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ホリエモンが熱く語った“超小型衛星”って、具体的に何ができるの?

前回の記事で堀江貴文さんが語っていた「小型衛星の打ち上げ需要」、「まだ分からない新しい需要がある」と語っていた衛星開発。堀江貴文さん自身も、インターステラテクノロジズとは別の会社「Our Stars株式会社」を起ち上げ、衛星事業に参入すると宣言した。

では実際に、どのような目的で衛星を打ち上げたいと思っている人や企業が多いのかを、手探りしてみた。手探りと言っても、既に堀江貴文さんのOur Starsの事業説明により、大きな3つの目的が示唆されている。さすがの堀江貴文さんも、何もないところからアイデアがひらめくわけではなく、誰かの事例を頼りにして事業を開拓してくことが多いはず。

3つとは、以下の通り。

<Our Starsの3つの柱>
1 超超小型衛星フォーメーションフライトによる衛星通信サービス
2 超低高度リモートセンシング衛星による地球観測サービス
3 宇宙実験用衛星・回収カプセル

この3つの中で、大規模なのが衛星通信サービス。民間が行なっているとはいえ、その母体企業はテスラやアマゾンなど、そのあたりの国家よりも調達できる資金の多い企業となっている。

世界で激化しそうな衛星通信サービス

テスラ創業者のイーロンマスクが率いるのがスペースX。同社の新型宇宙船「クルードラゴン」は2020年11月15日に、野口聡一さんをはじめとする3名の宇宙飛行士をISS(国際宇宙ステーション)へ運び、日本でも一挙に知名度を挙げた。だが同社は宇宙の運輸業だけに主眼を置いているわけではない。注目は衛星コンステレーション計画「スターリンク」だ。計画では、総数約12,000基の人工衛星を、2020年代中頃までに3階層に渡って展開することになっている。膨大な人工衛星を地球の回りに配置し、衛星インターネットアクセスサービスを開始しようとしている。2018年に2基のプロトタイプを軌道にのせてからは、1度で最大60基の人工衛星を打ち上げ、現在は800基以上を運用している。また衛星インターネットアクセスサービスを2020年の秋からは、月額99ドルでベータ版の提供を始めている。

一方、ジェフ・ベゾスのアマゾンは、スペースXと同様に3236基の衛星コンスタレーションの打ち上げを計画する「Project Kuiper」を発表。2020年7月30日には、米連邦通信委員会(FCC)から認可を得た。ただし6年以内に半数、1600基を打ち上げ完了させなければいけないという。1年に200〜300基という割合だ。だが、同グループの打ち上げ企業「Blue Origin」は、いまだロケットの開発中。大量の人工衛星を定期的に打ち上げるのは難しいだろう。そこで同社は、他社ロケットでの打ち上げを募っているようだ。つまり、現段階で衛星軌道に人工衛星を届けられるロケット企業があれば、確実にアマゾンというクライアントを得られることになる。

そのほかヨーロッパ諸国は60億ユーロ(約7600億円)を投じて、スターリンクと同様の衛星システムを計画中だとBUSINESS INSIDER誌は報じている。同時に、スペースXの最大のライバルとして、ソフトバンク傘下だったイギリス企業・ワンウェブを紹介。同社は最終的に合計48,000基の衛星を打ち上げ予定だとしている(12月までに総数110基の衛星を打ち上げ済み)。

もちろん中国も追随している。記事によれば中国は、「紅雲(Hongyun)」「鴻雁(Hongyan)」「Galaxy Space」という3つの低軌道衛星コンステレーションの開発を進めており、「紅雲」で864基、「鴻雁」で320基の衛星を打ち上げる計画だと、Roomが報じたという。

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Credit : OneWeb

既に多くの企業が参入している地球観測サービス

地球観測(衛星リモートセンシング)サービスは、既にホットな事業だ。Kenneth Researchは調査レポート(2020年12月15日)によれば「農業、エネルギー、土木、石油・ガスなどの多くの分野で地球観測サービス用の小型衛星の需要が増加」しているとする。

同レポートで挙げられた注目すべき小型衛星サービスの企業だけでも、「Sierra Nevada Corporation (US)」「 L3 Harris Technologies (US)」「 Lockheed Martin Corporation (US)」「Northrop Grumman Corporation (US)」「Airbus Defense and Space (Netherlands) 」と数多い。

また2017年の記事だが、宙畑(そらばたけ)では「衛星リモートセンシングベンチャー企業とビジネストレンド 2017」で、数多くのベンチャー企業を挙げている。やはり存在感がずば抜けているのはアメリカの企業だ。

トップで挙げられているのが、Planet。2017年時点で100基以上の衛生群を所有。世界中の写真を撮影し、高品質かつ頻繁にアップデートされ、様々な分野での活用が期待されているという。また「2017年2月に、この分野の有力ベンチャー企業であったGoogleの子会社Terra Bellaを買収」し、さらに力を付けたとする。(なぜGoogleが、そんな注目企業を売ったのかは気になるところだ)

そのほかSpire、Blacksky Global、Orbital Insight、Urthecastなどのベンチャー企業が続く。

そしてその後にリストアップされているのが、日本の「アクセススペース」だ。2008年に大学発のベンチャーとして創業。気象情報企業のウェザーニューズと共同開発した「WNISAT-1」を2013年に打ち上げ成功。2017年には、その改良版「WNISAT-1R」を打ち上げ、現在も運用中だ。

今後も注視したいのが2015年に発表された「AxelGlobe(アクセルグローブ)」プロジェクト。超小型人工衛星50基により、全世界をオンデマンドで観測できる地球観測プラットフォームの構築しようというもの。2018年12月には1基の衛星を打ち上げ、特定の地域を“毎日”観測するサービスを2019年5月31日に始動している。また2021年3月20日には4基の衛星を、高度600kmの軌道へ追加で打ち上げ予定。これにより「日本付近を含む中緯度地域では平均1.4日に1回、低緯度地域であっても3日に1度という高い観測頻度が達成される」としている(ん? 2019年の発表では“毎日”とされていたけど…5基体勢にしても最大平均1.4日なのか…)。

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↑ AxelGlobeプロジェクト用に打ち上げ予定の4基の人工衛星「GRUS-1B, 1C, 1D, 1E)」

前述の宙畑では、ほかにも日本のベンチャーを紹介している。「スペースシフト」は、衛星データ解析システムの開発を手掛ける。もう少しわかりやすく言うと「様々な衛星データを活用して、AIを用いた解析結果を提供。農業モニタリングから商業施設の駐車場の自動車台数の計測など、経済活動モニタリングまで、光学衛星、SAR衛星を用いた解析サービスを提供する」と、同社サイトには書かれている。

2016年創業の「ウミトロン」は、水産養殖事業者向けに特化した海洋データを提供している。「IoT、衛星リモートセンシング、機械学習をはじめとした技術を用い、持続可能な水産養殖のコンピュータモデルを開発しています。私たちは世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、より安全で、人と自然に優しい「持続可能な水産養殖を地球に実装する」ことを目指」しているという。

つくば市に本拠とする「ビジョンテック」は「人工衛星から得られるリモートセンシングのデータ提供サービスをはじめ、衛星データ解析業務やリモートセンシング応用技術の開発、あるいはデータベース(GIS)構築サービスを含むデータ解析システムの構築、ならびに関連する情報処理システム及びネットワー クシステムの構築やコンサルテーションを主要業務」という……って、ぜんぜん分からない(汗)。現状では、「日々刻々と変化する作物の生育状況や栽培環境を的確にモニタし、高品質な米を効率的・安定的に生産するための農業をサポート」する「アグリルック」を、主要サービスとして展開しているようだ。

そのほかnoteでも関連記事をいくつか見つけた。noteを見る限りでは、日本の宇宙開発が盛り上がりつつある……とは到底思えないのが、残念でもある。


堀江貴文さんが「最も早く事業化して収益が上げられそう」と語ったのが、「宇宙実験用衛星・回収カプセル」事業だ。これまで宇宙での実験を担ってきたISS(国際宇宙ステーション)が、あと数年で運用を終えるという。宇宙での科学実験を一手に担ってきただけに、ISSがなくなってしまうと、多くの科学者が困ることになる。そこで実験用の衛星を打ち上げ、宇宙空間で自動で実験をし、それを地球に送り返すという構想。

これに関しては、ほか企業による事例を見つけられなかった。

ただ、堀江貴文さんが思いついたということは、世界の天才たちが既に始めているか、もしくは複数のプロジェクトが胎動していることは間違いないだろう。

もしISSの運用が延長されたとしても、低価格でサービスを提供できれば、当然需要が見込めるはず。これまでは「宇宙空間(無重力)で実験がしたい!」と思い立っても、詳細な実験プロセスを決定し、機材を用意し、NASAやJAXAなどの国家機関にお願いし、さらにロケットが打ち上がるまでに数年を要すという、かかる予算も期間も規模が壮大な実験になっていたはず。それが思い立ったら低価格でパッと実験ができれば……これを使わない手はない……と考える民間の研究機関は多いのでは?

以上、主に3カテゴリーの宇宙を活用した事業を記した。

堀江貴文さんが言っていたように、確実にロケットが足りていない、ということは確かだ。そしてその民間でのロケット開発は、SpaceXをはじめ成功しつつある。遠くない将来に、今よりもカジュアルにロケットを打ち上げられるようになるだろう。そうなれば宇宙活用の斬新なアイデアも続々と提案されていくはず。

これからの宇宙活用が楽しみだ。

もちろん、そこで日本の企業が先頭を走っていて欲しいものだが……。

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