を拒絶するパルジファル(カウフマンがグレーの服を着ていて、俳優演ずる若いパルジファルはなぜか机の上)


第3幕でのアンフォルタス王(テジエ)


第2幕でのパルジファル(カウフマン)とクンドリー(ガランチャ)
誘惑を拒否したパルジファルをクンドリーが銃で威嚇している模様w
SCHLOSSというのは雑誌の名前か?


第2幕のクリングゾルの魔の城(ではなくて雑誌編集室か?)
クリングゾル(コッホ)を嘲笑するクンドリー(ガランチャ)
第2幕冒頭でクリングゾルはウィスキーを飲みながらMacのPCをキーボートを叩きながら作業していた


演出は読み替え演出で、モンサルヴァート城は監獄、グルネマンツはじめの聖杯騎士団は囚人になっています。そこにジャーナリストのクンドリーが取材に来るという設定のようです。(が、舞台はあまり真面目に観ていないため詳細は不明)
第2幕のクリングゾルの魔の城は雑誌の編集室か撮影室かなんかの置き換えられています。

この演出だと、カウフマン演じるパルジファルは年老いていて、若いころの出来事を回想するという形をとっているようです。若い方のパルジファルは俳優が演じます。(その割には年老いたパルジファルも第2幕で花の乙女にサインしていたり、クンドリーと談笑したりしていて意味がよくわかりません。)
※歌手が演じるパルジファル以外に若い俳優がもう一人のパルジファルを演じて、クンドリーに誘惑されるのは若い俳優の方という演出はほかにもあって、たとえば2022年の4月のハンガリー国立歌劇場で上演された演出がそうでした。

この手の読み替え演出は日本では人気がないようですが、ヨーロッパだと主流です。私はもうあきらめて読み替え演出を受け入れることにしました。(そうしないとメトロポリタン歌劇場の上演ぐらいしか見るものがなくなってしまうため)

演出自体は理解できたかというと、理解できなかった部分が多いですが、あまり気にしないで音楽を聴いていました。その中で、クンドリーがパルジファルを誘惑する第2幕が演出が一番よく理解できました。人を誘惑する行為というのは普遍的なものなので、舞台がクリングゾルの魔の城だろうと雑誌編集室だろうとあまり変わらないということでしょう。

さて音楽とはというと、昔よりは少し理解できるようになりました。この映像を見て第2幕の良さが初めて分かった気がします。パルジファルをクンドリーが誘惑する場面は音だけのCDだと面白味が伝わりません。ガランチャが演ずるクンドリーの第2幕の演技はなかなかのもので、パルジファルを誘惑するクンドリーの魅力がようやくわかった次第です。

第1幕、第3幕もそれなりに感銘を受けました。第1幕はグルネマンツの語りが多いのですが、その背後で鳴るオーケストラの音色が最高です。はじめてこの作品を見る方は、第1幕の前奏曲を聞いたら、第1幕で1時間ぐらいしてからはじまる場面転換の音楽を聞いて、第2幕のクンドリーの誘惑の場面を20分ほど聞いて、第3幕は聖金曜日の音楽と、終幕の最後10分を聞けばよいのではいでしょうか。全曲を聞く足掛かりになると思います。

パルジファルは難解な作品のため私もよく理解できていないですが、難解ながら聞けば聞くほど感銘が深まる作品です。この演出以外の上演も含めてこれからも何回も聴いていこうと思います。

さて、次回書くかわかりませんが、書くとしたらワーグナーのトリスタンとイゾルデかベッリーニについて書くことにします。

補記
この演出について解説した文章をネットで見つけました。フランス語ですがdeepl使って読んでみます。
https://wanderersite.com/opera/le-temps-retrouve-3/

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