#009 ペットの健康管理に革命?猫を病気から守る最新飼育ワークフローを解説
【木村ヒデノリのTech Magic #009 】 単に飼育をサポートするだけでなく、ペットの健康管理まで行う「PET TECH」を搭載したペット家電が話題だ。今回紹介する「CAT LINK」と「Pawbo Spring」は、猫に特化した自動トイレと自動給水器で、それぞれが単独でインターネットに接続するIoT製品。猫の生活をモニタリング、アプリに記録し、飼い主は愛猫に異変が起きていないかリアルタイムでチェックできる。単なる便利グッズを超えたペット家電は、多くを語らないネコの健康管理の救世主となるかもしれない。
全自動ネコトイレ「CAT LINK」
ネコ用給水器「Pawbo Spring」
多頭飼いでも個体を認識して管理できる優秀なトイレ
CAT LINKが画期的なのは、トイレ掃除を自動化してくれるだけでなく、複数頭飼っていても個体を判別してトイレの状況を記録してくれることだ。あまりにも体重が近すぎる(±200g程度)と認識できないこともあるようだが、猫が入ったと同時に体重から個体を判別して記録。トイレに入るとアプリを介してリアルタイムで飼い主に通知され、滞在時間も記録してくれるため排泄になんらかの異変があっても気付きやすい。
記録されたデータはグラフ化され、個体別に記録されるため、通院の際に獣医さんと共有もできる。猫の通院では飼い主が主観的に問診に答えてしまうことも多く、気づいていない部分に関しては獣医もフォローできない。だがCAT LINKを使えば毎日自動的に状況を記録してくれるので、下部尿路疾患や腎臓病など猫に多い病気も早期に発見できる可能性が高まる。
個体ごとに頻度や滞在時間を記録してくれる
十分に実用的なオートクリーニング機能
手入れも簡単で、清潔さを保ちやすいところも魅力的だ。都度自動で汚物のみをコンテナへ落としてくれるので、満杯の通知がくるまでほとんどすることがない。13Lの大容量コンテナは、成猫1匹なら1週間は掃除なしで運用できるので本当に楽だ。
他製品と違って専用の袋も用意されているため、購入したビニール袋のサイズが合わずにコンテナ内にこぼれてしまったというようなミスが起こらないのもうれしい。臭いに関しても、正規代理店が勧める「BOXIE CAT」という鉱物系猫砂を使うとほとんど感じない。
BOXIE CATはレビュー以前から筆者の猫トイレで使用していたが、他の砂に比べて圧倒的に消臭力が高い。個人的には微香タイプのグリーンがおすすめだが、無香タイプでも十分な消臭性能がある。鉱物系に多い入れ替え時の埃もほとんどなく、CAT LINKとの組み合わせで猫にも安全な「ほぼ無臭トイレ」が出来上がる。
猫の臭いの原因はほとんどがトイレにあるので、この問題を解決できるのは非常に意義がある。このようにCAT LINKはハイテクなだけではなく、十分に実用的で、飼い主に大きなメリットを与えてくれる製品と言えるだろう。
鉱物系の砂の中でも群を抜いて消臭性能が高い
ユニット下部に入っている重りは従来品より重く、
排泄物をこれまでよりしっかりと下部ユニットへ落としてくれる印象
フィルターで濾過するだけではない画期的な給水ガジェット
一方、Pawbo Springも興味深い製品だ。今まで様々な給水器はあったものの「飲水量を記録」してくれるものはなかった。しかもCAT LINKと同様、個体を認識して管理してくれるというすぐれものだ。
管理には専用のタグを使用し、首輪などにつけることで個体を判別する。記録された飲水量は1日あたりの理想の量と比較できるため、あまり水を飲んでいない、飲み過ぎている、など異常があればすぐに気付くことができる。フィルターはやや小さい感もあるが、他製品はフィルターから循環する水が汚れてしまうことも多いので、最小限のフィルターサイズで濾過していくのは効率がよい。
水量も3Lと通常品の2倍弱入れられるので水が汚れにくく安心できる。自動給水器は餌のカスが入ったり、唾液が入ったりと、意外に汚れやすい。水量の多さから洗う頻度が少なくて済むのは助かるし、洗う際に電源に干渉することなく、洗いたいパーツだけ取り外せるのも好感がもてる仕様だ。
いつどのくらいの量飲んだのかひと目でわかるように記録してくれる
給水や洗浄の際はユニットを丸ごと取り外せるのが便利だ
データだけでなく飲んでいる動画まで自動撮影
さらに専用のタグをつけた猫が水を飲みにいくと、飲み口のカメラが自動で起動し録画してくれるのも面白い。筆者は今まで給餌器についている見守りカメラで長期外出時のモニタリングをしていたが、音声で呼んでも来ないことが多く、結局少しご飯を出して食べにきた姿で安否確認をするような利用法だった。
対してPawbo Springは飲みに来たタイミングで随時録画してくれるため、飼い主は録画された動画と回数で異常がないか確認でき効率がいい。猫側のタイミングで記録ができるという仕様はCAT LINKも含め実用的で健康管理にとても役立つと感じた。
専用タグ「iPuppyGo」はパッケージに一つ付属するが、
多頭飼いの場合は追加購入できる
二つの組み合わせで実現する健康管理ワークフロー
この二つを組み合わせることで、猫の腎臓系の疾患の管理は劇的にしやすくなる。筆者の経験からも言えることだが、一体いつから疾患の兆候が出ていたかは本当にわかりづらい。毎日トイレの掃除をしていても、どのくらいの量飲んで、正常に排泄しているかは感覚でしか把握できないからだ。
こうした悩みにこれらの製品はうってつけで、組み合わせることで一気に問題が解決する。Pawbo Springが知らせてくれる飲水量に対して、CAT LINKで記録されたトイレの回数が少なかったり、平均と比べて明らかに飲水量が減ったり、逆に増えたりした時はすぐにかかりつけの病院に相談する、といった具合だ。トイレの頻度が減った場合でも、環境や体調に問題がないかすぐにチェックができる。
自動化の便利さは手間が減るところだが、異常に気付くのが遅れてしまう欠点もある。CAT LINKやPawbo Springならこうした欠点を解消しながら飼い主の手間も減らしてくれるので安心して効率化ができるわけだ。
価格や大きさはデメリットとなるか?
優れた製品ではあるが、読者はやはり価格や大きさが気になるかもしれない。CAT LINK・Pawbo Spring双方共に普通のトイレや水飲みトレイに比べればかなり大きいし価格も段違いだ。また、両方ともどこかから電源を取らなければならない制約もある。こうしたことからワンルームのような限られたスペースで猫と生活する人には向かないこともあるだろう。
ただし、スペースや電源の問題があるからといって見過ごせないのはトイレや給餌周りの清潔さだ。臭いなど飼い主側への影響も大きいが、猫は綺麗好きなのでトイレが汚いと、使わなくなることがある。ご飯や水も同様で新鮮でないと食べなくなってしまう。こうしたことが原因で何らかの疾患が現れることも少なくないため、猫がストレスなくすごせる状態を保つことが重要だ。したがって手軽にこうした状態を保てる自動化製品は十分に検討の余地がある。
特にCAT LINKは¥59,900(税込)と高額に思うかもしれないが、従来の自動トイレが10万円を超えてくることを考えれば、アプリの記録にも対応してこの価格は非常にリーズナブルだ。給水器に関しても従来なかった各種モニタリング機能が備わっていると考えれば妥当な金額だろう。
同様の機能がついている給餌器よりも実用的で使いやすい印象だったので、給水のみを目的とする他の給水器との価格比較はナンセンスだ。双方とも初期投資としては大きいが、ただのトイレや給水器と考えるのではなく、通院などの医療費を抑えられ、愛猫の健康を保てると考えればむしろメリットの方が大きい価格なのではないだろうか。
今回のレビューを通して昨今のPET TECHの進化にとても驚いた。特にCAT LINKとPawbo Springの組み合わせは、自ら伝えるすべを持たない猫と飼い主のコミュニケーションを高め、健康維持に大きな効果をもたらす「飼育の必須アイテム」になると感じた。
私事で恐縮だが、このレビュー期間中に8年間一緒にすごした猫が亡くなった。原因は慢性腎不全だ。以前から疾患に関しては病院で指摘されており、通院や点滴で元気に過ごしてはいたが、容体が急変し看取ることとなった。猫の腎臓疾患は特に原因がないとも言われており、気付きにくさも指摘されている。もしこうしたテクノロジーがもっと早く世に出ていれば筆者の猫も救われたかもしれないと考えると悔やまれるが、この記事を通して読者にPET TECHの可能性が伝われば嬉しい。ぜひ愛猫の健康管理に活用してもらえたらと思う。
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