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「かさじぞう」思いやりと優しさを中心にした世界観で世の中を見る

「かさじぞう」という昔話のあらすじは、ざっとこんな感じです。


昔々、貧しい老夫婦が暮らしていました。年の瀬が近づき、お正月の準備をするお金もなく困っていました。そこでおじいさんは、手作りの笠を売りに町へ出かけますが、一日中歩き回っても笠は売れませんでした。

がっかりして帰る途中、大雪の中、道端に立っている6体の地蔵さまが目に留まりました。地蔵さまの頭には雪が積もり、寒そうに見えました。そこでおじいさんは、自分の売り物である笠を地蔵さまたちに被せてあげます。しかし、笠は5つしかなく、最後の1体には自分の手ぬぐいを頭に巻いてあげました。

家に戻ると、おばあさんにその出来事を話し、二人で「良いことをした」と喜びました。

その夜、外から不思議な音が聞こえ、老夫婦が戸を開けると、家の前に米や餅、金銀などのたくさんの財宝が置かれていました。それは、地蔵さまたちが恩返しとして持ってきてくれたものだったのです。老夫婦は驚きつつも感謝し、お正月を幸せに迎えることができました。


私も子供のころ、マンガ日本昔話で見たことがあって、今でも記憶に残っているお話です。

「かさじぞう」のおじいさんのように、厳しい状況にあっても、思いやりと優しさをもって行動ができるということは、なかなか難しいことだと思います。

「かさじぞう」は、金銭的に苦しくても、思いやりと優しさを忘れないようにすることを伝えるものですが、ともすると今世の中は、思いやりとか優しさとか悠長なことを言う暇があったら、まずは金というような風潮があり、お金を中心に社会が回っています。

確かに、お金はなくてはならないものだけれども、お金(経済)を中心にして世の中を回さないとならない本当の理由を、私は子供のころ、誰にも教えてもらったことがありません。

経済社会だから仕方ないで片づけることもできるかもしれませんが、少し乱暴な答えのような気がします。


大人になって、戦争にもお金の存在が見え隠れすることを知ったのですが、お金に取り憑かれた者が戦争を起こすという本質的な文脈で語る歴史書があったら読みたいと思っています。表面的な権力争いの文脈で語られる歴史の本が多く、歴史上の人物の本質論に迫る本に私はまだほとんど出会っていません。

日本には経済を回すことを第一に考える政治家が多いようですが、経済を回さないといけない理由を、思いやりと優しさの大切さをわかりやすく教えてくれる「かさじぞう」のように、子どもたちにもわかるように説明してほしいと思うことがしばしばあります。

すべて大人の事情ってやつで片付けていいいお話ではないと思います。

いちおう私も大人のなかの一人だから、政治家のような言葉使いをすると、なぜ日本は資本主義社会をベースに社会を組み立てるようになったかは、明治維新の前後までさかのぼる必要があることくらいまではわかります。

そして、日本の近代化の背景には、欧米列強に追いつけ追いこせという、欧米列強へのあこがれと強迫観念があったと学んだ記憶はあります。しかし、日本が資本主義社会の仲間入りすることは、当時としてはとても不利な状況であったにもかかわらず、なぜ日本が資本主義社会に突入したのか、その理由を学んだことはありませんでした。

西洋の方が資本主義社会の歴史は古く、資本主義に懐疑的である側面もありながら、資本主義を発展させてきた経緯がありますが、日本は欧米式の資本主義をただ鵜吞みにするだけで、何らの懐疑心を持たずに、欧米の真似事しかしてこなかったとすれば、日本がなぜ資本主義を採用したのか、明確な答えを求めることは誰にもできないのかもしれません。

近代化以降、いつも世の中を動かしてきたのは、思いやりや優しさではなく、欧米式のイデオロギーでした。戦争もそうでした。日本でも共産主義運動が過熱した時期がありましたが、やがて日本は高度経済成長を達成します。その頃国際社会で、日本人はお金にとりつかれた動物のようだと言われるようになり、「エコノミックアニマル」と蔑称されましたが、そのこととは裏腹に「勝てば官軍」で、日本の資本主義社会は盤石なものとなりました。

だから、お金つまり経済を中心に社会を回していくのが、いい社会作りになるという経験則にもとづく理屈もわかります。でも、言うまでもないことですが、お金は社会を回す潤滑油のようなもので、世の中が追究すべき目的ではありません。

あくまでも政治の目的はいい社会作りだと思います。経済の活性化はそのための一手段に過ぎないはずです。そこを、経済を目的化している政治家もあるのではないでしょうか。

私が個人的に気になっているのは、今の世の中が、思いやりと優しさをどれだけ大切にしているかです。「かさじぞう」は思いやりと優しさを中心とした世界観の物語ですが、「かさじぞう」のおじいさんのような人は、今の日本にもたくさんいると思います。そういう思いやりと優しさを持った人が政治家になっているのかなど、思いやりと優しさを中心とした世界観で、今の日本を見てもいいのではないかと思ったりもします。

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日出丸
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