見出し画像

【書籍】母の一喝がもたらした目覚め:原田隆史氏の教育者としての原点

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp66「2月7日:私を目覚めさせた母の一喝(原田隆史 原田教育研究所社長)」を取り上げたいと思います。
 原田氏は、自立型人材の育成「原田メソッド」を提供しています。

 原田氏は、大阪市最大のマンモス校で体育教師としてのキャリアをスタートさせました。学校は荒れており、生徒の服装は乱れ、校内にはタバコの吸い殻が散乱し、赴任初日から窓から投げ落とされた椅子が間一髪で当たるという危険な目に遭うなど、厳しい環境でした。
 しかし、生徒たちの生活態度を改善しようと、服装チェックをしたり、反抗的な生徒には真正面から向き合うなど、粘り強く取り組みました。その結果、徐々に学校に落ち着きが見え始め、校風にも良い変化が現れ始めたのです。

 しかし、赴任3年目の時、担当していた生徒が両親に殺害されるという衝撃的な事件が発生しました。この悲劇はマスコミにも大きく取り上げられ、学校や教師への批判が集中しました。その結果、落ち着きを取り戻しつつあった学校は再び荒れ始め、生徒たちは窓ガラスを割ったり、教室にペンキを撒き散らしたり、教師に暴力を振るうなど、深刻な事態に陥りました。多くの教師がストレスで出勤できなくなり、自身も心身に不調をきたし、髪の毛が抜け落ちるほどでした。

 体調を崩した原田氏は、自宅に戻り母親に休むことを伝えました。この状況を知っていた母親からの優しい言葉をかけてもらえることを期待していました。しかし、母親は意外にも黒いマジックペンを取り出し、髪の毛が抜けた部分を塗りつぶし始めました。驚きと戸惑いで言葉も出ませんでしたが、顔を上げると、母親は涙を流しながらこう言いました。
 「あんたは教師を辞めようとしているやろ?顔に書いてある。あんた、よう聞きや。辛いことがあったからといって仕事を変えたところで、新しいプラスの芽が出るのか?違うやろ。自分を変えなさい。自分を変えない限り、仕事を変えても一緒やで」

 普段は優しい母親の、この時だけの厳しい言葉と涙に、ハッとさせられました。そして、この出来事をきっかけに、教師としての原点に立ち返り、困難な状況から逃げずに自分自身と向き合い、成長することの大切さを学びました。この経験は、原田氏が教師として生きていく上での原点となり、母親は著者にとって最大の教師となったのです。困難に直面した時にこそ、厳しくも愛情を持って接することの重要性を、身をもって学んだのでした。

母の泣き顔を見たのは後にも先にもこの時だけです。普段はマザー・テレサのように優しかった母の一喝で覚醒し、一念発起して再び教師の仕事に向き合うことができました。やはり、困難に直面した時に優しい言葉を掛けても人は育ちません。厳しくも本気で向き合ってこそ成長を遂げ本物になるのです。この出来事が私の教師としての原点であり、母は最大の教師です。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p66より引用

人事の視点から考えること

リーダーシップと指導力

 原田氏の母親が示したような厳しさと優しさのバランスは、リーダーとしての重要な資質です。困難な状況に直面しても逃げずに立ち向かう姿勢を持つこと、そして部下やチームメンバーに対して本気で向き合うことが、信頼を築く基盤となります。

 人事としても、リーダーシップ研修を通じて、社員が効果的に指導力を発揮できるよう支援することが求められます。具体的には、リーダーシップ研修プログラムを設け、実践的なスキルを身につけさせることが重要です。
 また、メンター制度を導入し、経験豊富なリーダーが若手リーダーをサポートする体制を整えることも有効です。リーダーシップは一朝一夕に身につくものではなく、継続的な研修と実践が必要です。

自己変革の重要性

 原田氏の母親が語った「自分を変えない限り、仕事を変えても一緒やで」という言葉は、自己変革の重要性を示しています。人事は、社員が自身の課題を認識し、成長するための機会を提供することが必要です。これには、キャリア開発プログラムやスキルアップのためのトレーニングが含まれます。

 具体的には、自己評価やフィードバックを通じて自身の強みと弱みを把握し、成長のための目標を設定することが重要です。また、キャリアカウンセリングを通じて、社員が自分自身のキャリアパスを明確にし、自己成長を図るためのサポートを提供することも必要です。自己変革は個人の成長だけでなく、組織全体の成長にも寄与します。

教育と成長の環境づくり

 最後に、教育者としての原田氏の経験から学べることは、成長のための環境を提供することの重要性です。社員が安心して学び、成長できる環境を整備することが、人事の重要な役割です。具体的には、学習機会を提供し、継続的な教育プログラムを実施することが求められます。
 さらに、フィードバックの文化を築き、失敗を恐れずに挑戦できる風土を作ることが、組織全体の成長につながります。具体的には、定期的なフィードバックセッションを設け、社員が自身のパフォーマンスを振り返り、改善のためのアクションプランを策定することが重要です。また、失敗を学びの機会と捉え、挑戦する文化を醸成するための取り組みも必要です。

 原田氏の経験は、困難に直面した時こそ真の成長が求められることを教えてくれます。人事としても、社員がそのような成長を遂げられるよう、様々な支援策を講じることが求められるといえるでしょう。


決意を新たにした原田隆史氏が教室の前に立ち、生徒たちに向かっている場面のイメージです。原田氏は自信に満ちた表情で、生徒たちも整然と座り、彼の話に耳を傾けています。背景には励ましのメッセージが書かれた黒板があり、教室全体がポジティブでインスピレーションに満ちた雰囲気に包まれています。このシーンは、教師としての使命に再び向き合い、生徒たちに全力で取り組む原田氏の姿勢を示しています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。


いいなと思ったら応援しよう!