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日本語教員の国家資格化の背景と流れ

日本語学習者が年々増加をしていることは、日本人にとってはとても喜ばしいことだが、手ばたきで喜んでいられない日本語教育の現状もある。その辺のことについておさらいしておきたいと思う。

海外での日本語学習者について

国際交流基金(外務省所轄の独立行政法人)によると、海外で日本語を学習している人は、380万人(2021年度調査)いて、中国、インドネシア、韓国、オーストラリア、タイの順に多い。東アジアと東南アジアで80%になり、50%が中等教育(中学高校)での学習者になっているが、中国では大学での学習者が一番多くなっている。学習目的別だと、⒈日本語そのものへの興味→⒉アニメ・マンガ等への関心→⒊歴史・文学への興味の順になっている。

私はアニメやマンガの影響が一番大きいのかと思っていたが、日本語そのものへの興味が上回っているのは少し意外だった。

日本国内での日本語学習者と教育事情について

日本国内で日本語を学んでいる人は22万人いて、地域別だと中国ベトナムネパール出身者の順に多い。22万人の学習者に対し、教員は4万4千人しかいない。4万4千人の教員のうち、常勤は15%、非常勤が36%で、ボランティアで日本語を教えているという人が49%にもなり、日本での日本語教育はボランティア頼りになっている現状が見えてくる。

そもそも日本語教育がまともに成り立っているかというと現実は厳しく、日本語教員の不足は著しい。

日本では、海外からの外国人の子供たちにも日本の義務教育を認め、「特別の教育課程」を導入するなど法整備は進んでいるものの、日本語が分からないことで、学校の勉強についていけなかったり、クラスの友だちに馴染めなかったりする生徒が少なくない現状があったりと、日本語教員や支援者が不足しているなど現場の課題の解決が遅れている。

現状はとにかく厳しい。日本語教育はボランティアへの依存度が高く、改めて日本語を教える人になりたいと考える人は決して多くない。それに対して、日本語学習者は増加の一途をたどっており、特に日本語教育が必要な児童生徒数は、令和5年度6万9千人以上になり、5年前の平成24年の約3万3千人に対して2倍以上になっている。

文部科学省の調査より

日本語教育が必要な児童のうち、ポルトガル語と中国語を母語とする生徒がともに20%強となっていて、スペイン語やフィリピノ語話者も少なくない。また、海外から帰国して日本語を学ぶ必要のある日本人児童も20%近くいて、こちらも看過できない数字となっている。

2019年、日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)が施行される

このように日本語教育事情には厳しい現実があり、日本の教育や文化の維持と発展のためにも、解決が急がれている。そのような背景があり、2019年に日本語教育の推進に関する法律(日本語教育推進法)が施行された。

この日本語教育推進法の目的は、「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与すること」となっていて、「日本語教育の水準の維持向上」と「日本語教育を受ける機会の最大限の確保」を謳っている。

この謳い文句は法律的な建前としては素晴らしいものだが、この法律として特筆すべきことは、この謳い文句を実現するために、国にも地方自治体にも、具体的な施策の策定や実施をする責務があるとしているところだ。さらに、会社などの事業主にも、日本語教育学習の機会を提供し支援する責務があるとしたのである。つまり、国・地方自治体・事業主は外国人を受け入れっぱなしにしてはならず、外国人に日本語が使えるようになってもらわなければダメだぞということになったのだ。

2024年4月に認定日本語教育機関や登録日本語教員の制度が始まる

そして、日本語教育推進法を受けて、2023年5月に「日本語教育機関認定法」が成立し、2024年4月から、認定日本語教育機関や登録日本語教員の制度が始まることになった。

これにより日本語教育の所轄は、文化庁から胴元の文部科学省に移り、まさに日本上げて日本語教育を盛り上げていこうという体制が築かれようとしているのである。

具体的には、日本語教育機関を文部科学大臣が認定することになり、あわせて認定日本語教育機関で教えるための国家資格も用意されることになった。それが「登録日本語教員」というわけだ。そして、登録日本語教員になるには、登録日本語教員試験に合格をして、実践研修(教育実習)を受けなければならないということになった。

ちなみに、これから文部科学大臣に認定される日本語教育機関ですでに教鞭をとられている先生方には、2029年3月31日までに「登録日本語教員」を取得してくれればいいという5年間の経過措置が認められている。

この流れが日本語教員の地位向上につながることになり、きっと日本語教員も増えることだろう。そして、一人でも多くの人が安心して日本語を学べる環境が一日でも早く出来ていくことを心から願っている。


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