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リタイアメントインカムを最大限に活用するための計画と準備ー野尻哲史氏ー週刊東洋経済

 週刊東洋経済2024/8/31号は、『お金の終活』です。その中で、合同会社フィンウェル研究所の野尻哲史氏の、「資産寿命を延ばす賢い取り崩し法」(p40-)は大変興味深い記事でした。

 この記事では、老後の資産活用とお金の管理についての基本的な考え方を詳しく解説しています。老後の生活に備えて、どのように資産を使い、運用するべきか、またどのような準備が必要かを理解することは非常に重要です。

 老後の資産管理は多くの人にとって複雑で不安の多いテーマですが、この記事ではその不安を解消するための具体的なアドバイスと戦略を紹介していますした。以下に、主なポイントをさらに詳細に説明しながら、老後の資産管理の全体像を考察したいと思います。

1. 老後資金の不安とその対策

 老後における資金管理の最大の課題は、どれだけ長く生きるか、そしてその期間中にどれだけのお金が必要になるかという不確実性です。現役時代には、毎月一定の収入があり、その中から生活費をまかない、残りを貯蓄や資産形成に充てることができます。しかし、退職後は定期的な勤労収入がなくなるため、年金収入とこれまでに蓄えてきた資産収入に頼ることになります。このような収入源を総称して「リタイアメントインカム」と呼びます。

 リタイアメントインカムの構成要素としては、勤労収入、年金収入、資産収入の3つが挙げられます。退職後に安心して暮らすためには、このリタイアメントインカムをいかに長持ちさせるかが重要なポイントとなります。

 例えば、生活費を削減することは当然ながら重要ですが、それ以上に健康状態が許す限り長く働いて勤労収入を得ることも大切です。これは、単に収入を増やすだけでなく、社会とのつながりを維持し、精神的な充実感を得ることにもつながります。
 また、年金受給の開始時期を遅らせることで、受給額を増やすという戦略も考えられます。これは、より長い期間年金を積み立てることによって、一回あたりの受給額が増えるため、結果的に老後の生活費の一部をより多く賄えるようになるからです。
 資産収入については、持っている資産をどう運用し、どのように取り崩していくかが大きなテーマとなります。資産運用の方法や取り崩し方次第で、同じ資産でもその寿命は大きく変わってきます。資産を効率的に運用しながら少しずつ取り崩していくことで、資産の寿命を延ばし、長期間にわたって安定した収入を確保することが可能になります。

2. 資産の使い方と運用方法

 老後の生活を豊かに過ごすためには、資産の使い方と運用方法をしっかりと考える必要があります。退職後の資産管理においては、資産の寿命をできるだけ延ばすことが大きな目標となります。この記事では、資産の寿命を延ばすための具体的な方法として、「使いながら運用する」という考え方が推奨されています。

 「使いながら運用する」とは、資産を完全に使い切ってしまうのではなく、運用しながら少しずつ取り崩していくことで、資産を長持ちさせる方法です。これには、資産をどのように取り崩すかが重要なポイントとなります。取り崩し方には大きく分けて「定額引き出し」と「定率引き出し」の2つの方法があります。

 「定額引き出し」とは、毎年一定の金額を引き出す方法です。この方法は、計画が立てやすく、毎月の生活費が安定するという利点があります。しかし、資産が減少してしまうリスクが高く、長期的には資産を使い切ってしまう可能性があります。
 一方、「定率引き出し」は、資産の一定割合を毎年引き出す方法です。この方法では、資産の残高に応じて引き出す金額が変動するため、資産の減少速度が緩やかになります。特に、運用成果が良い場合には、資産の減少を抑えながら安定した引き出しを続けることができます。しかし、運用成績によって引き出し額が変動するため、予測が難しい一面もあります。

 また、資産運用の際には、市場の変動や運用成果の不確実性を考慮する必要があります。特に「収益率配列のリスク」に注意が必要で、これは資産運用の初期に運用成績が悪いと、後半に成績が良くても元本の回復が難しくなるというリスクです。こうしたリスクを避けるためには、資産の取り崩し方法を柔軟に見直しながら運用を続けることが求められます。例えば、運用成績が悪化した場合には、一時的に引き出し額を減らすなどの対応が考えられます。

 資産の取り崩し方については、前半の15年程度は資産を運用しながら取り崩す「使いながら運用する時代」とし、その後は資産を取り崩す「使うだけの時代」に入ると良いとされています。このように段階的に資産を使いながら運用することで、資産の寿命を延ばし、長期的に安定した収入を確保することが可能です。

3. 計画と準備の重要性

 老後の資産管理において最も重要なのは、長期的な視野で計画を立て、早い段階から準備を始めることです。老後資金の計画を立てる際には、「何歳まで生きるかわからない」「どれくらいの生活費が必要かわからない」といった不確実性にどう対処するかが重要です。この記事では、老後資金の計画は「予測」ではなく「計画」が重要であると強調されています。つまり、未来のことを正確に予測するのは不可能であるため、むしろ最悪のケースを想定して計画を立てるべきだという考え方です。

 具体的には、「100歳まで生きることを前提にした計画」を立てることが推奨されています。これは、実際に100歳まで生きる人は少ないものの、その分、計画が保守的になり、安全な資産運用が可能になるという考え方です。また、毎年の生活費についても、年金以外に必要な費用を概算で設定し、その費用をどう賄っていくかを考えることが重要です。例えば、「年金以外に毎月10万円で生活する」といった具体的な目標を設定し、それに基づいて資産の取り崩し計画を立てることが求められます。

 また、資産運用の計画を立てる際には、早い段階から準備を始めることが大切です。特に40代、50代のうちから将来のライフプランを考え、資産の形成と活用について具体的な戦略を練っておくことが推奨されます。これにより、退職後に資産を有効に活用し、豊かな老後生活を送ることが可能になります。資産を効率的に運用しながら少しずつ取り崩していくことで、資産の寿命を延ばし、長期間にわたって安定した収入を確保することが可能になります。

 さらに、老後のライフプランニングにおいては、資産形成だけでなく、資産活用や資産の取り崩しについても計画的に考えることが重要です。資産の取り崩し方によっては、計画していた以上に資産が早く減少してしまう可能性もあるため、柔軟な対応が求められます。例えば、運用成績が思わしくない場合には、引き出し額を調整するなどして、資産を長持ちさせる工夫が必要です。

 最後に、この記事では、老後の資産管理における重要な考え方と具体的なアプローチが詳しく説明されており、老後の生活に対する不安を軽減し、安心して老後を迎えるための知識とヒントを提供しています。資産運用の計画をしっかりと立て、柔軟に対応することで、予期しない事態にも対処できるようになるでしょう。これからの人生設計を考える上で、大変参考になる内容です。老後に備えた計画と準備を早い段階で始め、安心して豊かな老後生活を送るための道筋を立てることが求められています。


老後の資産活用について企業人事としてのサポート

 この記事で紹介されている老後の資産活用とお金の管理の方法は、個人の生活設計に大きな影響を与える重要なテーマです。特に人事の視点から考えると、従業員一人ひとりが安心して長く働き続けられるようにサポートすることが、企業の持続可能な成長にとっても欠かせない要素となります。ここでは、人事部門として考慮すべきいくつかの観点について、考察してみます。

1. 従業員のキャリアとライフプランニングの支援

 人事部門は、従業員が長期的なキャリアプランとライフプランを考える際に、そのサポートを積極的に行うべきです。老後資金の不安や準備は、多くの従業員にとって大きな課題であり、そのための教育やリソースの提供は組織にとっても価値があります。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • ファイナンシャルプランニングの支援
     従業員が自身のライフステージに合わせて適切な資産形成を行えるよう、ファイナンシャルプランナーを招いてのセミナーやワークショップを開催することが有効です。これにより、従業員は自身の収支バランスを見直し、長期的な資産運用の計画を立てることができます。
     また、リタイアメントプランニングに関する情報提供も重要で、これを通じて従業員が退職後の生活を具体的にイメージし、必要な準備を進められるようサポートすることが求められます。

  • 確定拠出年金制度の活用促進
     従業員の退職後の生活資金を支援するために、確定拠出年金制度(401kやiDeCoなど)の活用を促進する取り組みも考えられます。この制度を通じて、従業員は自身の将来に向けた貯蓄を計画的に進めることができるため、企業としてもこの制度の利用を奨励し、従業員に対して積極的な教育を行うことが重要です。

  • 退職金制度の見直し
     従業員が安心して退職後の生活を迎えられるよう、退職金制度の見直しも検討するべきです。例えば、退職金の支給方法を選択制にすることで、従業員が自身のライフプランに合わせた最適な選択ができるようにすることが考えられます。

2. 健康経営と長く働く環境の整備

 退職後の資金不安を軽減するためには、従業員が可能な限り長く働き続けられる環境を整えることが重要です。ここでの「長く働く」とは、年齢に関係なく、健康で生産的な状態で働けることを意味します。健康経営の推進は、そのための基本的な取り組みの一つです。

  • 健康診断の充実
     定期的な健康診断を実施し、従業員の健康状態を把握することは、早期の健康管理と病気の予防につながります。特に中高年層の従業員には、通常の健康診断に加えて、がん検診や生活習慣病の予防プログラムを提供することが考えられます。

  • メンタルヘルスケア
     心の健康も身体の健康と同様に重要です。職場におけるストレス管理やメンタルヘルスのサポートを強化するために、カウンセリングサービスの提供や、職場のストレス要因を減少させるための取り組みを行うことが必要です。メンタルヘルスのケアが充実していれば、従業員の離職率の低下や生産性の向上にも寄与します。

  • フィットネスプログラムの提供
     オフィス内にフィットネスルームを設置したり、スポーツクラブと提携して従業員が割引価格で利用できるようにするなど、従業員が積極的に身体を動かすことができる環境を整えることも重要です。また、オンラインで参加できるフィットネスプログラムを提供することで、リモートワーク中の従業員も健康維持に努めることができます。

  • 定年延長や再雇用制度の整備
     従業員が希望する限り働き続けられる環境を提供するために、定年延長や再雇用制度の整備を進めることも有効です。例えば、65歳以上でも健康状態が良好で、働きたい意欲がある従業員に対して、柔軟な働き方を提供することで、退職後の生活資金に対する不安を軽減することができます。これにより、企業は貴重な人材を長く活用し、組織の知識や経験を継承することが可能になります。

3. 多様な働き方の推進

 この記事で言及されているように、退職後の資産活用の一環として、働き続けることの重要性が強調されています。ここで、人事部門としては、多様な働き方を推進することで、従業員が長く働き続けられるようサポートすることが求められます。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • フレックスタイム制やリモートワークの導入
     個々のライフステージに合わせた柔軟な働き方を提供することは、従業員が仕事と生活のバランスを保ちながら長期的に働き続けられるようにするために重要です。フレックスタイム制やリモートワークの導入により、育児や介護などの家庭の事情を抱える従業員でも、自分のペースで働くことができる環境を整えることができます。

  • 時短勤務やシニア雇用の促進
     退職後も働き続けることを希望する従業員に対して、時短勤務やシニア雇用を促進することも重要です。例えば、週に数日だけ働く勤務形態を提供することで、従業員が無理なく働き続けることができます。また、シニア世代の従業員に対しては、その経験を活かしたコンサルティングやメンタリングの役割を担ってもらうことも考えられます。

  • 副業や兼業の推進
     副業を許可し、推進することにより、従業員は自分のスキルを活かしつつ、追加の収入を得ることができます。副業を通じて得られる収入は、退職後の資産形成に直接寄与するため、長期的なライフプランニングの一環として非常に有益です。さらに、副業経験を通じて得られる新たなスキルや知識は、本業にも好影響を与える可能性があり、企業全体の成長にも寄与します。

4. 財務教育とリテラシーの向上

 資産運用や老後資金の管理に関する知識は、従業員の財務的な健康に直結します。人事部門は、従業員が金融リテラシーを向上させるための教育プログラムを提供することが重要です。以下のような取り組みを行うことで、従業員の財務リテラシーを向上させることができます。

  • 投資の基本知識の提供
     投資に関する基本的な知識を学ぶ機会を提供することで、従業員は自分で資産を運用する際のリスクとリターンを理解し、より計画的に資産を形成することができます。例えば、初心者向けの投資セミナーやワークショップを定期的に開催し、従業員が気軽に参加できるようにすることが考えられます。

  • リスク管理の教育
     資産運用にはリスクが伴うため、そのリスクを適切に管理する方法についての教育も重要です。リスク管理に関する知識を深めることで、従業員は予期しない市場変動に対しても冷静に対応できるようになります。これには、分散投資の重要性やリスク許容度の考え方などを学ぶことが含まれます。

  • 年金制度の仕組みの理解促進
     公的年金制度や企業年金制度の仕組みを理解することは、老後資金の計画を立てる上で非常に重要です。人事部門は、これらの制度について分かりやすく説明し、従業員が自分の将来の年金受給額を予測しやすくするためのツールやリソースを提供することが求められます。

  • オンラインリソースの提供
     多忙な従業員でも学びやすいように、オンラインでアクセス可能な教育リソースを提供することも効果的です。これには、ウェビナー、eラーニングコース、金融リテラシーに関する記事や動画のライブラリなどが含まれます。

5. 年金制度と福利厚生の見直し

 企業の年金制度や福利厚生の充実も、従業員の老後資金の準備に大きく寄与します。人事部門は、これらの制度の見直しを定期的に行い、従業員にとって最も効果的なサポートを提供することが重要です。

  • 年金制度の最適化
     企業の年金制度を定期的に見直し、従業員のニーズに応じた最適なプランを提供することが求められます。例えば、確定給付型年金から確定拠出型年金への移行を検討することで、企業の負担を抑えつつも従業員の老後資金準備をサポートすることができます。また、従業員が年金制度をより理解しやすいように、定期的な説明会を開催したり、年金シミュレーションツールを提供することも有効です。

  • 福利厚生の充実
     健康保険や生命保険、障害保険などの福利厚生を充実させることで、従業員の安心感を高めることができます。例えば、健康保険の適用範囲を広げたり、家族も対象とする補償内容を拡充することで、従業員が安心して働き続けられる環境を整えることが可能です。

  • 健康支援プログラムの導入
     健康支援プログラムを導入することで、従業員の健康意識を高め、長期的な健康維持を支援することができます。これには、定期的な健康チェック、栄養指導、ストレス管理プログラム、メンタルヘルスのサポートなどが含まれます。これにより、従業員はより健康的な生活を送ることができ、結果的に長く働き続けられる環境が整います。

6. 継続的なキャリアサポートとリタイアメントプランニング

 人事部門は、従業員が長期的にキャリアを継続し、退職後も活躍できるようなサポートを提供することが求められます。これは、従業員が退職後も社会的な役割を持ち続けることで、生活の質を向上させるだけでなく、精神的な健康を保つためにも重要です。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • 退職後のキャリア支援プログラム
     退職後も活躍したいと考える従業員に対して、キャリア支援プログラムを提供することが考えられます。例えば、再就職支援や起業支援プログラム、シニア向けのボランティア活動の紹介など、多岐にわたるサポートが有効です。これにより、従業員は退職後も積極的に社会に貢献できる機会を持つことができます。

  • キャリアコーチングの提供
     キャリアコーチングを通じて、従業員が自身のキャリアゴールを明確にし、それに向けた具体的なアクションプランを立てられるよう支援することも重要です。特に中高年層の従業員に対しては、キャリアの転換期を迎える際に適切なアドバイスを提供することで、より充実したキャリアを築くためのサポートができます。

  • リスキリングの促進
     技術の進歩や市場の変化に対応するためには、従業員が常に学び続けることが重要です。企業としても、従業員が新しいスキルを習得し、キャリアを継続的に発展させるための教育機会を提供することが求められます。これには、社内研修や外部のトレーニングプログラムへの参加支援、オンライン学習プラットフォームの提供などが含まれます。

  • メンタリングプログラムの導入
     経験豊富なシニア層の従業員をメンターとして活用し、若手従業員との知識共有を促進するメンタリングプログラムを導入することも有効です。これにより、シニア層の従業員は自身の経験を活かして後進を育成する役割を担い、組織の中での存在感を維持することができます。

 人事の視点から見ると、従業員の老後資金準備と生活設計をサポートすることは、従業員の満足度とエンゲージメントを高めると同時に、企業の社会的責任を果たすためにも非常に重要な取り組みです。これらの方策を通じて、企業は従業員が安心して働き続けられる環境を提供し、ひいては組織全体のパフォーマンスを向上させることが期待されます。従業員一人ひとりが安心して自分のキャリアと生活を築けるよう、人事部門としての役割を果たし続けることが求められています。人事としても、できることは多いはずです。

老後の資産管理について安心感を感じさせる温かい雰囲気です。お二人の笑顔や部屋の落ち着いた色合いが、老後の生活に対する安心感と穏やかな時間を感じさせます。


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