「楡家の人びと」に書皮をかける
書皮とは、書店で文庫本や新書を買うと「カバーおかけしますか?」と聞かれる書籍にかける紙のことです。大きな書店ではオリジナルの書皮が用意されていて、「あ、紀伊國屋で買ったんだな。」とか「丸善のカバーだな。」とかがわかるものです。近年はセルフレジなどが普及して、書皮は自由にお取りくださいと別の場所に置いてあることがあります。
本を自宅で読むぶんには買ったままの状態でも構いませんが、いざ外に持ち出すと、なんだか居心地の悪い気持ちになります。
それは以下の理由によるものかなと考えました。
支払済証明:
購入した商品というものは第三者から見てもそれとわかる姿をしています。プライスタグが外される、支払済のシールやスタンプ、包装、袋に入れられる、などです。書店の名称や特徴ある図柄でラッピングされる書皮は清算された品物であるという証明です。
●エレガントな外読書のために:
公共交通機関の車内や公共の場所、カフェや公園など自宅以外で読書をするとき、どんな本を読んでいるかを他人に知られたくありません。他人の目を気にせずに読むことができます。
●書籍の保護:
上製本も並製本も本体がジャケット(カバー)で、保護されています。しかしジャケットの表面も大切にしたいという観点からさらにそれを包む書皮が必要とされます。
またジャケットは本体を横方向だけで包んでいるので、保持の仕方が甘いとジャケットを残したまま本体が下方に滑り落ちる可能性もあります。書皮は書籍の前後表紙を3方向から包み、本体、ジャケットを一体化するため本体だけが滑り落ちることはありません。
●自己表現:
構造がカンタンで専門的な道具や技術を必要とせず、異素材による接着や縫合などもないため、素材の選択肢が広く、手軽にオリジナルを作ることができます。
●美しい本棚のために:
書籍の表紙やカバーは販売促進のための差別化をしています。ときには店頭での見栄えが優先されることもあります。これは個人のインテリアと相容れません。本来なら装丁をしなおし、統一した外観の書籍として保管されるべきですが、これには時間も費用もかかるため、書皮でこれの代用することができます。書店を模倣した書棚を自宅に作りたいのなら別ですが、少なくとも自分の意思で室内や家具を選んでいる人であれば、書棚の中も同様のテイストにしたいと思うことでしょう。
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今回は「楡家の人びと」北杜夫 新潮文庫 の表紙カバーをスキャンし型ガラスのようなエフェクトをかけたものをコピー用紙にプリントして書皮としました。
遠目には普通のブックカバーです。
よくよく見ると(そんなに近づいて見る人はいないと思いますが)、「あれっ?目が悪くなったのかなあ。」と思わせる仕掛けです。
よく知られた文学作品が、自分だけの装丁(単なる書皮なのですが)を纏うことで、愛着の湧くものとなります。