バディーズシリーズの感想
は?バディーズシリーズって何?って人はまずここにやって来ないと思うけれど、そんな奇特な人の為に軽〜〜く説明すると。
バディーズシリーズは、ゴールデンレトリバーの子犬達の冒険を描いた、ディズニーの実写映画だ。全7作ある内、日本では1作目と7作目を除いた5作をディズニープラスで見ることができる。
この謎のシリーズを5作ぶっ通しで見たので、その感想を語っていく。
先に言っておくと、意外と面白かった。ただそれは真っ当な映画の楽しみ方では無い。
ちなみに、上映順としては
・スノーバディーズ
・スペースバディーズ
・サンタバディーズ
・ゴーストバディーズ
・トレジャーバディーズ
らしいんだけど、僕はスペースバディーズを最初に見たので、感想の順番もそこだけごっちゃになっている。
スペース・バディーズ
なんとなくこんな話だったなと思い出しながら書いてみたけど、なんだこのフワフワした話。まあいいや、以下感想。
リボン、スカーフ、目の下のマーク、そういう記号的な要素のみで構成された子犬達はそれぞれ代替可能な存在で、それが「見えない都市」(補足1)みたいだなあと思った。
実際のところは犬種を揃えることで、ある子が疲れちゃった時なんかに控えの子を使えるという制作上の都合なんだろう。
とにかく、犬ごとの見分けは最後まで出来なかった。というかもうどのキャラの名前も思い出せない。
全てがご都合主義的に進んでいくので、話にも起伏とかはない。
「見えない都市」という小説は結局記号論の話だから、射程が広すぎて大抵のシリーズもの映画に適応できてしまい、それは無意味な当てはめになりがちだ。(わざわざ美術館に行って、「は?全部ただの汚れた布じゃん?」と言って回ることにどれほどの意味があるのか。)
しかしこの映画では彼らは徹底的に任意の存在なので、どうしても記号論的な読み取りが幅を利かせてしまう。
起伏のない話の中でするすると流されていくけど、
「ネットで調べたら人が隠れ住んでるステーションがあるらしいですよ」「よし、じゃあその人に頼んで燃料を分けてもらおう」
とか、イカれたロシア人宇宙飛行士がそのステーションを爆破しちゃったりとか、見てる側をナメくさったヤバい描写はいっぱいあって、その無法っぷりが面白かったりした。
「犬達はセリフを喋りまくるけど飼い主にはそれが聞こえない」ってバランスはイルミネーション映画の「ペット」っぽくもあるんだけど、実写の子犬達が口をふがふが動かして喋ってる様子はかなり奇妙だ。それに「ペット」の方では犬達は人間がいる前では喋らず、ただの犬として振る舞う「トイストーリールール」を徹底しているんだけど、こちらにはそこまでの徹底が見られず、それもまた変な感じだった。
宇宙という舞台について、一応ライカ犬を意識した話にはなっていて、地球に帰れなかった彼女の無念を晴らすという意図は感じられるんだけど、とってつけたような感は否めない。
スノー・バディーズ
スペースバディーズに比べたらわりかし普通の話だったので、あんまり印象が無い。しかし僕はYouTubeで無限に出てくるような犬の可愛い動画が好きなので、それと同程度に楽しめた。
前作にも共通するけど、飼い主達の子供達が、バディーズ達が飼い犬であるということを示すためだけに登場して、すぐさま退場していくのが面白かった。
ブッダという名の犬が和室で銅鑼を鳴らして「ナマステ」って言うのもだいぶ面白い。ここには記号しかない。
(ワクチン接種を怠り5匹の子犬が死亡。)
しかし、これは駄目だろ。
ふざけんなよこんな映画作りやがって、みたいな義憤は湧かないまでも、個人的にちょっと嫌な気持ちにはなった。
サンタ・バディーズ
スノーバディーズ→スペースバディーズ→サンタバディーズって並びがなんかもう面白い。
2手目で宇宙に行っちゃったせいで、後はファンタジーの世界しか残ってない。それにスノーとサンタって一個飛ばしでやるにはイメージが近すぎないか?
今回の話は、その大半が子犬達が住む町で進む。今回もこれまで通りパパッと手続的に子犬達を未知の世界に連れ出すものと思っていたし、そう期待していたので、一向にスタート地点の街を出てサンタの世界に向かおうとしないのを怠く感じたりした。
しかしずっと心ここに在らずな様子の犬達を見るのは毎度のことながら楽しかった。
「クリスマスキャロル」のスクルージをなぞったような、意地悪な保健所職員の安易なキャラクターも面白かった。
てかサンタドッグってなんだよ。あるものみたいに言いやがって。
サンタドッグJr.って名前の犬はだいぶ面白いけど、まあアッカーマンって名前の農家がいないとも限らない。
ゴースト・バディーズ
ついに完全に町の中で話が進んでいくようになった。
そして人間である飼い主たち側の話の比率がめちゃめちゃ増えてた。
飼い主達と犬達が両面から事態の解決にむけて動くっていうのは、これまでよりちゃんとした話になってるとも言えるんだけど、話の歪さが減退した結果、話運びが雑で普通に退屈な映画になってるように感じた。今更人間側にフィーチャーされても、もっと犬を映せよとしか思わない。
お前はクオリティではなく、実写動物映画という独自性で評価されていた映画のはずだろ?自分のニッチを見失うなよ。
5人の子供を持て余してるな〜とも凄い思った。犬は群れでわちゃわちゃしてるだけでみてられるけど、人間ではそうはいかない、どうしても個々人の働きを見てしまう。
シリーズに慣れてきたからか、これまでで1番退屈だった。
魔女がいっぱいをオマージュしたような展開(子供のネズミ化)はしかし、猫でなく犬が主役のシリーズでやってもそんなに綺麗じゃないなと思った。
トレジャー・バディーズ
これまでも話はあってないようなものだったけど、遂に話が破綻して成り立たなくなっていてクソ笑った。(僕がちゃんと把握できていないだけの可能性も多分にある。というかそうであってほしい。)
最初から最後まで、悪役がどうやって「猫による支配」をしようとしているのか、主人公達は何をどうすればそれを止めたことになるのかという勝利条件が提示されずに話が進んでいく。
最後の最後に勝ち誇ったように猫による支配を宣言した悪役猫は、主人公達が何かをするまでも無く勝手に石になってしまって、どうやら猫による支配は訪れてないっぽい。
誰か教えてほしい。これはどういう話だったんだ?
他にも気になった所が色々あったのでいくつか挙げていく。
・前作では5匹の犬とその飼い主である5人の子供達が出てきていたけど、今回登場する子供はマッドパッドの飼い主の1人だけに絞られている。
前作では明らかに5人の子供達を持て余していたのでこの方針には納得なんだけど、しかし最初からいなかったみたいに他の4人の子供達の存在が完全に抹消されていたのは面白かった。
・前作同様、犬と人間が両面からひとつの事態を追うって話になってるんだけど、犬側と人間側の話がリンクしたり、互いに影響を及ぼし合ったりしてないのが気になった。
まあ別にそれでも良いんだけど、だとしても最後に両者が再会するときには1番のカタルシスがあるべきで、それをなあなあで済ませちゃってんのが最高にバディーズって感じだった。
・今回の話は猿が甥っ子の猿に昔話を語るって形をとった回顧録的な作りなんだけど、そういう作りにする必然性は皆無だった。
流れをぶった斬って現代のタイムラインでの猿の語りのシーンが挟み込まれるのが、猿のジャージャービンクスみたいな喋り方も相まってかなりイラついた。
・あとはカットの繋ぎがところどころ破綻していた。
特に終盤のクライマックスシーンでは、さっきまで部屋にいた悪役が次のカットでは消えてたりしていて話が余計飲み込みづらくなってた。
露骨ににインディジョーンズっぽい雰囲気でワクワクしていたのに、あんまりな終わり方だった。
しかし、主人公達が放っておいても結局悪役は自滅していたはず、というのは実はインディジョーンズ一作目の「失われたアーク」にも言える話で、そういう意味で本作は本家の忠実な再現と言えなくもない。(当然これは戯言である)
バディーズ以外でこんなのを見せられたら激怒だけど、バディーズには他の映画とは違う方向での面白さを期待していたので、それに関しては満足できた。
まとめ
酷い物語、安易なオマージュ、記号的なキャラクターを、犬のかわいさ一点だけで突破しようという姿勢がとても良かった。
特に好きなのはスペースバディーズとトレジャーバディーズ。
スペースバディーズは最初に触れた分衝撃が凄くて、トレジャーバディーズはその見事な破綻っぷりが面白すぎた。
しかし決して冷笑的に楽しんでただけではなく、ちゃんと犬が可愛かったのは良かった。動物の可愛い動画は無限に見ていられる。
最後に、最近見た動物の可愛い動画を紹介して終わろう。イルカが2人のトレーナーに交互にキスする動画だ。
かわいい〜。
こういう動画を見続けるなんてのはひたすらに無為な時間の過ごし方だけど、どうだろう、意味から外れたところにこそ豊かさがあるとは考えられないか?
そう言う(無)意味では、バディーズシリーズとかいう謎の作品群についての謎の感想をここまで読んだあなたは、とても豊かな時間を過ごしたと言える。
言えない?
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