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【work】 太陽の塔の黄金の顔
数年前、友人が声をかけてくれて演劇の舞台美術を何度か手掛けました。 その劇団で最後に僕が作ったのが今回紹介する太陽の塔の黄金の顔です。
中島淳彦 作『エキスポ / 無頼の女房』という戯曲を劇団 江戸間十畳が2017年に上演。 僕は当初、この公演では舞台美術に関わる予定はなく、公演チラシの原画と、劇場ロビーにフォトスポットとして今回の演目をモチーフにしたオブジェを置かせてもらう予定でした。 しかし、このオブジェが完成して舞台の仕込み中にロビーに設置していたところ、演出家でもある友人から舞台の演出に使えそうだということで、急遽予定が変更になりました。 最終的に、物語のクライマックスで登場してしまうことになり、なんだかビックリでした。
この戯曲の中で1970年の大阪万博が需要な役割を持っています。 70年万博のシンボルとして造られたのが岡本太郎先生の太陽の塔。 博覧会のテーマ「人類の進歩と調和」は、この戯曲の中でもセリフの中に何度か取り上げられますが、かの岡本太郎は「人類は進歩などしていない」と主張して、この太陽の塔を生み出したというジレンマのような状態があり、今回のオブジェを作るにあたってその相克の関係性は僕にとっても何らかの意味を持っていたように思えます。
太陽の塔オフィシャルサイト
さて、太陽の塔を構成する要素の中から "黄金の顔" を今回のオブジェで作ることにしたのは、太陽の塔に仕掛けられた4つの顔のうちこの黄金の顔には「未来」を象徴するという性格が持たされているから。 この戯曲では過去を紐解くことが物語を引っ張る要素になっているのですが、登場人物たちの未来に繋げるのが過去の出来事の役割だと感じました。
まずは作り始める前に太陽の塔の写真を探し、それらをプリントアウトして分割線を書き加え計測し、僕が作る黄金の顔の大きさを決めるところからはじめました。
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そうして割り出した寸法をもとに簡単な三面図を書きました。 実物とは奥行きが違っていると思いますが、そこはディフォルメです。 避雷針も付けません。
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流石に首にあたる部分は作る余裕がなかったので黒く塗った脚を付けて自立させることにしました。 この図は骨組みの設計だけでなく、搬入出を考慮してのパーツ分割も表しています。
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とはいえ、最初は首も作るつもりでいたんですよ。 工程と納期を考えたら無理だなってことで自立させるための脚だけ用意することにしたんです。
素材は、骨組みに木材(2×4材、5mmベニヤ)を使用、表貼りには黄色いダンボール(ミカン箱)を収集して使いました。
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先程表貼りには黄色いミカンの箱を使用と書きましたが、下地には雑多な箱を貼っています。 流石に2重貼りにしないと強度が足りないです。 支柱が白いのは、部材の再利用だから。
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こんな感じに曲面を作ってダンボールを貼り込んでいきます。 下地は割と行き当たりばったりですが、表貼りは放射状に分割して貼っていきます。
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正面は、二段階に分割した同心円を放射状に分割して表貼りしました。 仕上げもそこそこ手が掛かったけれどとても楽しかった!
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僕が作った黄金の顔の左目には宇宙服を着た人が座っています。 これは、『アイジャック事件』を元ネタとしていますが、あまりその事件との関連性を強めたくないので左右の位置は変わっています。
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このお話の中で、万博のチケットはとても重要なアイテム。 僕は万博開催時にはまだ生まれてなかったので当然見たことも無く、資料を探すのは割と大変でした。 1970年の大阪万博ではバッヂを集めた人は多かったようなんですが、チケットの資料はなかなか探しにくかった。
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設置状態です。 画面の手前方向が入口。 奥が会場入口(後方)です。 公演ではクライマックスでオブジェを写真左の出入り口まで動かして、劇場の扉を開き、そこにスポットライトが当たる演出でした。
このオブジェ、演出家の友人から廃棄するなと言われて保管してるんだけど、何しろ素材にダンボールを使ってるのでそろそろ状態が不安なんだよね。 ダンボールって虫湧いたりするじゃないですか。 うーん、廃棄、しちゃだめかなぁ。 欲しい方がいたら言ってくださいね。 譲渡価格は応相談です。
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