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「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」感想

ものすごく心が狭くて、ありえないほど性格の悪い自分に気付かされた。

アメリカ同時多発テロで最愛の父を失った少年が、あるとき父の遺品の中から1本の鍵を見つける。それが入っていた封筒には「ブラック」の文字。少年はこの鍵に父のメッセージが託されていると確信し、ニューヨーク中のブラック氏を訪ね歩いて謎を解き明かそうと決意する。
(Googleトップのあらすじ)

おしゃれなタイトル。

嘘を数えるなんてかわいいなとか思っていたけど、どんどん主人公のことが嫌いになっていった。
他人の領域にはずかずか土足で踏み込むのに、自分の領域に入られると途端に冷静さを失って大声を出し耳を塞ぐ。何だ君は。(TBBTのシェルドンは好きなのにこの主人公は好きになれない、きっと横にレナードという批判的な他者がいるかどうかが大きい)

物語の主軸になる鍵穴探しについて。
父親の遺した課題である鍵穴探しを続けている間は、父親の死を引き伸ばしていられる。ということは、実は主人公にとって鍵穴が見つかるというのは不都合な事態である。(補足1)

補足1
だから、鍵穴が見つかってしまって、しかもそれは父親からの課題でも何でもなかったのだと知らされたときに、主人公は否応なく父親の死に直面することになる。

この、探さなきゃだめなんだけど、見つけてはいけないっていうジレンマが面白いなと思った。
しかし、間借り人に「No(鍵はきっと見つからない)」と言われた時に、主人公が素直にショックを受けてたっぽいのが解せないんだよな。
君ならこのくらいのメタ思考は出来て然るべきじゃないのか?

終盤で主人公の調査探検は母親の管理下にあったっていうオチが明かされる。
街中のブラックさん達についての印象が、母子の間でズレなく一致しているのをみてガッカリした。主人公が体験したあれこれはお母さんの想定内だったのかよ。(補足2)

補足2
実のところ母親が全てを管理していたわけではない。
母親は、主人公が接した人達の内、間借り人とブラックさんの元夫に対しては根回しをしていない。
そして彼らと接するときに予定調和は破られて、主人公は「父親からの最後の電話に出なかった。」という自分の秘密を曝け出すことになった。(間借り人は逃げ出したけれど)
しかし、主人公に変化を及ぼしたのが母親の管理外の存在であるなら、では母親のしたことの意味って何?という疑問は出てくる。

幻の6区をめぐる調査探検の結末もなし崩し的だったし、主人公が一旦底に落ちてからの再生の過程が雑に感じた。
結果、なんだかモヤモヤしたまま見終えることになった。主人公のことをもっと好きになれてれば、また違う感想を抱いたかもしれない。

・ドアの外から、そこにいないかもしれないお母さんに話しかける主人公。
・受話器の向こうにきっといるであろう息子に語りかけるお父さん。
この対置はよかった。いないかもしれない相手に語りかけるってモチーフは大好き。

そんで、結局何がありえないほど近かったわけ?

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