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#025 往年のイヤホンが最新ワイヤレスに変貌?外音取り込みにも対応したBluetoothアダプター Shure RMCE-TW1
【木村ヒデノリのTech Magic #025 】一部の機能が自社の基準に満たないとして販売が中止されていた待望の製品が再び市場に戻った。10月1日から販売が再開されたRMCE-TW1トゥルーワイヤレス・セキュアフィット・アダプター(以下、TW1)は、プロにも定評のあるShure社の高遮音性イヤホンを耳にかける形で装着できるようにする製品だ。高品質な同社のイヤホンを、ワイヤレスに変換できるということで期待の高い製品だが、音質面では意外な落とし穴もあった。メリット・デメリット含め紹介したいと思う。
最長8時間の連続再生も実現したTW1、激しい動きでもズレにくい形状
SE215からハイエンドのSE846までこの方式のイヤホンは
全てRMCE-TW1でワイヤレス化できる
往年の名機がワイヤレス化できる衝撃
往年というにはやや新しいかもしれないが、イヤホンとしてはかなりのロングセラーなのではないだろうか。2013年に発売され今でもプロに愛用されるSE846はシュアの代表的なイヤホンだ。Shureからは他にもSE215、SE425、SE535など価格帯と機能性の違うイヤホンがリリースされている。TW1を使えばユーザーはこれらの中から好きなものを選んでワイヤレス化できるというわけだ。
通常のイヤホンならケーブルは本体と一体型だが、Shure製品はケーブルだけ取り外して交換できるという特徴がある。これがTW1を含めた様々なオプションの提供を可能にしているわけだが、なかなか珍しいコンセプトでもある。確かに考えてみればShureのイヤホンは2万円代から8万円代と決して安くはない。一度買ったら買い替えずに長く使いたいというニーズが高いので、テクノロジー部分の恩恵を後から享受できるのはユーザー体験を底上げする仕様といえるだろう。
製品寿命の違うイヤホン部分とケーブル部分を分けて設計したことで、
7年前に開発された製品に今でもこうした新しい機能を追加できる。
共通コネクタでTW1を接続する形式、重量はやや重め
バッテリー駆動は8時間と長時間を実現している
ケースは充電機能も備えており、やや大きめだが蓄電もできる
ケースの残量は裏面のボタンを押すと3段階で確認が可能、コネクタはUSB-C
Bluetooth 5.0だから音質が良いわけではない
ワイヤレスイヤホンの売り文句に「Bluetooth 5.0」が出されているケースを散見するが、バージョンと音質が必ずしも関係しているわけではないので整理しておきたい。まず、Bluetooth 4.0、5.0の主な違いは「通信範囲」と「転送速度」だ。通信範囲は約4倍、転送速度は約2倍早くなっている。しかしこれはあくまで技術的な話で、音質はこれとは別の「コーデック」、つまり圧縮したり展開したりする方式が重要になってくる。
現在音声のコーデック一般的なものは3つ、SBC、AAC、aptXとなっている。このうちSBCは古いもので、現在音質を求めるユーザーからは敬遠されているものだ。残りの2つはそれぞれApple製品、Android製品で主に使われているもので、aptXの方はさらに細分化されたものがある。下記の表で確認して欲しい。
ワイヤレス用の音声コーデックで一般的なものは表の通り
このうちApple製品はAACが最高音質となっており、
ハイレゾ再生には別途ハードウェアが必要 (※2020年10月現在)
このようにワイヤレスの圧縮形式には様々なものがあるが、iPhoneなどで聴く場合にはAACが最高音質(aptXは非対応)となっており、注意が必要だ。つまり、ハイエンドのSE846(実勢価格¥85,000〜 ※2020年10月時点)をTW1でワイヤレス化してもかなりオーバースペックとなってしまうわけだ。加えてTW1自体もaptX HDとaptX LLには対応していないため、ハイレゾ再生やゲーム用には使えない。結論を言えば、TW1でワイヤレス化するのに適しているのはSE215、もしくはすでにTW1とセットで売られているAONIC215が最もコスパが高いだろう。
シュア製品をワイヤレス化しても高品質な音は聴けないのか
前述した通りだが、高音質で聴けないのかというとそうでもない。ShureからはTW1の他にBT2というBluetoothモジュールが発売されている。SE846などと同梱でも販売されている製品だが、こちらはaptX HD、aptX LLに対応しているのだ。したがって、BT2を使えばSE846などハイエンド製品でハイレゾ音質を楽しむことが可能になる。
ただし、あくまで「技術的に」ということであって、高音質だと言えるほどの違いがあるかというとやや疑問である。実際に筆者はaptX HD環境で48KHz/24bitの音源を再生してみたが、明らかな違いは感じなかった。一番低品質なSBCと比較しても「音像がややはっきりしたかな」程度で、「これはもう元の環境に戻れない!」というほどの差ではなかった。音質の感じ方には個人差があると思うが、実際に波形を記録した結果、さほど差がないといった記事も散見されたため、一考の余地はあるのではないだろうか。
ケーブル接続で、ややかさばるものの、音質ではTW1より上のBT2
選択肢としては良いものの今後に期待したい製品
結局SE846などハイエンドの製品をTW1でワイヤレス化してもあまりコスパが良くない。それであれば他社のハイレゾ対応ワイヤレスイヤホンを買う方がいいだろう。ただ、すでにSE215を持っている、あるいはShureの音質が好きで、スポーツなど動き回る用途に使いたいという場合はおすすめだ。俗に”シュアがけ”と呼ばれる独特の装着法の安定度はかなり高く、ハードな運動にも耐えつつ良い音を届けてくれるだろう。
また、TW1で実現される外音取り込みモードも良い。アプリで操作すると外音の取り込みレベルも調整でき、密閉型なのに耳につけたまま楽に会話ができる。こういった機能を後付けできるのもメリットと言えるだろう。
Shureの密閉型イヤホンはAirPods Proのノイズキャンセルと
同等程度の消音性能があるため、静音性という点では良かったが
屋外では音が聞こえづらい難点があった
不満というほどではなかったが、やはりユーザーが期待していたのはハイエンド製品がワイヤレスで使えるようになる、というものだったはずだ。業務用でなくても高音質でのワイヤレス伝送は確立されつつあるため、次世代製品(TW2?)にはハイレゾ対応を期待したい。
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