「アオラレ」の感想。不毛な地獄の争い。
俺の全存在を賭けて、たまたま目に付いたお前を煽る!!うおおおお!!!!!!!!!
凶暴なラッセルクロウを見たくて見た。
テンポが良くて面白かった。
不毛な対決
主人公もそれを襲う男(ラッセルクロウ)も、同じように、上手くいかない人生に疲弊して苛立っている。同族同士で潰しあう不毛さがこの映画の肝だと思った。(だから主人公は人生うまくいってちゃいけないし、品行方正で純然たる被害者であっちゃいけない。)
つまり、男的には自分の人生をクソみたいにしやがる社会に反撃!って感じなんだろうけど、その社会を構成する人間の大半は自分と同じようにクソみたいな人生を送ってる。で、それは主人公も同様だ。
自分の人生の問題に対峙しても特に良くなる見込みはないので、主人公はとりあえず手近でムカつく奴にクラクションを鳴らし、男はそれにキレて煽り運転を始める。なんて不毛な地獄だ。(しかしそうせざるを得ない気持ちは痛いほど分かる。)
なので、主人公が男との戦いに勝とうが、別にこれで彼女の人生が好転するわけじゃない。元夫は今まで通り家を奪おうとしてくるし、母親の認知症問題も何も解決してない。
ただ今回の件を教訓に、彼女が同族に当たることは無くなって、その結果僅かばかりではあるけど周囲の人間の疲弊も減るのかもしれない。
みたいな。
主人公が教訓を得るオチに関しては特に思うことはなかった(「いい話で終わって良かったな」とは思った)けど、全編通した不毛さに関しては身に覚えがあったりして面白かった。僕はレジ前でモタモタしている人にイライラする。これも不毛な苛立ちだ。
ラッセルクロウについて
ラッセルクロウは凶暴な男にハマりすぎてて最高だった。(補足1)人との距離感がバグってる大柄な男がこっちに話しかけてくるのは怖すぎる。
序盤の主人公とラッセルクロウの言い合いのシーンではずっと「絶対謝ったほうがいいよ。相手はあのラッセルクロウだよ?」と思っていた。
突発的に始まった反撃の割には男が意外と手際良くて、趣向も凝らしているのがだいぶ面白かった。位置を追跡するために主人公の車にタブレットを仕込んだり、次の犠牲者を主人公に決めさせたり。
多分こいつは前々からこういう事態を陰鬱な妄想としてシュミレーションしてる。
あと、面白半分に煽るとかじゃなく、自分の人生を懸けて煽ってくるのには好感が持てた。悪行に対して真摯な悪役は見ていて気持ちが良い。
その他の感想
・車内で他の車に悪態をつく空気が苦手なので、序盤にそういう行動をとる主人公の様子がキツくて吹き替えで見れなかった。これは演出がリアルだったというポジティブな感想。
・途中、電話帳の中から誰を殺すか選べと言われた主人公が自分をクビにした上司を選んだ辺りで、主人公が男を使って自分の暗い欲望を満たしていく展開になったりするのかなと思ったけど、特にそう言う感じではなかった。
・日本語タイトルについては思うところがある。ラッセルクロウがやっていることはもはや煽り運転とかのレベルでは無いし、「アオラレ」ってカタカナ4文字タイトルダサすぎないか?「チアダン」みたいな。
「これが、あおり運転の最終形態。」って煽り文は結構好き。あおり運転が最終形態まで行くと、人を椅子に縛り付けてライターオイルぶっかけて燃やすことになるらしい。
最後の部分(1:30〜)のラッセルクロウが可愛い。「アオッテンジャネェ!」