ウィーン国立歌劇場のアイーダ(2023.1)

映像で見れる最近のオペラ上演の記録をいくつか取り上げて、オペラ入門をしてみようと思います。最近はオペラ上演がストリーミングなどで映像として配信されることが良く、いろいろな映像でオペラに接することが出来ます。
今回取り上げるのは、2023年1月にウィーン国立歌劇場で上演されたアイーダです。ORFが放送した映像を見ました。出演者は以下の通りです。アイーダがネトレブコ、ラダメスがカウフマン、アムネリスがガランチャと豪華キャストですね。指揮者はニコラ・ルイゾッティ、演出はニコラ・ジョエルです。この演出で2020年も上演されていたから、古くからあるプロダクションなんでしょう。

DATE:2023.1.14,18,21
Conductor:Nicola Luisotti
Stage director:Nicolas Joël

Cast
Aida:Anna Netrebko
Il Re d'Egitto(The King of Egypt):Ilia Kazakov
Amneris:Elīna Garanča
Radamès:Jonas Kaufmann
Amonasro:Luca Salsi
Ramfis:Alexander Vinogradov
Alexander Vinogradov
Un messaggero(A messenger):Hiroshi Amako
Una sacerdotessa(A high priestess):Anna Bondarenko

Set designer:Carlo Tommasi
Choreographer:Jan Stripling
Chorus master:Thomas Lang

Ensemble
Ballet or dance group:Corps de Ballet

第1幕への前奏曲ですが、冒頭のヴァイオリンの音色がとても綺麗です。チェロもいい音色を出していますね。ニコラ・ルイゾッティさんの指揮は、歯切れの良さよりも音の滑らかさ重視で、美しかったです。

ニコラ・ルイゾッティ(指揮)



幕が開けると第1幕第1場で、最初に司祭長がランフィス登場します。このシーンのウィーン国立歌劇場管弦楽団のチェロがまた良い音色です。ランフィスを歌うのは、アレクサンダー・ヴノグラードフさんです。とても暗めで力強い声に魅了されました。舞台では金色の四角い帽子をかぶり、金と白の衣装を身にまとっていて、いかにも司祭長という感じです。かなり痩せていて威厳がある感じが良く出ていました。

アレクサンダー・ヴノグラードフ(ランフィス)


さて、その後、清きアイーダを歌うラダメスのカウフマンですが、どうも声量が今一つです。この時、調子が良くなかったようで、その点は少し残念です。衣装の写真を下に載せておきました。金と黒、紫とグレーの中間の色が配合された衣装で、結構渋めですね。カウフマンも随分年を取って、若い指揮官というよりは、百戦錬磨だけど人生に疲れている老将といった感じです。清きアイーダも、良いと思うところもありました。万全の状態のカウフマンのラダメスを聞いてみたいと思います。

カウフマン(ラダメス)

そして、アムネリスが登場します。淡い青の衣装で、舞台映えはします。歌唱の方はそこまでインパクトはなかったです。ガランチャというと私の中では2021年のウィーンで収録されたパルジファルのクンドリーの印象が絶大です。

ガランチャ(左、アムネリス)


その後ついにタイトルロールのアイーダが登場します。ネトレブコの歌唱は素晴らしかったです。高音が良く通ります。アイーダは赤の衣装で、とても舞台映えがしました。でも奴隷なのになんでこんな良い衣装を着れるんでしょうかね。

ネトレブコ(アイーダ)

アムネリスが登場してからアムネリスとラダメスの二重唱、途中からアイーダが加わって三重唱になる部分ですが、音楽的にはアムネリスが嫉妬する部分が印象に残ります。私はラダメス、アムネリス、アイーダの3人の中では、アムネリスが一番好きです。嫉妬のあまり激高しているところが良いのです。

アムネリス、ラダメス、アイーダの三重唱が終わると、エジプト王が登場します。エジプト王は、イリア・カザコフさんです。衣装は金と白で豪華です。面白いのが金色の顎髭の付け髭ですね。イリア・カザコフさんは若手ですが、体格が良いせいか、王としての貫禄は充分です。エジプト王は輿に乗って登場しますが、あれを支えている人たちは重いんだろなと思いました。

イリア・カザコフ(エジプト王)

この後は、Guerra! Guerra! Guerra!(戦いだ!戦いだ!戦いだ!)の合唱となりますが、この場面は誰の演奏で聞いても良いですね。迫力満点で緊迫感がある名場面です。合唱の声を通り越しでアイーダを演ずるネトレブコさんの歌唱が良く聞こえてきました。あとルックスで言うとやはり、司祭長ランフィスを演じているヴノグラードフさんがカッコいいです。

第1幕第1場を飾るアイーダのアリアは素晴らしい歌唱でした。このアリアの中で第1幕への前奏曲の冒頭の旋律が弾かれるんですね。あとルイゾッティさんの指揮するウィーン国立歌劇場管弦楽団が、とてもコクのある柔らかい響きを出していて良かったです。私はこのような響きが好きですが、人によっては歯切れが悪いと思う人もいると思います。

第1幕第2場は、プタハ神殿での勝利を祈願する儀式の場面です。はじめに暗い舞台の中で、巫女三人が白い衣装を着て地面に座っています。巫女の長や司祭たちははじめ舞台に登場せず、歌唱だけが舞台裏から聞こえてきます。ここは神秘的な音楽で良いです。ハープの音色と巫女の長の歌唱、合唱が
静かな祈願の儀式の雰囲気をよく表しています。
ランフィスやラダメスが入場してくる間に、巫女たちがダンスを踊りますが、その時のフルートをはじめとする管楽器の音色が良いです。テンポは遅めでよちよち歩きの中で、低弦はコクのある響きを出します。ルイゾッティさんの伴奏ですが、スカッとした切れ味よりはコクのある響きで聞かせる場面が多いですね。ネットリ系のヴェルディですが、私は好きです。

ラダメスが武器を授けられてランフィス、ラダメスと合唱が歌うシーンはさすがに切れ味鋭く盛り上がります。この場面でもラダメス役のカウフマンさんは声量が出ずに不調そうです。ランフィス役のヴノグラードフさんはここでも暗くてよく通る声を出していて良い感じです。

(第2幕以降、執筆中)

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