トリチウムの海洋放出はデンジャラスか?
トリチウムなんて海に垂れ流していいの?と心配になる方もたくさんいるのかなとおもい、一方で、核エネルギーという科学技術を使う以上一人ひとりがある程度の科学知識がないと、海洋放出は賛成!反対!という意見すら投じることができません。そして、政治家の皆様を全面的に信頼しておまかせするのはちょっと不安ですよね(個人的には政治家にお任せするのは大分不安です)
そこで、今回のトリチウムの海洋放出を例に、放出していいの?ダメなの?をどうアプローチすると科学的思考力に基づいて判断できているか?というのを少し考えてみたいと思います。
この記事を書いている私自身は、原子核工学で修士号を持っていて、学士では放射線の安全利用について、大学院ではX線の医療や非破壊検査への応用の研究をしていましたが、挫折して研究の道には進まなかったエセ科学者です。
科学的思考力があるとはどういうことか?
科学的思考力があるとは、相手がデータ等に基づいて何らかの科学的な主張をしていることに対して、その主張の真偽を判断できるクリティカルシンキング(判断力)があることだとします。
世界最先端で、オンラインで授業を行うことで有名なミネルバ大学は、思考力として身に着けておくべきものの1つとして、Thinking Critically > Evaluating Claims > #pseudoscience としてこれを上げています。
科学的な判断を行うには
1)「必要な」情報を集める
2)集めた情報に基づき判断を下す
というステップになると思います
1)のポイントは、今回のテーマまたは問題の真偽を判断するには、何をあつめればいいのか?という境界線を引けないと、グーグル検索するにしても、ChatGPTに質問するにしても永遠に調べ続けないといけなくなってしまったりするので、何が分かれば判断できるのか?を抑えるのがとても大切です。これができれば、「知識」自体は昔と違い、まずはChatGPTに質問を投げまくって出てきた回答をGoogle検索で裏を取るということをすれば「知識」としては相当なレベルのものが比較的短時間で手に入ります
2)判断を下す点は、1)で集めた情報の質にかなり左右される部分があるので、バイアス(自分が欲しい情報だけを集めていないか?)という自分がもつ色メガネに意識を向けることが大切です。例えば、この記事を読むときに、まずはそれを書いているのはどんな人か?前述の通り原子力を勉強していて発電所とかを作ろうとしていた人間だから、きっと原子力推進派だろうな、だとするとそういう視点で「意見」「主張」「集めてくるデータ」をレビューしないといけないなというのが判断力のポイントになるとおもいます
トリチウムの海洋放出は危険か?
ニュースでも、ついに放出が開始されました!みたいなことや、中国が日本の海産物の全面輸入禁止と言ってみたり色々なニュースが飛び交います
こういったときに、安全か?そうでないか?を判断できるのは、もしもそれが単純に風評被害だと判断することが仮にできるならば、美味しいお魚を安く買えるという個人的な利益が手に入るかもですが、それ以上に今の時代そもそもそういう不要な風評被害を起こして特定産業に不合理な損失を与えないようにすることがとても大切になってきています
トリチウムの海洋放出は危険か?は「危険」という言葉が曖昧で判断しようがないので?
トリチウムを海洋放出することで、人体への影響はどの程度か?
トリチウムを海洋放出することで、地球にどんな影響を与えらるのか?
この2つをとりあえず、「危険」かどうかの判断にできると考えます
海洋放出の人体への影響
人体への影響は、トリチウムからの放射線の被ばく量で判断できそうです。だとすると
1)摂取「量」x2)摂取した核種の体内残留「期間」x3)摂取した核種の「エネルギー」
1)の摂取量は、海洋放出の場合、小さなお魚がトリチウムを飲み込む、それを大きな魚が食べる、薄めたはずのトリチウムがどんどんのうしゅくされてしまう、その大きな魚を人間が食べるというのが人にとっての主な摂取量をしめ、また主要な摂取経路になると思われます。(そう考えられるので多分中国は全面輸入禁止にすることにした)
この点は、特定の核種(ヨウ素)などは甲状腺に蓄積するため要注意ですが、トリチウムについては、2)の残留期間が体内の水が入れ替わるサイクルで変わるといいますか、調べてみると10日程度だとわかります。だとすると、けっこうなスピードで体外に放出されていくので、一番心配するような1)の食物連鎖でどんどん薄めたトリチウムが濃くなってきて食べてしまうはおきなさそうです。
3)のエネルギーですが、トリチウムはベータ崩壊を起こす核種で平たく言うと電子を出すのですがこの電子が出すエネルギーが被ばくの元になります。
18.6keVというのは、波長の長さで決まるのですが細かい話はおいておいて
kは1000倍ですので、紫外線の100倍くらい強そうですが、良く健康診断で受けるX線のエネルギーに比べると低いと分かります。
また、遮蔽(エネルギーを遮断)するためには、紙1枚でOKというのもみつかります
また、例えば、バナナにはカリウムが含まれこれも一部放射線を出すのですがそれも日々体内に取り込んでいます。体内に日々自然と取り込まれている放射能(放射線を出す物質)は
人の体内には、元々、100ベクレル程度のトリチウムが含まれていて、人の体内に含まれるカリウムの生物影響をトリチウムのそれに換算した場合 、約140万ベクレル相当の影響
そもそも、人間の体の中に日々の生活でどれくらい放射能が存在しているか?しっておくのも「比較検討」には大切ですよね
まとめると
・食物連鎖でどんどんトリチウムが人間が食べる魚に蓄積するということはなさそう
・接種しても比較的短い期間で排出される(人間の体内に入る時は水の形で摂取させる)
・エネルギーとしては健康診断で受けるX線よりは弱い、紫外線よりは強い(但し、紙1枚で遮蔽できてしまう程度)
・人の体内にはもともと100ベクレルくらいのトリチウムが含まれていて、トリチウムの影響に換算すると140万ベクレル相当のカリウムの放射能が普通に体内に存在している(バナナにも結構カリウムの放射性同位体は含まれている) トリチウムもこわいかもだけど、もしそうだとすると大量にバナナ食べてバナナダイエットしたら!?!?
地球環境にどんな影響を与えるのか?
もう一つの観点として、二酸化炭素を大量に排出すると温暖化してしまう、、、みたいな話があるように、今回の海洋放出でトリチウムが地球上に溢れかえってしまって大変なことになる可能性はあるのでしょうか?
調べてみると、
トリチウムというのは宇宙線(成層圏があるおかげでもろ被ばくしないですんでいるだけで)の影響で日々自然界で、地球上で生成されているということが分かります(地球の表面で1秒間あたり、手のひらの面積あたりに1つの中性子が皆さんの体を突き抜けています。これも宇宙線の影響)
日本周辺における自然由来のトリチウムの存在量は約1600兆~約12000兆ベクレルであり 、自然由来のトリチウム生成量は年間約110~670兆ベクレル。
前述の体内へのトリチウムの接種はこれだけ存在するトリチウムの一部が体内に取り込まれていると考えて良いと思います。
とはいえ、水や2重水素に比べれば極微量のトリチウムですが、普通に地球上に存在し、日々生成されているのもまた事実です。
下記が丁寧にまとめてくれています
10^6=100万、10^9=10億、10^12=1兆です。
排出されているトリチウム量(まとめ)
(日本全国での)雨としてふってくる 2.23x10^14/年(223兆)
日本全国の原発から(事故前5年の平均で1年換算量) 3.8x10^14/年(380兆)
福島第一のタンク貯蔵量 8.60x10^14(860兆)
自然由来のトリチウム生成量は年間約110~670兆
日本近辺の存在量(自然由来)約1600兆~約12000兆
単位ベクレル、生態への影響はベクレルでのみ決まらず放射線のもつエネルギーによる(前述のカリウムとトリチウムの関係参照)
ご興味がある方は中国の原発からどれほどトリチウムが排出されているか?調べていただくと、人様の国心配している暇があったら自分の国の川魚の心配でもしたほうが、、、とかわかるかもしれません
まとめ
少し難しかったらすいません。一人でも多くの方が、今回の海洋放出に興味をもって、科学的に判断する姿勢をもって、調べられることは自分で調べ、今どのようなことを私達はしようとしていて、それを代弁者の政治家にどのように委ねているのか?考えるきっかけにしていただけたらと幸いです
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