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「ジュラシック・パーク」の感想

「ジュラシック・ワールド ドミニオン」を観るにあたって、過去作を総浚いしたので、その感想を書いていく。まずは1作目「ジュラシック・パーク」だ。

・今現在、僕はもうドミニオンを観終えているので、所々で「ドミニオンを観た上での感想」を挟み込んでいる。

感想

見ている間ずっと本物/偽物という二項対立について考えさせられた。
そういうのは置いておいても、気のいいイカれた金持ち爺さんが子供達のために作った、夢と狂気の世界からの脱出劇としてシンプルに面白かった。恐竜大好き。

これはハモンドが3人の専門家にこのパークをどう評価するかを聞く物語なので、必然、専門家達の(特に、ハモンドに1番ハッキリとNOを突きつけるマルコム博士の)スタンスに注目して見ることになる。

マルコム博士はパーク恐竜を不自然な存在だと考えている。──「自然界の摂理によって滅びた恐竜を復活させるのは、自然界へのレイプだ。」
一方で彼は恐竜達は紛れもなく生きているとも考えていて、それが「命は必ず道を見つける」というセリフに表れている。
彼のスタンスをまとめると「パークの恐竜はその出自としては不自然な偽物だけど、しかし同時に紛れもなく生きている本物でもある。」というもの。

グラント博士もトリケラトプスに触れることで彼らの温かさ、つまり紛れもなく生きているという事実を感じる。そして物語の中盤で、システム上存在するはずのなかった恐竜の卵を目にして、マルコムの言っていた「生命は必ず道を見つける」というセリフが真実であったと悟る。
(ハモンドの孫達もブラキオザウルスと触れ合うことで恐竜達の命を感じる。このシーンはグラントが子供と恐竜を触れ合わせることで、子供嫌いを克服するシーンでもある。)

ハモンドは人々を喜ばせる本物の体験を作ろうとしていた。中盤ではまだシステムを改善すれば制御できると思ってたけど、マルコムの予言通り生命はシステムを凌駕し、ラプトルに襲われティラノサウルスに救われ、最終的に恐竜達は自分には制御不能な代物だったと悟って島を去る。(このシーンでの彼の寂しげな顔が良い。イカれた夢に取り憑かれてただけで、良い人ではあるんだよな。)

子供達も良かった。恐竜大好きな弟と恐竜嫌いの姉。2人とも怖い思いをしながらも恐竜の凄さを知って、最後には冒険を終えて疲れてぐっすり眠りながら帰る。
恐竜と触れ合って彼らの温かさを知って終わりじゃないのがいい。最終的にはマジで命を狙われる。それが恐竜を丸ごと体験するってことでしょ。
(なので結果的にハモンドの目指していた「本物の体験」は成功しすぎてしまったことになる。)

冒頭でグラントは恐竜は生き延びて鳥に進化したと子供に語っていた。そして最後、ヘリで島から脱出したグラントの目に映るのは海上を飛ぶ鳥の姿。
「生命は必ず道を見つける」というテーマがここでリフレインし、島での恐竜達の繁栄が示唆されて幕が下りる。

まとめると、出自としては偽物でしかない恐竜だけど、彼らの生命と、そして彼らと関わる体験は紛れもない本物だ。という感じの話だった。(補足1)
破綻したシステムの向こうで剥き出しの命と触れ合う素晴らしさと恐ろしさが詰まっている最高の映画。

とにかく凄い面白かった。

補足1
・ドミニオンを観終わっての補足
まさかこの名作から始まったシリーズがあんな終わり方をするなんて。
「出自に関わらず、彼らは紛れもなく生きている」このテーマが今は悲しくて仕方ない。
余談
生命を複雑系として捉えるマルコム博士の考え方は大体「生命とは何か―複雑系生命科学へ」って本に書いてある感じなんじゃないかなと思う。
生物を動的システムとして表現することで、その本質に迫ろう!って感じの本で、モデル化の手際が鮮やかで面白かった。(生物は、それが持つパラメータの数だけ次元を持つ空間上の一点として表現できるよね。とか。)

観ている最中のメモ

目の前で動く恐竜の存在を世界中の観客の誰も知らない状態だったから、結構恐竜の登場まで焦らすんだよな。

冒頭に恐ろしげな影をチラ見せ→発掘現場→ハモンド登場→パークへ→恐竜のお目見え!

恐竜の初お目見えのシーンではただ悠々と歩く草食恐竜を映す。この画の力に確信があるからこそのゆったりした演出。
恐竜が見えた際の、登場人物達の反応も良い「恐竜は温血動物だったんだ。」なんだその感想。

移動時のヘリコプター内での細かい描写がいい。大半の観客からしたら恐竜の島もヘリコプターもどっちも未知の世界だから、どっちにもワクワクする。

ハモンドとかいうイカれた気のいい金持ち爺さんいいな。
これからこの爺さんが子供達を喜ばせようと作った夢と狂気の世界で、人が恐竜に喰われまくる。ワクワクするな。

ハモンドが3人に意見を聴く。みんな否定的なのがウケるな。
マルコム曰く、このパークの思想には自然への敬意が欠如している。「できるかどうかに心を奪われて、すべきかどうかは考えなかった」おー、科学者の倫理。
「自然界の摂理によって滅びた恐竜を復活させるのは、自然界へのレイプだ。」

あれ、ティラノサウルスの群れ居ないじゃん。ガイドはここに居るって言ってたのに。なんか不穏。不在による不穏って良いよね。

鎮静剤を打たれたトリケラトプス。1番好きな恐竜に触れることができて感無量の主人公。
先ほどのマルコムのセリフとは裏腹に、主人公はここで温血動物であるトリケラトプスの温かさを感じる。彼らは紛れもなく生きてる。
一方でサトラーはトリケラトプスの不調の原因を探ろうと躊躇なく糞の山を探る。心優しくていいね。

懐かしいなー。昔見てた頃はライトを点けちゃうお姉ちゃんにイライラしてたな。今もイライラするな。

トイレの外装を引っぺがされて食べられちゃうシーンめっちゃ覚えてるわ。
俺にとってジュラシックパークはトイレ中に食われる映画。

すっかり恐竜が嫌いになっちゃって、ブラキオサウルスも嫌がるお姉ちゃんに
「理由もなく嫌っちゃいけないよ」
あー、至言。

「儂はただ幻ではない何かを作りたかった。」
恐竜は幻ではない何かなので、ちゃんと人を食べる。
ハモンドとサトラーが口論した後に、サトラーが料理を一口食べて「美味しい」「一流品だからね」この会話本当に好き。
人の命よりも大事な夢なんてない、このパークは間違ってる。って風にサトラーがハモンドを説得した後のこのセリフ。
間違ってるけど、このパークは本当に素晴らしかった。そんな感じか。

この高圧電線まわりの展開好きだな。
ははは、ざまあ。飛び降りるのを渋ったガキが高圧電流で吹っ飛んでやんの笑

人間の生活空間に恐竜が入り込んでくるのすげー怖くていいな。でもこれがないとフェアじゃないよね。前半では恐竜の生活空間にお邪魔してたんだから。
この、ラプトルがドアノブを回すシーンマジで怖いな。うわ、知性あるじゃん。って感じ。

最終的に主人公は苦手だった子供達に挟まれて島を出る。素朴な成長もあり、と。
島を離れるときのハモンドのなんとも言えない表情がすごい良いな。夕焼けのなかで心地いい疲労感と共に終わる映画は名作。

あー、面白かった。

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